⑥
何度目かの大穴を目指す道中、封印士の話をするには場所を選ばなくなったから、補給に寄った町の食堂で、リーレンがこんなことを言い出した。
「小さい頃は泣き虫だったのに、クリシェはすっかり落ち着いたわね。といっても、ぐずるには訳があったのかもしれないわ」
「おい、俺もずいぶん抱っこは上手くなったぞ」
抱っこが下手だとからかわれた気がして、ガゼットは口を尖らせる。「そうじゃないわ」と吹き出して、リーレンは話を続けた。
「セオタスが抱っこしても泣いたじゃない。でもセオティは平気だった……クリシェはきっと、封印士なのよ。同じ力を持つ者同士のほうが、落ち着くんでしょうね」
「ああ……そう言われると、そうだな。やはり受け継いでいるか」
旅の時は、娘を両親に預けている。たびたびリーレンの実家に遊びに行っては、クリシェの相手をしているセオティが目に浮かんだ。同じ光景を想像しているとわかって、ガゼットはリーレンの目を見た。
「セオティは特に頑張っているよね。どうなんだい、封印士達の様子は?」
リーレンはひとくち茶を飲んで、細く息を吐いてから問いに答える。その仕草から、全てが順風満帆ではないことがわかった。
「自己判断で封印するのを任せられる術士も、一部いるけれど。まだサポートにつかないと心配な子が多いわ。術と知覚の二人をどう組み合わせるかも難しい」
ここで言う一部とは、人間に扮した下級神のことだった。もとより封印術を使える彼らは、穴を通る養分の流量を整える術式だけを学べばよかった。一方、純粋な人間の封印士は魔力を術として放出することから覚えなくてはならない。そして問題は能力のバランスだけではなかった。
「こう、言葉でさじ加減を伝えあえる仲でないと、上手くいかないのよね。私、そういうことには疎くて」
「なるほど。個別に指導するというより、今のように皆を一緒に見て教えるのは理に適っているかもね。そのうち相性も見えてくる。一歩引いた所からなら分かることもある、手伝うから抱えないで」
「ええ、ありがとう。大丈夫、さすがに頼る事を覚えたわ」
歩む道は二人でひとつ。もう随分と記憶の話はしていないが、同じ決意を胸に秘め、手の平の温もりを確かめた。




