魔王軍との合同軍事演習
当日
演習が始まった。
各軍、テントがあり、そこで待機となる。
「どこの軍だよあのテント」
「ありゃニホン国とかいう人間の国さ」
「どうしているのさ?」
「さぁ、俺に言われても知らん」
日本国のテントは他と比べて大きかった。
何せ10式戦車だったりが来ているため場所を取る。
それをほかの魔王軍たちは人間が大勢集まったところで無駄だ。と言って、人間が全滅するかどうか賭けをするものまで現れた。
彼らのテントをあざ笑い、ちょっかいをかけに行こうとするものまで現れたため、リスカラ軍が護衛に付き、揉め事にならないようにした。
自衛隊員たちはテントの隙間から演習の様子を見ていた。
特にやばかったのがモース軍。
演習を始めると即座に指揮官が宙に浮かび、敵であるオオガラトカゲを一瞬で焼き払ってしまったのである。
「ひぇ~、あんなのと戦って勝てるわけないや」
「俺もあんなの戦いたくねぇよ」
「おい、装備の点検しとけよ」
「了解です」
そして大トリである自衛隊の番である。
編隊を組むための時間が10分ほど与えられるためそれなりに余裕があった。
最初は普通科隊員と施設科隊員が持ち場に付き、戦車や99式自走砲の射撃位置を決める。
「あれがニホン国とやらですか」
「汚れた服を着てますね。みっともない」
演習場まで、観閲している魔王らや、魔王軍のテントの前を歩くので至近距離でジロジロみられてしまう。
「みな、銃剣は用意したな」
「はっ」
「87式偵察警戒車がいるから問題はないだろうが、もしかしたら銃剣による戦闘も考えられるからな」
「はっ、覚悟はできております」
「よろしい。幸運を祈る」
5分前となったところで、ニホン国のテントが騒がしくなる。
戦車や装甲車のエンジンが始動する音。
ギュオォォォォォン!
フルパワーで幕を突き破って姿を現す10式戦車。それに続いて16式機動戦闘車や99式自走155mmりゅう弾砲などが移動を開始する。
砂利道なので砂埃を舞い上げながらの走行だ。
その迫力に見ている者全員が驚愕する。
「戦車隊、後方隊位置に着きました」
「了解、自走砲は始めの合図で発砲せよ、容赦は要らない」
「はっ」
『それではニホン国の皆さん。始めてください』
「てーっ!」
ドーン ドーン
155mmりゅう弾砲により放たれたオオガラトカゲがいた場所が大きな爆発とともに砂埃に包まれる。
そして突破してきたところを10式戦車、16式機動戦闘車轢きながら射撃していく。
そして戦車が打ち漏らしたトカゲは普通科隊員の20式小銃によって撃ち抜かれていく。
あっという間であった。
3分ほどであったであろうか。
ケガ人、犠牲者0の素晴らしい成果であった。
目の前で繰り広げられた出来事に口を開け、驚くものが続出する。
「おいおい、あのニホン国とか言う国、相当やべーぞ」
「あれはあんなのと戦いたくねぇよ・・・」
そして風のように撤退していく。
撤退していく戦車にはトカゲだったものや血がべったりと付着していた。
「あちゃ~、こりゃ帰る前に汚れを落とした方がいいな」
「そうですね、しかしここにホースなんてありませんけど」
「・・・」
「血まみれで帰ったらメディアに大きく取り上げられて左の方々が騒ぎ始めるので大森さんに交渉してもらいましょう」
「そうだな。その手があった」
大森は演習を終え、魔王たちがいる場所に戻る。
大森は後方で戦闘を眺めていただけなので汚れがない
「あ、お疲れ様です」
「え、えぇどうぞ。オーベルの国で生産している紅茶よ」
「大森よ、この後我の城にもどり他の魔王たちと共にニホンとやらの話を詳しく教えてもらえないかな」
「え、えぇ大丈夫ですけど」
魔王たちは少し怯えていた。
あの規模であの速さであれば幹部や魔王ならまだしも、下の兵士は一瞬でやられてしまうだろう。
ニホン国の軍事力や国力などを調べる必要があると魔王らは合意した。
デーモン城
最初に会議をしたのと同じ部屋で行われた。
外務省は魔王の国が日本の技術を欲しがっているため、事前に「防衛秘密や明確な情報を話さないように」と忠告していた。
特に防衛力に関しては抽象的な言葉で説明すること、人員や兵器の詳細を明かさない事が含まれている
「大森よ、ニホンとやらにはあのような兵器があるのか?」
「はい、時間や費用の関係ですべてはここに連れてくることはできませんでしたが、更に性能が高いものもあります。演習で公開したのはほんの一部でございます」
「リスカラの魔力球を防ぐ船と言うものも気になるな」
「えっと、それについてはご存じないのですが、遠方の船や空中の敵を攻撃することができます」
「兵士はどれほどいるのだ?」
「お答えできません」
「ほう、何故だ」
「それは私が上の者から情報の共有を制限されているからです」
「ここで言っても聞いている者はおらんよ」
「それでもです」
「あの兵器らを我々に輸出することはできぬか?」
「外交官に言ってもらわないと分かりません」
「そうであるか」
「ニホンの街や人口はどうなのだ?」
「人口は1億2万人、首都である東京は眠らない街として有名でした」
「ほう、どういうことだ?」
「日本では、真夜中まで営業しているお店や工場が多く、そのため夜間でも人がおり、街が明かるいため眠らない街と言われています」
「1億2千万人もいるのか、日本は人口調査を行っているのだな。眠らない街と言うものをいつか見てみたいな」
「外交官に言ってもらわないと・・・」
それから質問は何問か続きお終いとなった
「大森よ、ありがとう」
「いえいえ、こちらこそ演習に招待して頂きありがとうございました」
「あ、兵器に付着した血を洗いたいので水をもらう事ってできます?」
「よかろう、誰か水魔法が使えるものをニホン軍のところに派遣してくれ」
「私のところが行こう」
手を挙げたのはモースであった。
「ありがとうございます」
大森は急いで駐屯キャンプに戻り、木本に伝える
「うへぇ、あいつのところの兵士が手伝いに来るのかよ」
「戦車の構造を探ろうとしてくるかもしれん。気をつけろよ」
「あぁ、任せとけ。隊員に見張らせるから」
「どうも」
30分後、モースの軍数人がやってきた。
「ご協力頂きありがとうございます」
「えぇ、それでどこに水魔法をかければよいのですか?」
「あぁ、こちらです」
血が付着した10式戦車と16式機動戦闘車合わせて10両ぐらいがそこに並んでいた
「改めてみると迫力が凄いですね」
「それではここに水をかけてもらえませんか?」
「えぇ」
兵士が水をかけ始める
「あ、あのう・・・水の勢いが強すぎる気がするのですが」
「あ、え、気のせいですよ。魔法は初めてなんでしょ」
「えぇ、間近で見るのは初めてです」
そういうと兵士はどんどん水の勢いを強くしていく
「あの、もういいですよ」
「あ、あぁ」
勢いが強かったおかげで汚れをこすることなくきれいにすることができた。
そしてあっという間に洗浄が終わった。
「凄いですね。ご協力ありがとうございました」
「えぇ、こちらこそ」
「どうだ?」
「かなり防御力が高いようで、水魔法の放水を最大火力でやったのですが傷一つつきません」
「そうか」
「ただ、水球であれば打撃を与えることが可能かと」
「ご苦労、テントに戻れ」
「はっ」
モースはそれを聞き、ニヤリと笑うのであった