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我が道を往く厨二病患者

「朝から変だな。一旦中に戻るぞ」


 そう父親に言われてアレンも家の中に戻って行く。数歩しかない距離にも関わらず、手を太陽に向かって伸ばす。まぁ何も起こらないのだが。

そこで気づいた。この世界にも太陽があるのだということにだ。なら月もあるのだろうか、他の太陽系惑星はあるのだろうか、厨二病のアレンには、そんな事が気になっていた。

顎に指を当てて考えていると、服を掴まれて家の中に引っ張られた。


「お前が生まれてから17年、昨日まで普通だったのに、どうしたんだ? お父さん悲しいぞ。お母さんに何て言えばいいんだ、まったく」


 中心にある木で作られた長テーブルに腕を置いて話す。構図的に先生との面談を思い出す。あの時も「君は個性的なやつだからな〜」と言われたのを思い出した。


「どうしたもこうもないよ。父さん、俺はね、この世界を救う!! 魔王を倒して世界を救うんだ! 」


 椅子から立ち上がり、ピンと腕を伸ばしてそう発言する。真っ直ぐにした人差し指からはやる気が伝わってくるが、残念な事を父親から聞く。


「魔王なんて御伽話だろ? 魔物はまだまだいるが、それでも、我々人間と共生し始めてるんだ。俺たち農民に、何かできる事なんてないよ。

それに今の時代、魔王なんかより人間の方が怖いだろ」


「な…に……魔王が…居ない、だと? そんなぁ…」


 頭をガクッと落として落胆する。魔王や撃ち倒すべき敵がいないなど、じゃあこの「想像」という自分の力はなんのために使えばいいのか。


 明らかに気を落としているアレンに、父親は声を掛ける。


「俺は畑に行ってくる。お前は横になってろ、調子がよくなったら手伝いに来い」


 ドアを引いて外に出て行く父親の背中に、名前とおばしき文字が書かれている。ヒロアキと書かれているのがわかった。

ヒロアキというのは、転生前の自分の父親と同じ名前だった。その前に、何故この世界の文字が読めるのか、アレンは気になった。二人の父が同じ名前で、この世界の文字は読み取れて、言葉も聞き取れる。

この世界に転生したのは偶然ではないのか、都合が良い事が多い。

だがアレンがそんな小さな事を気にするはずはなかった。椅子に座り込み、何かを考える。


「『想像』っつてもなー。どうすればいいかわかんないんだよな」


 そう言いながら諦めきれないアレンは、手のひらを天井に向けて目を閉じ、そして集中する。

茶色のグリップにシルバーに輝く刃。アニメで見たナイフを想像する。すると、不細工だがきちんと形となったナイフが現れた。

一瞬自分の目を疑って切先に、恐る恐る触れてみると、なんと触れた指先から血が流れた。痛みと共に赤い液体が流れた事に歓喜する。アレンは、自分の力を使えたことに歓喜したのだ。


 もう一度慌てて扉を開けて父親に言う。


「なら冒険者になる! それでこの世界を旅するんだ」


畑を耕していた父親の手が止まった。額の汗を拭ってから


「夢があるのは良いが、領主様から貰ったこの土地はどうする? 俺の後を継いだもらわらないと、この畑は荒れ放題になるんだぞ」


「絶っっ対に帰ってくる。冒険者になって冒険に出て、そのまま人生を終えるなんてことはしない! だから父さん、冒険者になるのを許可してくれ」


「別に止める気はないよ。お前に夢があるなら応援するのが俺の役目だからな。土地の事は、まぁ心配すんな。俺がなんとかする」


 父親にそう宣言するアレン。ここから彼の冒険が始まるのだろうか。

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