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「それで、今度はどこに連れていかれたの」
「低層地区の方ね」
僕の質問にすぐにリリーさんが答えられるのは、デイジーに発信機がついているからだ。もちろん本人の同意の上である。
デイジーは新米冒険者の人間の女の子だ。
リリーさんがまたと言っていたように、日常茶飯事のように誘拐される。
たぶん可愛い方だと思うし、たぶんスタイルも良い方だとは思うが、彼女が攫われる原因はそういった理由ではない。
人間、魔族、精霊の3種族が入り乱れ暮らすこの国では、法など大した意味を持たない。それぞれの種族の価値観が違いすぎるからだ。
それでもある程度の治安が保たれているのは、良識ある種族のトップがそれぞれの種族をまとめているからに他ならない。
そしてトップにはそれぞれの種族でいくつか条件があるが、共通して必要とされているのが強い魔力である。
デイジーは強い魔力を持っている。
残念ながらそれ以外のトップの条件は満たしていないが、魔力だけなら今の人間のトップを凌ぐ。
とある事件でその事実が露見してしまった為、その魔力を利用しようとする輩に狙われるようになってしまったのだ。
それだけ強い魔力を持っているのだから自分の身くらい守れるだろうと思うだろうが、彼女はその強すぎる魔力故コントロールが全くできないらしい。
そのため身を守ろうとして魔法を発動しようとすれば最後、街ひとつ滅ぼしかねない為、彼女は普段魔法の使用が禁止されている。
「そもそもなんでデイジーは攫われるような場所に出歩いていたの」
「それは本人に聞いてみないと。救難信号を飛ばしてきた時には既に低層地区にいたみたいだけど、自分でそこに行ったかはわからないわ」
とりあえず詳しい場所を聞いて、準備をしてからリリーさんと別れて救出に向かう。
リリーさんはただの受付嬢であり、普通の人間の女の子なので連れていくわけにはいかない。
「僕、弱いんだけどなぁ」
僕は冒険者であり、蜥蜴の魔族なのだがとても弱い。
魔力が強さの全てを決めるわけではないが、それでも大部分を占めることは間違いない。その魔力が、僕はただ生きているだけでどんどん減っていくのだ。
それが僕だけの体質なのか、同族全てがそうなのかは生まれた時から同族が周りにいなかったのでわからないが、少なくとも今まで出会った中にこんな体質の人はいなかった。
「強い相手じゃないといいなぁ」
僕はため息をつきながら、教えてもらった敵の本拠地へ重い足取りで向かった。




