九日目:チビ猫、おくりものをもらう
チビはちいさなこねこです。
どんなにがんばっても、その体力には限界があります。
試作のタワーを見てほっとして、ここまでのつかれが出てきたのでしょう。
まもなくチビは、うつらうつらとしはじめました。
ばけねこさんも、そのへんはわかっています。
チビをこねこようベッドにそっと運ぶと、しずかにおうちに帰っていきました。
けれど、その翌日。
ばけねこさんがおみやげを手に、ようすをみにきたときにはもう、チビはもとどおり、げんきいっぱい!
ばけねこさんのすがたをみつけるなり、ぴんっとしっぽを立てて、かけよってきます。
「ばけねこさん、ばけねこさん!
あのね、おはなし、きいてくれる?」
「もちろんにゃ!」
こんなかわいい後輩のおねがいを、ことわるわけもありません。
ばけねこさんは、いっぱいの笑顔でうなずきました。
今日もまだまだ暑いです。まずはおへやに上がって、ふたりで『ねこ用むぎ茶』をいただくことにします。
そうしてチビがはなしたことは、こんなことでした。
「あのね、ばけねこさん。
けいかく、もうすこし、こまかくしてみたの」
きのうの計画では『10月半ばまでに、ユニティでタワーをつくってみる』となっていましたが……
そこまでにしなくちゃいけないことは、実のところ、いくつもいくつもあるのです。
「まず、九月なかばまでに、だいたいのかたちをつくってみるの。
みずにうかぶしまを、ふたつつくって、とびいしと『はし』をつくって。
かべと、いりぐちと、まどと、うらぐちと……
えだと、デッキと、ハコのおへや。そうしてかいだん。
ぶらんこと、ハンモックと、ぴょんスポット。
テーブルや、ソファーも、おいてみるの」
ミイミイ、こねこの声にのせて、チビはいっしょうけんめいに、はなします。
「そのあと、うごくしかけをつくって、つけてみる。
ぶらんこと、ハンモックと、ぴょんスポットのとこ!
そしたら、かざりつけ。
かべとかを、木のもようにしたり、えだにはっぱつけたり、しげみをおいたり。
テーブルに、お茶とおかしものっけて。
ランプも、かわいいのにして!」
ばけねこさんは、ううむとうなりました。
てのひらにのってしまいそうなこねこが、かわいいあたまで考えたにしては、りっぱすぎるほど整理されているのです。
まずは構造など、大きなところからはじめる。
そうしたら家具をおいてみて、広さの印象をたしかめる。
動くギミックの試作を後に回したのは、やりきれないと判明した時に、そこを捨てるためなのでしょう。
そうして、つくると決めたすべてのものをそろえてから装飾にはいることで、何度もやり直しする事態を防ぐ。
ばけねこさんはうなりました。
これが、こねこのほんきというやつなのです。
しかし、ならばこそ、アシストのしがいもあるというもの。
にっこり笑顔になったばけねこさんは、おみやげのつつみを広げました。
でてきたのは二冊の、新品のご本です。
「だったら、これをつかうといいにゃ。
こっちは、クラスターのワールドのつくりかたのご本。こっちはブレンダーの使い方のご本だにゃ!
あっちこっちでおすすめされてるし、ばけねこさんも理解できたから、かならずチビの役にたつはずにゃ!」
「ええええ?! い、い、いいの?!」
こんなりっぱなおくりものを、ちいさなこねこのために用意してくれるなんて!
チビはとってもおどろいて、ぽわぽわのせなかもふわっ、ほそくてさきっちょがとがったしっぽもふわっ。
まるっきり、けだまのようになってしまいます。
「もちろん、いまは『貸すだけ』にゃ?
チビがちゃんっとタワーをつくりおえたなら、お祝いとして正式にぷれぜんとするのだにゃ。
もっとも、チビならかならずやりとげる。
そう、ワガハイは信じているけどにゃ?」
「! ! !」
そんなチビに、ばけねこさんはぱちんとウインクをよこします。
チビは感激のあまり、ぴょんぴょこ、ぴょんぴょこ。
はずむ毛糸玉のように、とびはねるのでした。
次回『間奏~日向、参考書籍をゲットする』
どうぞ、お楽しみに!