証明
「それで、今日はどこに行くんだ?」
今日は恋愛講座第2弾をするということで、朝から気持ちよく眠っていたところを朱莉に叩き起こされた。
だから僕は何の情報も知らない。なのでまずは花音に目的地を聞いてみることにした。
「それは着いてからのお楽しみですー」
「つまり行き先は秘密と…なんか嫌な予感がするんだけど?」
「気のせいですよー。さ! 行きましょ先輩!」
そう言って僕の腕を引っ張ってくる花音。
「ちょっ! 近い! 近いから!」
あ、当たってるから!
何とは言わないけど、タワワに育った2つのスイカの柔らかな感触が肘のあたりに押しつけられてるから!
僕は慌てて花音から距離を取る。
「えー、照れてるんですかー先輩」
「べ、別に…」
というか、よく見たら花音の顔も真っ赤になってるじゃん。動揺してる僕をからかってきたけど、人のこと言えないじゃん。
「はいはい、分かったから早く行こう」
「ちょ! 待ってくださいよ先輩ー!」
・・・
「今日の目的地はここですよ先輩」
「へー、なんか変なポスターが貼ってあるんだけど、僕たちには関係ないよね?」
「さすが先輩! 鋭いですねー」
「いやいや、嘘でしょ」
「そう! 今から私たちはカップルです!」
僕の目の前にはカップル限定メニューなる物の紹介がなされたポスターがあった。
「さあ先輩、彼女が出来た時の予行練習ですよー」
元気よく言う花音。
「僕は彼女が出来た後のことじゃなくて、彼女を作る方法が知りたいんだけど…」
「でも先輩」
「何?」
「物語のように恋人が出来たからってそれで終わりじゃないんですよー。好きな人と万が一付き合えたとしても、上手くやらないとすぐに振られちゃうかもしれませんし」
「それはそうかもしれないけど、コレは完全に花音が来たかっただけだよね」
「そうですよー」
「開き直っちゃったよ…まあ、花音が僕でいいなら付き合うよ」
「ありがとうございます先輩! それじゃあ入りましょうか!」
「了解」
「いらっしゃいませー」
さっそくお店に入ると、明るい声の挨拶が返ってきた。
「2名でお願いします」
「かしこまりました。こちらへどうぞ」
店員に案内されて席に着く。カップル限定のメニューの影響か、周りには男女で来ている客が多い。
こういう場所に来ることが少ない僕としては、カップルか女性しかいないこの空間に馴染めそうにない。
「メニューはこちらになります。ご注文がお決まりでしたらお呼びください」
「あ、決まってます! カップル限定パフェでお願いします!」
「かしこまりました。それではお二人がカップルであることの証明をお願いしてもよろしいですか?」
「し、証明!?」
いやいや、証明って何?
こういうのって言ったもん勝ちじゃないの!?
「わ、分かりました!」
「いや、証明って何をするんですか?」
店員に確認する。
「なんでしたら、彼氏さんが彼女さんの頬にキスするなんてのはどうですか?」
「は!?」
何言ってるの?
普通に考えてそんな羞恥プレイしないでしょ!
ていうかこの店員すごいニヤニヤしてるし、絶対に楽しんでるでしょ。
「ふふ、すいません。キスは冗談ですので」
ふー、助かった。
こんな人目がある場所でそんなこと出来るわけがない。
「いえ! やります!」
「そうですか。それではお願いします」
「え?」
何言ってるの花音ちゃん!?