チャンス
私は親友からの一言に動揺した。なんたって好きな相手が絶賛彼女募集中だというのだから。
「彼女が欲しいらしいよお兄ちゃん」
「え、彼女が欲しい?」
「そう」
「先輩がそんなこと言ってたの?」
そんなことを言う先輩をあまり想像出来ない。
「うん。それでアタシに泣きついてきた」
「な、泣きつく…というか、どうしてそんなことになってるの?」
「なんか少女漫画にハマったのが原因みたい」
「少女漫画…」
少女漫画を読む先輩というのもイメージ出来ない。
「それでお兄ちゃんに頼まれたんだよね」
「何を?」
「彼女を作るために協力してほしいって」
「は!?」
いけないいけない。私ったら驚きのあまりつい口汚くなっちゃった。
「ビックリだよねー。アタシもお兄ちゃんがそんなお願いしてくると思わなかったもん」
「…それだけ先輩は本気ってことだよね?」
あの先輩が恋に対して積極的になった。これは私にとってチャンスなのかもしれない。
「そうだと思う。まあ、今は少女漫画を見た影響でテンションが高いだけかもしれないけど。だからそのうち諦めるかもしれないし」
「なるほど」
「それに大学が始まるまでは大きな動きは無いと思うけどね」
「大学ってあと1ヶ月もしたら始まるじゃん。そんなに猶予はないよね」
今は私が有利かもしれないけど、大学が始まったら高校生の私は不利になる。
先輩には仲のいい女子どころか友達もいないけど、ビジュアルはいいからポットでの女に取られないか心配だ。
「そんな弱気になってる花音ちゃんに朗報だよー」
「何?」
「明日はお兄ちゃんとデートに行ってもらいます!」
「先輩とデート!」
「そう! お兄ちゃんモテ講座の先生を花音ちゃんに任せます!」
「お兄ちゃんモテ講座の先生?」
「花音ちゃんには先生という立場を利用してお兄ちゃんを好きに出来る権利を贈呈します!」
「先輩を好きに出来る権利…!」
「この機会を利用してお兄ちゃんを落としちゃいなよ。お兄ちゃんが彼女を欲しがってる今が絶好のチャンスだよ!」
「そうだよね! 私頑張るよ!」
「明日のアタシと遊ぶ予定は無しでいいから」
「うん! ありがとう!」
「頑張ってね花音ちゃん!」
「朱莉にここまで協力して貰ったんだから絶対に成功させるよ!」
「うん!」
「今度お礼するから!」
「楽しみに待ってるよ」