人道支援隊救出作戦
支援隊の護衛である護衛艦やまぎり、ゆうぎりは第11護衛隊所属です
3月1日
オーベルゲンに派遣されていた人道支援隊が約1か月の任務を終え、帰還することになった。
港に付き、輸送艦にすべての積み込みが終わるも、オーベルゲンの外交官から出国できないことを伝えられた。
「えぇ、出国できないんですか?」
「申し訳ないです。デンベル中央国が海上封鎖を行っているようでして」
オーベルゲンは日本の北にある大陸に位置する国である。日本から船で5日、6日かかるという距離。
一方でデンベル中央国はテール王国が位置する大陸の海を挟んだ向こうの国である
デンベル中央国は魔族対策条約軍の軍港に停泊していた第1派遣艦隊をオーベルゲン沖に配置し、日本船を駆逐すると伝えたうえでオーベルゲンに日本の人道支援隊を出向させないように通達した。
この世界でデンベル中央国は世界の警察と言う役割を自称し、実際に世界第一位の経済・軍事大国である
これに政府は対応に追われることになる。
デンベル中央国が日本に敵対行動を見せてきた。これは日本国にとって重大な事態である。
日本国はアシニア王国にあるデンベル中央国大使に面会を求めたが拒否されてしまった
首相官邸
「防衛大臣、状況は?」
「はっ、少し前に衛星軌道に投入された偵察衛星により、海に展開されている艦隊の位置情報、艦隊情報を確認できました」
「ほう」
「こちらが衛星写真です」
「彼らは12隻の木造船と1隻の空母のような木造ではない何かを使って作られた艦船で構成された艦隊で海上封鎖を行っており、その周辺にも単独で行動している艦船を発見しています」
「向こうは空母を持っているのか?」
「その可能性もあります」
「外務省は?」
「依然として彼らは我々の面会の申し出を拒否しております」
「しょうがない、護衛艦を派遣させるしかないな」
「えぇ、念のため第1護衛隊と第11護衛隊を派遣させるつもりです」
「第1護衛隊はいずもがいたな」
「えぇ、しかし今回はF-35Bは艦載しません」
「なぜ?」
「F-35はアメリカの製造元が機体管理をしており、何かあれば機体を動かせなくなるシステムを作っています。元の世界との連絡が途絶えた今、F-35がいつ動かなくなるかわかりませんから隊員の安全を最優先しております」
「そうか、関係ないのだが、F-35が動かせない今、変わりはどう補完するのだ」
「国内でライセンス生産されているF-15Jと共同開発したF-2戦闘機ですが、部品の完全国産化のために開発を進めており、日英伊で共同開発していた次期戦闘機の技術を一部流用する予定です。なお、現状対航空戦の可能性が極めて低く、米空軍が航空自衛隊に編入されましたので航空戦力についてはF-35が使えなくなったところで問題ありません」
「そうか、ありがとう。早速自衛隊派遣の準備を進めてくれ」
3月7日
自衛隊の派遣が承認され、第1護衛隊と第11護衛隊の合計8隻が封鎖海域へと向かった。
■
「あぁ、美しい。このワイバーン母艦シーバードであれば外来族である日本国など一瞬であろう。彼らが目を丸くするのが楽しみだ!」
「えぇ、私もそれを想像すると笑みがこぼれてきますよ」
ワイバーン空母の甲板で話す艦長とその部下
彼らは対魔族条約軍デンベル中央国第1派遣艦隊である。
オーベルゲンのある港
「皆喜べ、どうやら第1護衛隊と第11護衛隊がここに向かってきているらしい」
「おぉ」
「しかしだな、相手には空母らしき艦船があるらしい。海上封鎖を行っているデンベル中央国はこの世界のトップだ。アメリカと思ってもいいであろう」
「最悪の事態もあり得る。覚悟しろ」
「はっ!」
輸送艦おおすみには甲板に74式戦車を設置して反撃能力を持たせるなど工夫が行われた。
護衛艦いずも
「それでは作戦の内容を話す。おおすみの艦長もしっかりと聞いておいてくれ」
「もちろんだ」
「我々は衛星と連動しながら、あえて奴らの艦隊に接近する。その間にも人道支援隊は港を出発し、我々から大きく遠回りして当該海域を抜けてくれ、なお援護として護衛艦のしろが途中から合流する。しかしできるだけ反撃は避けてくれ」
