今、冒険が始まる?
冒険者になる。そんな一言に、父親は賛同してくれた。下手をしなくても最悪である職業、冒険者。
響きは、良いが実際はそれほど輝かしいものではない。活動の内容は人によってまちまちだが、冒険者としてお金を稼げる人間などそう多くはない。
洞窟に入って魔物を狩ったり、盗賊を倒して盗まれたものを取り返したり。そんなキラキラした冒険者などごく一部だ。
ほとんどの冒険者は、盗みをしたり詐欺をしたり、酷い奴らでは、集まって盗賊団を結成したりもする。
何故そんな輩が多いのか。それは、ひとえに金が稼げないからである。
初めは理想があって冒険者になる、当然だ。
冒険者になるなんて言う人間が、現実を見ているわけがないからだ。それでも時が経って、どうしようもなくなって気づく、自分は、普通の人間で、勇者などではないことに。
そこからは簡単に堕ちていく。長く”冒険者”を続けて来た者が自慢出来るものといえば、腕っぷしぐらいのものだ。その力を利用して、多くが悪に染まっていく。
本物の冒険者になれる人間は、最初っから才能がある奴か、自分を信じ続けられるバカのどちらかでしかない。だが幸運な事に、アレンは後者だ。
呆れるぐらいの厨二病に、それから理想主義。アレンならば、本物の冒険者になれるかもしれない。
「ありがとう!! 俺は、絶対、有名な冒険者になって、父さんに自慢しにくる!! だからその日まで待っていてくださりませ!!! 」
「ま、死んじまわなけりゃそれで良い。自分の子どもが生きてるなら、それだけで嬉しいもんだからな。
だからアレン、この先何があっても死ぬなよ。生きて、最後には、俺に自慢しに来い」
涙が出るほどの別れの言葉だが、アレンはまだ旅に出ない。何かと準備がいるということは、さすがのアレンでもわかる。手ぶらで外に出たら、きっと凍死するだろう。その他にも危険はたくさんある。だから準備をする必要があった。