新田の判断
ゲームしてました
ネハン連邦共和国の諜報員ヌぺはデンベル中央国への潜入に成功した。
デンベル中央国とネハン連邦共和国はかつて国交があった国だ。
ネハン連邦共和国が鎖国を発表したときに支持したのもデンベル中央国だ。
かつてはデンベル王国だったがデンベル中央国になったのか・・・
街の至る所にプロパガンダポスターが貼られており、どうやら王ではないと確認できた
なるほど、蒸気機関ですか。産業革命が起きたようですね
諜報員は街を散策し、隠しカメラで街の様子を録画していく
「せ、戦艦⁉」
諜報員は戦艦があることに思わず声を上げてしまった
エンジンも開発されているのか?
「すごいだろう?」
驚く諜報員の横に居た水夫らしき人が声をかける
「えぇ、始めて観ました」
「外来族に対抗するためだからな。外来族は戦艦をみて尻尾巻いて逃げたという噂があるのだ!」
「外来族・・・?」
始めて聞いた名前だ
「田舎者だったか。外来族って言うのはテール海峡に突如現れた島に住むものらよ。あの超大国のロカタリ教国を撃ち滅ぼした憎き民族だ」
ロカタリ教国か・・・
ネハン連邦共和国が鎖国する直前に立ち上げられたとかなんとか
「我が国は勝てますかね?」
「うむ、今では技術が発達し、軍事力も3倍にまで増えている。祖国が発展することは嬉しいことこの上ない。俺は用事があるから退散するよ」
「そうですか。ありがとうございます」
良い情報を確保できた。
その時の諜報員の顔は笑っていたであろう
◆
「状況はかなり悪いみたいね」
「えぇ、ハウベの国は現地兵が対抗しているようです。そして商人からの情報ですがデーモン様の国ではイルアスに反抗するものは全員処刑され、人間は完全に奴隷として支配されているようです」
「オーベルの方は?」
「かなり耐えているようですが・・・」
「というかなんで私の国だけ攻撃してこないの?ずっと服従要求みたいなのが来てるけど」
「背後にニホンがいるからでしょう。イルアスもモースでのニホンの活躍を見ていますから」
「私が参戦したらニホンも参戦するかしら」
「実はですね、どうやらニホンの首長が変わったらしいのです。それでニホンと計画していた飛行場建設は前の首長が軍事基地化を目論んでいたみたいで中断されています」
「あー、最初のニホンに戻っちゃったのね」
「ですが、憲法が変わって戦争できる規定が緩くなったそうですよ」
「なんかこのままじゃニホンに危害が加わる的なことを言えば参戦してくれるかしら」
「いや、もしニホンが参戦して上手くいけばリスカラ様は魔王大陸でトップを取れるでしょう。資源の利権など、ニホンがメリットになるような条件を出せば参戦してもらえるのでは?」
「なるほどね。考えてみようかしら」
数日後
日本の大使が呼び出された
「本日はどうされたのですか?」
「その資料を見て頂戴」
そこには部下と一生懸命考えた「このままじゃ日本にも危害が及ぶ」的な危機感を煽るような文章と共に、日本が参戦してくれるように資源の利権なんかの日本の利益になる事を書いたものだ。
「なるほど、金鉱山と銅鉱山の99年間の採掘権ですか・・・」
「どう?」
地球では99年というのは永久と言う意味でつかわれることが多い
それを確認しなければ語弊が生まれ、将来的に問題となる可能性がある
「あの、わが国がいた世界では99年というのは永久と言う意味でつかわれることが多いのですが・・・」
「まぁ、99年は採掘権を保証するわ。それ以上は分からないけど」
「そうですか。この話は私の一存で決めることはできないので一旦国に持ち帰らせていただきます」
これに頭を悩ませたのが新田総理
一応、提示されたなら議会で議論しなければならない
論点とされたのが、魔王大陸で起きた戦争が日本に害を及ぼすものなのかという事
モースの際は、日本を攻撃したために出動したのである
また、憲法は改正されてから、交戦権と戦力の保持は認められたが原則平和主義であることは変わっていない。
派兵するべきと主張する国民党と静観するべきと主張する労働党そして内部で意見が分かれている与党の民主党
これじゃ埒が明かないと、新田総理は首脳会談を打診
7月19日
リスカラと新田総理がリスカラの屋敷にて会談を行った。
福岡空港から対馬空港を経由し、ヘリにてリスカラ港にいる護衛艦へと向かった
新田総理のほかに防衛省関係者や国交省関係者も出席した。
始めは両者とても緊張していた。
しかし駐在大使が話を振ることで段々と緊張はほぐれ、本題へと入ることができた
「戦争への参戦要請はこちらも把握しておりますし、あなた方が提示する見返りも十分だと認識しておりますが、国内ではイルアスがもし大陸を統一したとして、わが国にどのような影響を及ぼすのかが論点となっています」
「私が説明します」
リスカラの部下が手を挙げる
「厳密に言うと、イルアスは我が国を攻めておりません。それはお伝えしておきたい」
「何故でしょう?」
新田総理が不思議な顔をする
「多分、ニホンの参加を恐れているかと。モースの時も少数の軍で我々の攻撃に多大なる貢献をした。それを彼女は知っており、わが国に手を出していないかと」