「了解だ。貴官らの無事を祈る」
「そっくりそのままお返しするよ」
その後、数分程度の雑談ののち作戦会議は終了した
作戦当日
護衛艦いずも
「こちら旗艦いずもだ、横須賀司令、聞こえるか」
「えぇ、問題ありません。今から衛星情報をCICにリンクさせます」
「了解した」
『全艦艇の隊員に告ぐ、我々が今から援護するのは勇気を振り絞って見知らぬ土地で人道支援を行った英雄たちだ。決して失敗は許されない。そして反撃は我々の許可があるまで禁止とする。諸君らの無事を祈る』
輸送艦おおすみ
『全隊員に告ぐ、私は輸送艦おおすみの艦長であり、人道支援隊護衛隊の司令官だ。これより封鎖海域に侵入する。我々はあなた方が無事に日本へ上陸できることを約束しよう。以上だ』
「ここで海域を大きく迂回すればいいんじゃない?」と言う人もいるであろう。しかし、主要艦隊のほかに数十隻が海上を哨戒している。支援隊が全速を出せば敵艦隊から逃げ切れるが、相手には空母らしき艦艇が確認されている。4大国家であるアシニア王国にその艦艇について質問しても「分からない」と答えられたため第1護衛隊と第11護衛隊が出向くことになったのだ
■
「CIC、レーダー探知。敵、13隻確認」
「了解。そのまま近づけ」
■
「司令、哨戒中のフリゲートから連絡!敵輸送艦を発見とのことです。我々と同じワイバーン母艦のような艦船も見られたとのことです」
司令官がニヤリと笑みを浮かべる
「そうか、奴らに追いつくぞ。ワイバーン発艦用意!」
しかし彼の笑みは一瞬にして崩れる
「敵!左斜め前!」
「なんだと⁉」
報告を受け船長室から艦橋へと移動し、双眼鏡で確認する
「おい、ワイバーン母艦みたいなやつがいるぞ」
「灰色だな」
「木製ではないのか?」
「5隻以上いるぞ」
船員たちが次々に声を上げる
「魔導通信で連絡しろ!哨戒中の艦艇は支援隊を攻撃!あの艦隊は我々が相手する。ワイバーンを上げろ!」
「はっ!」
■
「敵艦視認」
「了解した。攻撃はするな。全速前進」
「全速前進了解」
「護衛艦やまぎりより報告、敵艦が集まっているとのこと」
「分かった。スタンバイしている74式戦車の乗員にも伝えろ。準備しておけと」
「はっ」
「くそっ、奴ら早い。このままじゃ追いつかれるぞ!」
ドン!
「船体後部被弾!繰り返す被弾した!」
護衛艦ゆうぎりが攻撃を受ける
「状況確認急げ!」
「損害ありません!」
「引き続き航行せよ、砲雷長に心の準備をと」
「はっ」
「おい、小銃を持ってこい」
「何故?」
「威嚇射撃だ。何としてでも追い払わなければ」
隊員が64式小銃を持ってくる。
最新の20式小銃は5.56mm弾なのに対し、64式小銃は7.62mm弾である。
「どうせ20式小銃に置き換えられるんだ。今のうちに使っておこう」
見張り員などにし64式4丁を隊員が装備し、表に出る
「砲弾に注意せよ」
「了解」
「威嚇射撃は船体に当てるな」
パン!パンパン!
連続して64式小銃の発砲音が海に木霊する
敵艦の船員たちは驚き隠れるも、被害がないと分かれば勢いづく
そして敵に船員の一人が何かを生成する
そしてそれが隊員に向かって飛んでくる
「熱い!」
小銃を構えていた一人が飛んできた火球によけきれず被弾してしまう
「あかん!消火器持ってこい!」
すぐさま消火器にて消火され、服が燃えたが命に関わる怪我することはなかった
「船体!船体に撃て!」
隊員らは船体に発砲する
そして敵船から悲鳴が聞こえた
64式の銃弾が中にいた人に直撃したのだ
ジリリリリリリリリリ!
艦内に警報が響き渡る
「お前ら!ご苦労だ。反撃許可が出た。すぐに艦内へ」
輸送艦おおすみが繰り返し攻撃を受け、反撃を命令したのだ
そしてオート・メラーラ社製62口径76mm速射砲が旋回し、放たれる
ドン!
先ほどまで余裕の素振りでゆうぎりを攻撃していた敵艦船が一瞬で真っ二つになる
その瞬間を見たほかの艦船が回れ右をして去っていく。
「艦長、救助しますか?」
「無理だ。時間を無駄にはできん」
「了解しました」
「・・・最初からこうしておけばよかったな」
ゆうぎりの艦長は誰にも聞こえない声でそうつぶやいた