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「コーヒーでいいかしら?」

「俺はコーヒーは嫌いだ。酒がないなら水でいい」

「僕はコーヒー飲めないから、僕も水でお願いします」


 アッシュの態度に一瞬ぴくりと反応したけど、表面には出さずに水を用意してくれた。受付嬢なんてやってるときっとアッシュ並みに失礼な奴とかいっぱいくるんだろうなぁ、大変だなぁ。あ、この水おいしい。


「早速だけど本題に入っていいかしら?」

「疲れてるから手短にな」

「わかってるわ。ちょっと見てもらいたい物があるの」


 そう言ってリリーさんは水と一緒に持ってきた大きめの箱を開いた。

 アッシュと中を覗き込むとそれは――


「魔道具?」


 指輪やネックレス、ティアラなど様々な魔道具が無造作に詰め込まれていた。僕は詳しくないのでわからないけど、すごい高いやつとか混ざってたりして。


「冒険者協会は呪われた魔道具でも集めてんのか?」


 アッシュの言葉にリリーさんは目を丸くした。ついでに僕も驚いた。これ、全部呪われてるの?


「見ただけで解るなんて本当に詳しいのね。って、触ると危ないわよ!?」

「平気だ」


 慌てるリリーさんを無視してアッシュは箱に手を突っ込んで、1つ1つ軽く眺めてからテーブルに並べていく。

 程なくして全ての魔道具をテーブルに並べ終えると、アッシュはリリーさんに尋ねた。


「で? コレが何?」

「それは王都各地で売られていた魔道具よ。最近呪われた魔道具が普通の魔道具に紛れて出回ってるの。危ないから早く解決したいんだけど売られている店もバラバラで、店主も呪われてるなんて知らなかったって人ばかり。仕入れの経路を調べても巧妙に隠されててお手上げ状態なのよね」


 疲れた様子で説明するリリーさんに、アッシュは同情するでもなく「ふーん?」と興味なさげに返した。


「それで、協力してくれる?」

「そうだな……犯人の候補は?」

「3人まで絞れてるんだけど、決定打にかけてるのよね」

「3人か、まあ及第点だな。そいつら何かしら理由つけてここに連れてこい」




「犯人候補の男たち、連れてきたわよ。商談したいって言ったら簡単に着いてきたわ。今は怪しまれない為に別々の部屋で待機してもらってるけど……どうするつもり?」

「そいつらの部屋教えろ」


 アッシュはリリーさんの質問に答えず、自分の要求だけ告げてさっさと歩き出した。リリーさん、抑えて抑えて。そんなことで腹を立てていたらアッシュと話なんて出来ないよ。


 何とか怒りを鎮めたリリーさんの案内の下、僕たちはたくさんの扉が並ぶ通路に案内された。

 僕はそれを見て僕たちが今拠点にしている宿の廊下みたいだと思ったが、あながち間違いじゃなかったらしい。リリーさんが言うには、ここは職員や訳あり冒険者が一時滞在出来る宿のような場所らしい。


 アッシュはどうするつもりなのか怪訝な顔で見ているリリーさんを置いて勝手に廊下を進んでいく。

 そして1つの部屋の前でピタリと止まり、こちらに向かって振り返ってその部屋を指差した。


「コイツが犯人だ」


 アッシュの言葉を聞いてリリーさんは目を見開いた。


「どの部屋に候補がいるのかも言ってないのに、どうして分かったの!?」

「あ? あー……こんなん魔族なら誰でも分かる」

「僕は分かんないよ」


 アッシュの言葉に反応すると睨まれた。

 いつも高位の魔族だと言って憚らず、優秀な俺に跪けといった魔王もかくやという態度の彼が珍しく謙遜したのは、どうやらリリーさんにこれ以上『使える』と思わせない為らしい。

 「だから余計なことは喋るな」と脳内に直接話しかけられたので、僕は口にチャックをするジェスチャーで了解の意を返した。当然僕は脳内に直接話しかけるなんてことは出来ないので。


「うちの職員にも魔族はいるのだけれど……まあいいわ。けど証拠もないのにどうやって捕まえるつもり?」

「は? 証拠も何ももうコイツが犯人だって分かってんだから無理無理引っ張ってきゃいいじゃねーか」

「そんなこと出来るわけないでしょ!?」

「面倒くせーな……じゃあ本人の自供が取れりゃいーか?」

「え、ええ、それなら十分だわ」


 リリーさんの返事を聞いて、アッシュはノックもなしに乱暴にその部屋の扉を開いた。

 僕は一番後ろにいたので中の様子は見えなかったが、男の人の「誰だ!?」「ひっ……何をする!? 止めろ!!」「ひぃぃぃ! そうだよ! 俺がそいつを作ったんだ!! 自首するから助けて……ぎゃあああ!!」という声は聞こえた。アッシュだもんなぁ。

 静かになった部屋からまず男の人を連れてリリーさんが、最後にアッシュが出てきた。


「何したの?」

「アイツの作った呪いの魔道具から一番えげつなかったやつを着けてやった」

「君が一番えげつないよね」

「どこがだよ? 自分で作った呪具も制御出来ない三流が悪い。それに効果は俺が害のない物に態々書き換えてやったってのにそんなことも気づかねぇ」

「ちなみに害のないものって?」

「ちょっと精神の迷路に入る」


 それってこないだ君が「えげつない魔法が出来た」って上機嫌で教えてくれたやつじゃなかった?


「害のない?」

「3日もすりゃ効果が切れるんだから害は無いだろ。ああでも3日後あの男がどうなったか見れねーのは惜しいな」


 僕は男の人の後ろ姿を見た。ふらふらよたよたしていて、リリーさんに引かれるままついて歩いている。

 僕はあの人が無事に悟りを開けることを祈った。

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