・全校集会 告発の場にされる
かくして調査と検証の日々が過ぎ去り、今日で4月15日。月に1度の全校集会の日がやって来た。
全学年で370名を超える生徒たちは、この人数ではいささか狭い講堂に押し込められ、教頭の嫌味ったらしい長話を延々と聞かされた。
少し話がそれるが、この作品では学院長は姿無き学院長で、存在そのものが学園の七不思議となっていた。
ま、ぶっちゃけると、空色の箱を発明したのも学院長だ。
「諸君、共に実りある一学期を過ごそう。君たちとなら、帝立魔法学院をより良く出来ると私は信じている」
生徒会長ルゴプス王子の言葉が終わると、王子を支持する歓声が上がった。
この国の王子に取り入ろうとする者は数多かった。
「ヴァー様……」
「メメさん、皇女様を借りてくぜ」
「……はへっ、何事でごじゃりますっ?!」
メメさんは全く聞かされていなかったようだった。
主人とヴァレリウスが講壇に上がろうとする後ろ姿に、素っ頓狂な声を上げていた。
「なんだネそこの君たち、止まりなさい! なっ、ミシェーラ皇女殿下っ!?」
カレール教頭は権威に弱い。
ミシェーラ皇女さえ隣にいれば、俺は恐い者なしだった。
「これはミシェーラ皇女、これはいったい何用でございましょうか」
うやうやしくルゴプス王子がミシェーラ皇女を迎えた。
「はい、告発に参りました!!」
ハキハキとそれに皇女殿下が答えた。
「告発……? どういうことです、なぜその男が隣に……?」
やはりルゴプスはヴァレリウスのことを知っていた。
ミシェーラ皇女に付きまとう悪い虫を冷たく見つめ、どんな見解に至ったのやら高慢に鼻で笑った。
ルゴプス王子は肩の下までブロンドの髪を伸ばした、冷たい雰囲気の男だ。
口元は自信に引き締まり、目つきは鋭く高圧的だった。
第二王子というだけあって絶対の自信がその胸にあり、それが人を従わせるカリスマとなっている厄介な男だった。
「初めまして、ヴァレリウスです、先輩」
「お前のことなどどうでもいい。皇女殿下、これはなんの酔狂でしょうか?」
「フフ……見ていればわかります。ヴァレリウスッ、リンドブルム帝国第一皇女の名の下に命じますっ、告発を始めなさい!!」
「かしこまりました、ミシェーラ様」
講壇の一番前に立ち位置を変え、俺は全校生徒に一礼した。
顔を上げるとそこには、まおー様を肩に乗せたコルリの姿もあった。
……ネルヴァもいたが、そちらには顔を合わせないことにする。
「2-Bのヴァレリウスだ。同じクラスメイトのコルリ・ルリハにかけられた冤罪を解きたい。しばらく時間を俺たちに分けてくれ」
そう口にすると、ありとあらゆる方角から大反響がとどろいた。
今やその噂は学園中に広がり、知らぬ者などいなかった。
被害者は数多く、金を奪われた者たちは感情的になって今日までコルリを攻めたてた――と、まおー様経由で聞いている。
「静粛に! 皆さま、このヴァレリウスの言葉をどうか私の言葉と思い、聞いて下さい!」
ミシェーラ皇女がそう叫ぶと、どよめく講堂が静まった。
集まった視線に俺は声を大にして応えた。
「調査の結果、真犯人に至る証拠を見つけた!! 生徒会書記コルリにかけられた疑いは、やはり冤罪だった!」
「はい!! 真の共同購入費泥棒は、今この講堂の中にいるのですっ、皆さん!!」
それ、俺のセリフだった気がするな。
俺とミシェーラ皇女は、講堂の端に立っていたフィッシュパイに振り向き、両手を組んで見下ろした。
「なっ、何……っ、何を言って……っ」
フィッシュパイは動揺した。
この場の注目全てを集める2人に、真犯人扱いも同然の態度を取られたからだ。
結果、場の皆の視線がフィッシュパイだけに集中することになった。
「用務員のロバート・ペンネ!! あの男が金を盗んだ!!」
「なっ?! 何を言いやがるこのクソガキッッ!!」
「否認するのか?」
「あ、当たり前だっ、俺をバカにしやがって!!」
「いいぜ、反論があんなら上がって来いよ? ここに上がって、自己弁護してみろよ、フィッシュパイ!!」
告発のためにお行儀良くよくしていた言葉を、あえて崩して挑発した。
「殺すぞクソ野郎ッッ!!」
フィッシュパイは軽い挑発に引っかかって講堂に上がって来た。
舞台の正面中央で俺たちが睨み合うと、生徒たちの歓声が上がる。
第三者からすればこれは、学園生活を彩る愉快なプロレスだった。
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