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「ありがとう。とても助かったわ」


 僕たちに最初の部屋で待つように言い、リリーさんは男の人を連れてどこかに行ってしまった。

 程なくして戻ってきたリリーさんはアッシュに笑顔でお礼を言ったのだが、笑顔なのに雰囲気が怖いのは気のせいかな?


「不満そうだな?」

「あんなことして不満が無いわけないでしょう?」

「何がだよ? 器物破損無し、負傷者無し、上等じゃねーか」

「負傷者なし!? ええ、ええ、確かに外見的には負傷者なしだわね!」


 アッシュと話している内に次第にひきつっていっていたリリーさんの笑顔がここでついに消えた。一方アッシュはリリーさんの言葉なんかどうでもよさそうに面倒くさそうな顔をしている。


「内面的にも3日経ちゃ元通りだ。そもそもアイツが呪具を作ってたんだから自業自得だろ」

「っ、だとしても……!」


 反射的にアッシュの言葉に反論しようとしたリリーさんだったが、続く言葉が思いつかなかったらしくグッと詰まって苦しそうな顔をした後、諦めたような顔でため息をついた。


「そうね。確かに貴方の言うことも一理あるわ。協力してもらったのに責めるみたいになってしまって悪かったわね」

「リリーさん偉いね。あの流れでアッシュに謝れるなんて」

「助けてもらって感謝してるのは本当だもの。それにあの男の状態を見て取り乱しちゃったけど、今の話を聞く限り3日後には回復するってことでしょう?」

「そうだな」


 リリーさんの質問に、アッシュが簡潔に答えた。

 確かに回復はするんだろうけど、元の精神状態に戻るとは言ってないんだよなぁ。上手くいけば悟りを開けるって言ってたっけ?

 そんなことは知らないリリーさんはホッとしたように息を吐いた。リリーさんの為にもあの男の人には頑張ってほしい。


「約束通り貴方たちの住居を用意するわ。何か希望はあるかしら?」

「五月蝿くなくて、不便じゃない場所。セキュリティのしっかりした、風呂の広い物件でよろしく」

「僕は日向ぼっこが出来る大きな窓がある家がいいなぁ」


 アッシュの条件に頷いた後、僕の希望を聞いてリリーさんは固まった。大きな窓は贅沢だったかな?


「……貴方、それだけでいいの?」

「うん? 大きな窓は難しい?」

「いえ、大丈夫よ? けど本当にそれだけでいいの? そっちの彼みたいにもっとあるんじゃない?」

「うーん……そう言われても僕家ってよく知らないんだよね。だからリリーさんが良さそうなところ選んでくれたらいいよ」

「……貴方たち、足して2で割ったら丁度いいんじゃない?」

「僕アッシュにはなりたくないなぁ」

「それはこっちの台詞だ」

「はぁ……じゃあすぐ探してくるからもう少しここで待っててちょうだい」


 僕たちの会話を聞いて大きなため息をついた後、再びリリーさんは出ていった。

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