スペース1.オラ東京さ北田
野菜の入ったダンボールを持つ少女が1人ドアの前に立っている。ジャージにちょんまげ仁王立ち、希望に満ち溢れる凛々しい顔のこの少女、時乃コユキにはとあるミッションがあった。
それは、『隣人への挨拶』である。
\\\\\\ピンポーン/////
チャイムがなる時、そう、それは待機時間である。
(は、はじめ…、、隣の、となり、ん?、にれいにはくしゅいち、れい…よし、)
――説明しよう。彼女の脳内では緊急アラームが鳴っていた。イメージトレーニング略してイメトレはご存知だろうか…
(……もしもこのドアがスライド式だったら、ぶつからずに済むはず。……っは!?半分だけスライド式だったら大変だ、こ、この野菜箱に頭ぶつけてしまうんじゃないか!?)
サッとドアに背を向け、また考える。
コユキのイメトレは考えすぎるあまり未知の領域に入り始めていた。
(……もしも、あのドアが、実はフェイク、で隣の壁を突き破って、隣人が出て来たら……まさかっアメフト部!???早朝練習の邪魔しちゃうんじゃないか??)
隣の壁を確認するが亀裂は無い。穴も見当たらない。
「……あ、よかっ、」
ドガッ!!!!……ザザザッッ
そのドアは、勢いがよすぎた。あれ、私がスライドした……?
「え!?あ、すみません!!!大丈夫ですか!??」
凄くいい声だなと顔を上げると、
「……わぁ、」
将来超絶美少年になるだろう。
そんな眩しいほどのショタが手を差し伸べてくれていた。
……うっ眩しっ。
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「お姉さん待ってて、救急箱っ、蓮さあああん!!!」
野菜の箱を玄関に置き、慌てて救急箱を取りに行ったショt……。こほん、白いパーカーに半ズボン。髪がくせっ毛というなんともクオリティーの高いショタだった。裸足のペタペタ音はペンギンのようだった。
「……くぅっっっ」
可愛さを噛み締めて上をむいたわけじゃない。
どうやら、アスファルトとのキスは早すぎたようだ。痛いなぁ。
「誰お前」
少年と入れ違いに出てきたのは、長髪に1本縛り、
ゆるっとしたトレーナーが似合う青年だった。
あらやだ、美形。兄弟だろうか、年は20代ぐらいだな。
とりあえず挨拶をする。
「時乃コユキと申しまふっ、」
鼻血が垂れそうなので、また上をむく。首を上下にと赤べこみたいな動作は続く。
「……お前、鼻血は上むくなって習わなかったの?」
初対面に何故そんな、ゴミを見るような目ができるのだろうか
(…………!!??)
と、正面を向いた瞬間顔が近づいてくる。咄嗟に目をつぶる。
「鼻血もやばいけどこっちも酷いな、血だらけじゃん……」
しゃがんでいた。急な至近距離ほど心臓に悪いものないんだよ!?知ってる!??下を向く。
「ドアに当たって転んだだ……わあ、」
膝に穴があった。血だらけであった。
「っっっ持ってきたよおお!!!」
ダンボール箱サイズの白い救急箱。昔テレビでサイコロを振ってた番組が頭をよぎる。
「るせえ、優輝ティッシュ」
「はあああああい!!!」
箱をよいしょと置くと、また中に勢いよく走っていった。焦っているのだろうか。
「んで〜……はいっ横」
「ん!?」
「……まくってぇっと、」
グイッと腕を引っ張られ横に座らされたかと思えば、傷の処置が始まる。痛いのなんて気にしませんわよ。
ガン見していると睨まれてしまった。咄嗟に視線を足に戻す。綺麗な人ほど睨んだ顔怖いんだよ???知ってる?????
「蓮さあああん!!!はいティッシュ!!」
「……な、ふっつうに渡せ馬鹿!」
ティッシュ箱を全力で蓮さんに当てにいくスタイルを見て。
「良い兄弟じゃあないか……」
心の声を漏らしながらティッシュで鼻をかむ。
「ちげー」
「違います」
春、一人暮らし。
住民、優輝と蓮。ジャッジが始まった。
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初投稿になります〜
楽しく書いていくのでよろしゅうお願いします