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・廃ゲーマー バグアイテムを拾う

 休みが明けるまではずっと、ここで魔法の星を浮かべて生活するつもりだった。

 トマトを食われた怒りを精神力に変えて、俺はこの2日間を魔力制御の訓練につぎ込んだ。


 ところが3日目、俺は世界の裏側あらため【裏世界】で、またもや妙な物を見つけた。

 それは【はじまりの森】エリア付近の裏世界で見つけた。


 胸の高さほどの何もない空間に、16進数の数字が浮かび上がっては炭酸のように消滅していっている。


「お、アイテム扱いなのか……?」


 触れてみるとそれは独りでにローブのポケットの中に入った。

 ポケットの中を探ると、あの16進数が内部で光を放つ親指ほどのクリスタルに変化していた。


「裏世界に存在するなんかちょっとバグったアイテム、か。はははっ、これは面白い……」


 早速鑑定ができるやつに――


「あ、俺じゃん。出来るじゃん、俺、アイデンティファイッ」


 気の抜けた独り言は術のトリガーとなり、目の前に【ドラゴンズ・ティアラ】のウィンドウ画面が現れた。


「あ、なんか、ホッとする……。これだよこれ、このアンチエイリアスがかかったフォントと、過剰装飾なウィンドウ……。これこそが美少女ゲームの画面だろ!」


 俺は鑑定結果を無視して、ウィンドウにくっ付いている黄金の翼竜の装飾に惚れ惚れとした。


 こういうちょっとしたフレーバーが、ゲームにはとても大切だと思う……。

 中盤からは見慣れてしまい、かえって画面の邪魔になる物だとしても、こういうのがあると序盤のワクワクが段違いだ。


「あ、消えた……。アイデンティファイッ!!」


 と叫ばなくても発動するのだが、俺はまだ17歳。叫びたい年頃だった。


――――――――――――――――

【名称】バグ・フラグメント

【区分】武器・長剣

【効果】斬+5 薙+4 刺+3

【解説】一般兵が用いる長めの剣

――――――――――――――――


 うん、長剣だこれ。


「ってポケットに長剣が入るかーっ!」


 裏世界にいると孤独だ。

 否応なくため息や独り言が増える。


「いや、だがこれ、このままじゃただのゴミアイテムだけど……。モンスター錬成に、使えるんじゃないか……?」


 モンスター錬成はアイテムからモンスターを作ったり、アイテムとモンスターを合成するシステムだ。

 長剣のような武器や、防具アイテムは餌としての効果が高い。


「この辺に、これもっとないかな……?」


 バグ・フラグメントを求めて辺りを探った。

 【はじまりの森】のような樹木の高さが加わるエリアは、裏世界から見ると駅ビルのように高くそびえ立って見える。


 淡い木漏れ日が差し込む森を『世界の壁という名のアクリルケース』で閉じ込めたような光景。と表現したら少しくらい伝わるだろうか。


 俺はその美しい美術品のような森を横目に、さっきの奇妙なバグ現象を求めて漆黒の世界を巡った。


 結果、しらみ潰しに全てのエリアを巡った頃には、俺のポケットにもう3つのバグ・フラグメントが収まることになった。


―――――――――――――――――――――

【名称】バグ・フラグメント

【区分】軽盾

【効果】斬防+2 薙+3 刺+10

【解説】小型の小さな盾

―――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――――

【名称】バグ・フラグメント

【区分】回復アイテム

【効果】技ポイント20回復

【解説】野生のミツバチの渋みのある蜜

―――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――――

【名称】バグ・フラグメント

【区分】錬成アイテム

【効果】錬成でブルースライムが誕生

【解説】全てのスライムに

    進化できる最も可能性のあるスライム

―――――――――――――――――――――


 最後に見つけた【ブルースライムの核】はお宝だった。

 最強キャラクターをビルドする上で、スライム系はいずれどうしても必要になる。


 最も手に入れやすい【ブルースライムの核】のドロップ率は32分の1。

 ゲームならそこまででもない数字だが、生身で狩るとなると確率3%はなかなかにきつい。


「よしっ、全部バグデータなのが面白い! すぐにモンスター錬成をしてみよう!」


 バグは大歓迎。こんな素敵な素材を手に入れてしまったら、もう今すぐここで造るしかない!

 バグったアイテムで正常にモンスターを造れるか、早速検証開始といこう!

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