Prologue
創世暦3986年4月14日
特殊要塞都市ローゼリア
ロアスベルク連合共和国統合軍第7艦船停泊ブロック
『艦長。第8セクターの恒星バルトライン付近にて大規模なエーテルバースト現象を確認しました』
昼食後のささやかなティータイムは、突然ホップアップした通信ウィンドウによって破壊された。
艦長と呼ばれた女性はティーカップをテーブルに置きながら尋ねる。
「バルトライン?……確か、ファフトゥール連合帝国との相互不干渉地帯の外縁部よね?」
通信ウィンドウに表示された女性が返答する。
『はい。近傍星系最大の鉱山惑星を持つ恒星系です』
「相互不干渉地帯なら軍である私達には関係ないでしょう?」
相互不干渉地帯には両国の軍が入る事は禁じられているのである。
「いいえ。エーテルバーストの方向が発展途上惑星であるEARTH583(地球)に向いています。途上惑星保護管理法に基づきエーテルバースト探査鎮圧命令が本国より出されております」
しばしの沈黙の後、艦長は答える。
「そう。分かった。『ノルトヴィント』は今すぐ使える?」
『はい。アースベルクも出航可能とのことですが……』
「いえ、アースベルクは大き過ぎるし、何より相互不干渉地帯なんかに乗り入れるデリケートな任務には向かないわ。それよりも小回りの効く『ノルトヴィント』の方が適任でしょう」
『では?』
「『ノルトヴィント』での恒星バルトラインの探索を命じます。今回は指揮官にシオン・マテリア大尉を起用して。『アースベルク』は待機。但し、すぐに出航できる状態にはしておいて」
『了解です』
それを最後に通信ウィンドウは閉鎖された。
「これから、忙しくなりそうね……」
艦長の言葉を聞いた者は誰も居ない……