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ここは異世界で俺は誰

「ど、どうした! 急に頬を殴って、気は確かか!

お前頭でもイカれたのか?」


 よく知っている筈である父親の声が聞こえてきたのに、目の前に広がる景色は全く知らないものだった。

木目が目立つ天井も、質素な一枚の布団も、これまた木製のテーブルも。そのすべてが全く見覚えのない物に変わっていた。


「ふ、ふふふ…ふはははは! つまり俺は異世界に転生してしまったのか。やっと世界が俺の居場所を見つけたのだな…」


 ちょっと前まで「痛い!」と叫んでいたはずだが、布団の上で片膝を立てて両目を閉じ、口の端を緩ませる。

その姿を見ていた父親は、遂に完全に頭がイってしまったと思ったようだった。

机とセットになっていた椅子を一つ持ち、布団に近づいてくる。


「今日は何日でお前の名前は? 」


「今日は旧暦の5月3日、俺の名前は『ベンモント•フォス•インドランド』だ。」


「そうか。ちなみに今日は火の日でお前の名前はアレン•ルースマントだ。今から町に行って病院に行ってこい。いや少し頭を冷やせ。でも病院は行け」


 そう言うと、「アレン」の父親は椅子から立ち上がり外に出ていった。

なるほど、今の彼は「牧太一」では無く「アレン•ルースマント」と言うらしい。


 一人となった部屋の中で、アレンは考えを巡らせる。


「俺はアレンになったという事か? それはつまり…俺は死んだのか? いやそんな事はないだろ。

おそらく現実に戻る手立てがあるに違いない。ラノベだと絶対そうだからな」


 アレンの冷静な頭ではこう考えるのが精一杯だった。いつもみたいに一人称が「我」になっていないのをみるに、相当焦っているようだ。

だが、一瞬でその焦りが消し飛んだようだ。


「異世界転生したならチートアイテム!! 絶対あるでしょ、キタでしょこれ! 」


 感情の起伏が激しい。だが、アレンにとって能天気なのはプラスに働くかもしれない。

自分が死んで、異世界に転生した、とそう考えてナイーブになるより、これから待っているであろう楽しい出来事を考えていた方が良いに決まっているからだ。


「でもチートアイテムなんて有るか? うーん、ダメ元で聞いてみるか」


 布団を吹き飛ばしてベッドから立ち上がる。

チクチクと肌に繊維が刺さってくる。今着ている衣服は相当質の悪い物らしい。

一歩一歩進む体は、確かに自分の体だった。足に伝わる地面の感触と、全体に響く振動。これらが自分の体を確かめさせてくれた。

ドアに手を当てて、そのまま前に押す。


 眩しい日差しが差し込んで来てアレンの目を刺激する。激しい光になす術なく目を細める。

光に慣れて来て目を開けると、そこには何かの植物畑が広がっていた。これは小麦だろうか? クソ、こんなことなら授業をしっかりと受けておくべきだった。アレンはそう思った。


 終わりの見えない、推定小麦畑の手前に、父親が居た。目標を発見したアレンは、父の元に向かって歩き始める。


「父さん。俺の…チートスキルはなんですか? 」


 真面目な顔でイカれたことを聞いたアレンに困惑しながらも、質問に答えてくれる。


「チート? なんだか分からんが、お前の授かった力は『想像』だろう? まだ寝ぼけてんのか、早く元に戻って欲しいんだが……」


 想像。それにスキル。分からない事が二つも出て来てしまった。


こんにちは。よろしくお願いします。

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