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・ここでオリチャー発動 ざまぁ

 さて蛇足ではあるがここでオリチャー発動だ。

 事件の真犯人であるこのフィッシュパイだが、その日のうちに留置所で怪死を迎えることになる。


 いわゆる口封じだ。

 これによりこのエピソードは不快で不気味な結末を描くことになる。

 展開の都合とはいえ、ちょっとこれは露悪的なのではないかと思う。


「よう、ロバート」


「なんだ、クソガキ、お前か……」


 犯人ロバート・ペンネの護送前、確認したいことがあると断ってヤツと接触した。

 ヤツは囚人用の護送馬車に入れられていた。


「落ち着いているな」


「どうせ本家の叔父が助けてくれる。俺は監獄になんて行かない」


「これ、ここに置き忘れるかもな……」


 俺は正真正銘のクズの目の前で、なけなしの金で買った【爆裂の砂】を馬車の床に置いた。

 使えば小範囲に50ダメージが固定で入る、結局最後まで使わない系・アイテム欄の肥やしだ。


「どういうつもりだ……?」


「どうもこうもねーよ。今夜、お前は留置所で哀れな死を迎える」


「な、なんだと……っ!?」


「お前が喋れば、いかにルプゴス王子だろうとただじゃ済まない。これは王や兄が王家のメンツを汚した弟に、ブチキレすること確実の大スキャンダルだ」


「だから、アイツは俺を消す、って言うのか……?」


「おう、なんで自分が消されねぇと思うか、逆に聞きてぇわ。お前が逆の立場だったら、口封じに殺さねぇ?」


 俺の狙いはシナリオの破壊だ。

 コイツは救う価値のないクズだが、コイツが生きていた方が俺には都合が良い。


「クソガキ……いや、ヴァレリウス、こんなことしても、お前に恩なんて感じねぇぞ」


「俺には俺の狙いがあるんだ、どうとでも取れ」


「そうか、なら、ありがとうよ……。一応、礼は言っておいてやる。この生意気なクソガキが」


「筋金入りのロック野郎だな、お前……」


 こうして後味の悪い結末を描くはずだったこの事件は、実行犯の逃亡という新しい結末を迎えて終息した。


 気弱で善良なコルリを苦しめたあのクズ王子が、予定外の大ハプニングに動揺する姿が目に浮かぶようだった。



 ・



・生徒会長ルプゴス


「ぁぁ……ぁぁっ、ルプゴス様……」


「クククッ、私の愛しい未来の妾よ……」


「ルプゴス様……生徒会室で、こんな……っ、人がもし、来たら……ぁ……っ」


「コルリならばどうあろうと、生徒会にはもう戻って来ない。フィッシュパイも今頃は、どこかで魚の餌となっているだろう。フ……フフフ……ッ」


 ヴァレリウス、あの生意気な2年坊主め。

 邪魔だ。ここまでされた以上は、ヤツを排除する他にない。


「い、痛い……っ、痛いですルプゴス様っっ、うっ、うあああっっ?!!」


「ああ、すまないフォルテ……。ヤツの顔を思い出したら、無意識にな」


「いえ、大丈夫です……。貴方様の高貴なるお爪ならば、わたくしには……うあっっ?!!」


「ヴァレリウス、ヴァレリウスか……。かなりのキレ者のようだが、我らは相性が悪いようだ……」


 爪を食い込ませると苦しそうに喜ぶ女に、私は他の誰にも見せない愉悦の笑みを浮かべる。

 最初からコレを妾にしてやる気などないが、愛着はある。ゆくゆくは奴隷として飼ってやることにしよう。


「ル、ルプゴス様……あっ!?」


 水を差すようにそこへノックが響く。

 ロングソファーから身を起こして応対すると、それは私が飼ってやっている生徒会の役員の男だった。

 中で行っていたことを隠しもせず、彼を室内に通した。


「フォルテさん、その傷は……? あ、いえ、殿下、大変です……っ」


「ふっ、わざわざこんな遅くに伝えに来てくれたのか。ありがとう、お前は良く働いてくれている、卒業後は必ず重用してやろう」


 そう口にするだけで下々の者どもは喜ぶ。

 自分は選ばれたのだと勘違いをする。

 全ては口約束。この俺の踏み台に過ぎないというのに。


「たった今、憲兵隊から報告が。ロバート・ペンネが逃げました。爆発物を用いて、護送中に、川に飛び降りたと……」


 な……っ!? なん……なんだと……?

 余裕に満ちている私の胸に、王者にあり得ない感情がまぎれ込んだ。不安だ。


「逃げられた、だと……?」


「はい……今のところ、足取りすら見つかっていません……」


「探し出せ……。必ず探し出して、あの気持ちの悪い魚男を、殺せ……っ!!」


「はい、必ず、そのお言葉通りに、憲兵隊へと」


 役員を追い出すと、フォルテが私の後ろに立った。


「ルプゴス様、川に飛び降りたのならば、きっと今頃は死んで――あぐっっっ?!!」


 女の腹に拳を叩き込むと多少気が晴れた。

 フォルテは私の理想の奴隷にして、最高級のサンドバッグだ。


「痛かったか? 痛くなくなるまでお前を慰めてやろう……」


「ルプゴス、様……ありがとう、ござい、ます……うっ、うう……っ」


 いつの日か、妾にする気などなかったと明かしてやって、絶望させてやる。

 奴隷と愛を語る王子などいるわけがない。


「愛しているよ、フォルテ。私の真の愛は永遠に、お前だけのものだ」


 この女は俺がミシェーラ皇女を手に入れるまでの愛玩人形だ。私は奴隷と愛を語る趣味などない。

 私は愚かな女の腹に、爪を立てた。

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