「なるほど」
「ですが、イルアスの最終的な目標は別の大陸への進出で、魔族至上主義を掲げ、彼女の統治する地域では既に人間の奴隷化が始まっています」
「しかし、わが国は周りを海で囲まれ、海上の敵への攻撃手段を持っている」
「えぇ、あなた方が参戦したくないのは重々承知なのです。しかし彼女はニホンを攻める。攻めないとしても、あなた方は西からの脅威に何十年、何百年先も耐えなければならない。それなら味方が居るうちに倒しておいた方が得策です。それに加え、資源の利権までもらえる。こんなチャンスはありませんよ」
「確かにあなたの言う通りです。あなた方がご存じかは知りませんが、わが国及び同盟国はデンベル中央国と緊張状態にある」
「もし、この戦争が終結すれば、ニホンとデンベル中央国の戦争にニホン側で参戦することも可能だ」
そして男はリスカラの方を向き
「ね、そうでしょう?リスカラ様」
リスカラは若干困惑しながらもコクリとうなづく
国会にて
リスカラと会談した新田総理は悩みに悩んだ末、リスカラ国内へ自衛隊の駐留を提案した。
これはイルアスが日本の参戦を恐れているという事が影響している
この案を国会が議決したため、1週間後に第17旅団が派遣されることになる
あるものはこれを派兵までの一時的な措置と捉え、あるものはただの抑止力と捉えた
これに反応したのはイルアス
潜入させていた諜報員からニホンの軍が駐留したと聞き、報告書を破り捨て、腹いせに奴隷を虐殺したとか・・・
一方デンベル中央国沖にて
相次ぐデンベル中央国の挑発行為に対抗するためロカタリ共和国海軍と第一護衛艦隊群がデンベル中央国の沖で実弾を使った軍事演習を開始
挑発行為の為、戦艦2隻、駆逐艦?12隻をつれたデンベル中央国艦隊は訓練の様子を目撃した
そこにはCIWSを空に向けて発砲し、ミサイル発射、実弾射撃、F-35Bの発艦、着艦訓練、ヘリコプターの飛行訓練と、地球ではできないような訓練をやりまくった
流石に自国とは違う艦船や自国にはない飛行物体を見せられてデンベル中央国はビビるわけで、目論見通りデンベル中央国の挑発行為は無くなった
◆
デンベル中央国にて調査を行っていたネハン連邦共和国の諜報員は持っていた小型の発信機を使い、映像と報告を発信した。
彼はデンベル中央国の港から例のロカタリ教国へと向かう船があるという事でその港へと向かった
正確には旧ロカタリ教国の植民地であるヘルネス国へと向かうものだ
現在はデンベル中央国側であり、軍港も建設されている。
重要地域であるが、ロカタリ共和国とヘルネス国の国境を行き来することは可能である
港に着くと、大型の蒸気船が停泊していた
彼が感じたのは大きい割に人が少ないという事だ
デンベルロカタリ連絡船は日本との戦争以降、毎日朝夜に1本ずつ出ていたのが週に1本と減少した。
単に人の往来が減ったことである
現在は航路を変え、ヘルネス国へと向かうが、それでも使うのは商人か、冒険者ばかりだ
3日かけて到着したヘルネス国では、巨大な港が整備され、諜報員の男は驚きを隠せなかった
「確か外来族が占領したロカタリ教国に近かったからか」
街には軍人がうろうろしていた。
街の活気はなく、住民も楽しそうではなかった
「これはやばいな・・・」
明らかにデンベル中央国はこの国を搾取している。
そう受け取れる街並みだったからだ。
彼は急いでこの街を抜けようと走る
「おい、そこの男!」
彼はそのまま無視する
「止まれ!撃つぞ!」
彼が振り向くと、そこには銃を持った男が居た。
「フリントロック式ピストルか・・・」
彼はそうつぶやくと、両手を上げる
「何故走っていた」
「いえ、少し急用で」
「怪しいな。ついてこい」
「それはできません。私の知り合いがね」
「ここではデンベル中央国軍人が一番なのだ。逆らうことは許されない」
彼は胸倉を掴まれると、その手を捻ってほどいた後に逃走した
「敵だ!」
パン!と発砲音が響く
彼も懐から拳銃を取り出し、目の前で銃を構えていた2人を射殺した
あっという間に戒厳令が敷かれた。
ロカタリ共和国国境検問所
「なんかあっちが騒がしくないか?」
「あん?」
2人の警備兵が少し奥にあるヘルネス国境検問所があわただしくなっているのが分かる
日本から供与された89式小銃を構える
暫くすると警戒が解かれ、何事もなかったかのように元に戻る
「なんだったんだ?」
「さぁ、何かあったんだろ」
◆
諜報員の男はロカタリ共和国で衝撃的なものを目の当たりにした
「な、なんだこれは」
1日走ってようやくたどり着いた街には、ネハン連邦共和国の建物の素材とは違う何かが使われた建物が経っていた。ネハン連邦共和国にもあるような重機、服装
それはデンベル中央国で見てきたものとは全く違うものであった
彼は発信機で「我が国に近い技術力を持った国があるかもしれない」と送った上で、国に帰れなくなったかもしれないことを本国に伝達する。
彼はこの国の技術力を調べるために、ロカタリ共和国の首都を目指し始めるのであった




