The Last Day:チビ猫、島を公開する
ばけねこさんは、あれからあたらしいおうちをさがして、あちこちかけまわっていたのですが……
みんなにことわられてしまったので、とりあえずなんとかなるまで、ここにいさせてもらえないか、とおねがいにきたのでした。
ヒロさんもチビも、そくざにうなずきます。
「なにいってるの、もちろん大歓迎だよ!
ミーさんはもともと、うちのこだよ。
いつまでだって、いてくれていいんだから!」
「うん! チビ、ばけねこさんといっしょがいい!」
「……そういうわけにゃいかないにゃ」
「どうして?」
チビはまっすぐな目で、ばけねこさんをみあげます。
もう、かくしておくことはできないでしょう。
ばけねこさんこと、ミーコさんは、しずかにじじょうをはなしはじめました。
「ワガハイはにゃ、もともとヒロさんのおじいちゃんにひろわれた『ほごねこ』だったのにゃ。
おうちのひとはみんなやさしくて、ワガハイはとてもしあわせだったにゃ。
なかでもいちばんかわいがってくれたのが、ヒロさんにゃ。
ワガハイたちはいつも、いつもいっしょだったにゃ。
そのおかげか、じきにワガハイは、ひとのことばをおぼえたにゃ。
さいしょはたった五文字『ありがとう』とタイプして。……
そこから、ワガハイとヒロさんは、メモアプリをつかって『こうかん日記』をするようになったのにゃ。
ワガハイたちはもっともっとなかよくなった。
ミーコはいいこだ、もし人間だったなら、およめさんになってほしいものだと、ヒロさんはいつも、ワガハイのことをじまんしてくれたものにゃ。
けれどそのせいか、ヒロさんは人間の女性と縁遠くてにゃ。
このままじゃいかん、きっと婚期をのがしてしまう。
ワガハイのそんざいが、ヒロさんを人間として、不幸にしてしまう。
……そんなふうに思うようになった、ちょうどそのころにゃ。
会社で飲み会のあった晩、ヒロさんはよいつぶれたコウハイを連れてきてにゃ。
水をのませたりしてカイホウしてやってたら、コウハイからの『愛のこくはく』がはじまったのにゃ。
センパイのことがだいすきです、どうかケッコンしてくださいと。
これはもう『今』しかない。そう思ってワガハイは、マリーたちにたのみこんでルームシェアをはじめて、この家をでたのにゃ。
そういやヒロさん、その御仁とはどうなったのにゃ? ここんとこ、とんとみないが、『つがい』にはなれなかったのかにゃ?」
そのといかけにかえってきたのは、おどろくようなへんじでした。
「どうもこうも、あいつ男だからね?『つがい』になるとか、むりだからねっ?
っていうか、あいつよっぱらうと、ああやってみんなに愛の告白をするから、全然ホンキとかじゃないんだって、あのときもミーさんに言ったはずだけど……」
「ええ~……マジマジのマジだったんかにゃ~……」
なんともいえないびみょーな空気が、ヒロさんちの居間に流れます。
「マジマジのマジだってば。
もちろんっ、僕のミーさんへのきもちも。
だから、決めたんだ。ミーさんさえ迷惑じゃないなら、……」
けれどそんな空気は、ヒロさんのおどろきの『けついひょうめい』でふっとびます。
「僕が化け猫になるよ!
えっと、化け猫が無理なら、……化け人間?
とにかくなにか、ほうほうをさがして、ミーさんにつりあうソンザイになる!
そうしたら、その……」
「なんたることかにゃっ!」
すると、ばけねこさんが声を上げます。
「せっかくワガハイが決意をかためてきたというのに!
ヒロさんさえ許してくれるなら、なんとかして人間になって、ヒロさんの嫁に、チビの『にんげんのお姉さん』になろうと!!」
「ミーさん……!!」
ヒロさんは手を伸ばして、ばけねこさんをだきしめます。
ばけねこさんもうれしそうに、その手に甘えます。
そのようすをみるとチビは、うれしくてうれしくて、とびきりふわっふわの、はねるけだまになってしまうのでした。
これからのことは、これから。
年末年始のおやすみに、さんにんでゆっくりはなして、きめることにしました。
まずは、めのまえのプロジェクトを、完成させましょう。
そう、みんなでちからをあわせてつくりあげた、チビのおくりものを、無事に世に出すこと。
すべては、それからです!
そこからの数日、さんにんはひたすら、チェックとお直しを繰り返して……
ついに、その日がやってきました。
わかる限りで、ふぐあいはありません。
せつめいぶんよし、サムネイルよし。
あとは、『ワールドを公開する』ボタンをおすだけです。
チビはすうはあ、すうはあと、しんこきゅうをくりかえします。
そうしてぽちっとマウスをクリック…… できません。
「どうしたにゃ、チビ?」
「だ。だいじょうぶかなって。……
とどくかな。めいわくじゃ、ないかな。
……わらってもらえるかな?」
するとばけねこさんは、どんっとむねをたたきます。
「おうよ。
こんっなナイスなワールドおくられたら、ばけねこさんならヨロコビのあまり『にゃっと空中三回転』キメちゃうにゃ!
しんじるにゃ。チビはいっぱいがんばった。
そのきもちはきっと、そらをこえていつか、カノジョを笑顔にしてくれるにゃ!」
ヒロさんも、にこにこわらって、いってくれます。
「僕も、そう思う。
だいじょうぶ!
チビのツリータワーはきっと、だれかの居場所になれるはず。
だって、チビのやさしいおもてなしのきもちが、いっぱい、いっぱい、つめこまれてるんだから」
ふたりのあったかなはげましに、チビのむねはいっぱいになりました。
こころも、おてても、ほっかほか。
もう、こわいものはありません!
「ありがとう!
よっし……こ、こうかいっ!
よろしくおねがいしま――っす!!」
ちいさなおててが、ぽちりとマウスをクリック。
かくしてここに、チビのたんせいこめたワールド――
『ストレイキャット・ツリータワー』が、世界にむけて、公開されたのでした!!
ワールド、本当にあります! じゃん!! こちらです!!
↓ ↓ ↓
https://cluster.mu/w/bf13430e-9fbc-4976-ab3b-000289eec13e
……公開まで120回以上入ってテストしてたのはナイショでござる。
近日、こちらで紙上ワールドツアーをやる予定ですので、そちらもあわせてお楽しみいただければ幸いです♪
次回『日向、神託をさずかる(※ねこ神様の)』
本日夕刻投稿します!
ひとことでいうならスライディング土下座回ですごめんなさい!!
よろしければ、のぞいてやってくださいませm(__)m