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「ねぇアッシュー、ホントにここにいるのー?」
「五月蠅い。黙れ。静かに歩け」
「横暴だなぁ」
僕は疲れて不機嫌な友人と共に鬱蒼と生い茂る森の中を歩いていた。
数日前に王都にやって来た僕らは、アッシュの古い知り合いだという怪しげな老人から手に入れた情報を元に人を探していた。
人、と言ったが人間ではない。『森の賢者』と呼ばれている魔族であり、姿は梟に近いという。
「これだけ探していないんだから、もう飛んでっちゃったんじゃない?」
「あ゛ー……認めたくねーが、その可能性が高い。とんだ無駄足だ。あのジジイ、喰ってやろうかな」
「おじいちゃんっておいしいの?」
「……冗談だよ」
僕の友人は人魚だ。
今は立派な2本の脚で歩いているが、水に入ればその足はたちまち鰭に姿を変える。
本人曰くとても長く生きているらしく、数えてはないが1000年以上は生きているというのでまだ18年しか生きていない僕にとっては大先輩だ。
人魚は必要に応じて他の種族を喰らう『食事』をすることがあるらしいが、僕は彼が食事をしているところを未だ見たことはない。
そういえば出会ったときは子供の僕を食べようとしていたなんて冗談も言われたこともあったな。
「はぁ―……とりあえず一旦拠点に帰るか。あ゛ー」
「もう1回おじいちゃんのとこ行く?」
「それこそ無駄足だ。あのジジイはあれ以上情報なんか持っちゃいねーよ。あ゛ー水浴びしてー」
友人の愚痴を聞きながら僕らは滞在中の宿に向かっていたが、もうすぐ森を抜けるというところで異変に気付いた。
暗い森の向こうが赤く染まっている。夕方だったので夕日のせいだと思ったが、どうやらそうではないようだ。
街が燃えている。
「火魔法……テロか?」
数日前初めて『街』というものに来た僕は、訳も分からず「街って日常的に燃えることもあるんだ」とアホみたいなことを考えていたが、大先輩で世の中のことをよく知っているアッシュは冷静に状況を分析していた。
「犯人を捜すぞ」
「あ、悪い顔」
何か思いついたようでニヤリと笑うアッシュと一緒に、僕は逃げ出す人々の波に逆らいながら街の中心部へと向かっていった。




