十日目:チビ猫、アセットを検索する
しばらくはねまわってチビがおちつくと、ばけねこさんは質問をなげかけました。
「チビは『アセット』については、もう知ってるにゃ?」
「ゲームをつくるときの『そざい』『ぶひん』のことです!
アイテムやいきものの『かたち』とか、それにつける『テクスチャ』とか、ならす『おと』とか、いろいろなはたらきをさせるプログラムとかです!
ゲームのオブジェクトとか、あとは、プロジェクトそのものをいうこともあります!」
チビはもちろん、そのあたりのことも調べてあります。
ばけねこさんはちっちゃく拍手をして、つづきを話します。
「よくできましたにゃ!
ユニティの『アセットストア』にはにゃ、それがいーっぱい売られてるのにゃ!
というか無料のもあるのだにゃ!
それらをうまく使わせてもらって作るのも、ワールドとしてはゼンゼンアリだそうにゃ!」
「……え?」
それをきいて、チビはちょっとだけとまどいました。
だれかが作ってくれた部品をくみあわせて、タワーをつくって……
『これは、チビがつくったものだよ』といってしまって、はたしていいのでしょうか?
ばけねこさんは、いまもってきたご本をぱらぱらとめくって、あるページを示してくれました。
「このご本によればにゃ。
どの素材を、どこにどう置くか。それを決めて実行するのも、じゅうぶん『創作』なのにゃ」
ばけねこさんが示すさきをみてみれば、たしかに、そのように書いてあります。
「まあ、どちら様がおつくりになった素材かは、『ワールドのせつめい』とかに書いておくといいのだけどにゃ。……
チビがこのさき、すてきなタワーをつくりあげてにゃ?
そのとき、自分の作った素材が、そのたすけになってたら……
素材の作者さまは、きっとすっごく、うれしいはずにゃ。
だから安心してどーんと、チカラをかりてみるのにゃ!」
ばけねこさんは、にこにこと笑っています。
チビは、ばけねこさんに、といかけました。
「ばけねこさんは、チビがおねがいすると、……うれしい?」
「おうにゃ! もちろんなのだにゃ!!」
それはもう、とうにこたえのわかった問いでした。
それでも、チビはといかけて……
ばけねこさんは、どんっと胸をたたいて笑いました。
そのすがたに、チビはかくしんします。
『アセット』をつくってくれたひとたちも、チビが力をかりたなら、きっとこうして、よろこんでくれると。
「ありがとう!
それじゃあ、アセット、つかってみる!
とってもすてきなタワーをつくって……
あのこたちにも、アセットのさくしゃさんにも、みんなみんなに、よろこんでもらえるように!!」
チビはいっぱいの笑顔になります。
そうして、『ぴょんっ』とばけねこさんの胸に、とびこんでいきました。
その日はそれで、いったんかいさん。
つぎの日からチビは、アセットストアをねっしんに見てまわりはじめたのでした。
チビはふつうのこねこなので、気にいったものをどんどん買うわけにはいきません。
ですのでまずは、『価格の安い順』でならべてみました。
そのけっかにチビは、おどろきの声をあげました。
『Free』=無料、とねだんのついたものだけでも、とっても全部はみきれないほどにあるのです。
『せかいには、こんなにもすごくて、やさしいひとたちが、いっぱいいっぱいいるんだ!』
そうおもったチビは、かんしゃのきもちでいっぱいになります。
じぶんも、すてきなタワーをつくりあげて……
そこにきたひとたち、みんなにしあわせをあげたい。
チビのむねのなか、そんなきもちが、あらたになります。
すてきなアセットが並んでいるのは、アセットストアだけではありません。
『Booth』というサイトにも、いろいろなアセット、ときにはワールドまでもがあるのがわかったのです。
そうだ。こまかくつくりたいときには、ブレンダーも使うんだよね。
じゃあ、もしかしたら、ブレンダー用にも、いいのがあるかも!
そうして検索をかさねていくと、アセットのせかいはどんどんとひろがってゆきます。
いつしかチビのてもとには、草や木や花、空やソファーや『はし』などの、すてきな『お気に入り』がいくつもいくつも、あつまっていたのでした。
アセットをつくれる方は本当に尊敬してしまいます。
七月に『風鈴』をつくる――本体はすでに用意していただいており、入れるのは絵だけだったのですが――お題にチャレンジしたところ、それだけでも難しかったですから。
さらにそれがいくつもはいったワールドひとつ作り上げるって、どんだけすごいのか……!!
目指す高みははるかかなたに思えますが、まずは一歩一歩です。
次回『間奏~日向、アセットの意味を調べる』。
予約投稿となりますので見つけてやってください! どうぞ、お楽しみに!!