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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

私の元に悪魔がやってきましたので報告となります。

作者: 江口サイト

おはようございます。

いえ、こんばんは、でしょうか?

先入観なく、軽く読んでいただけると幸いです。

あ、この物語はフィクションです。

「ひょんなことから、私は悪魔に取り付かれてしまいました。


悪魔は黒いもやがかかったようで、姿は角度によって変わる印象です。

言葉はどすの利いた、これぞ悪魔!という声で伝わります。

ただ、耳から聞こえている気がしませんでした。


「ぐへへ!俺様は悪魔だ!貴様の願いを叶える替わりに、貴様の命をいただく!」

「願い、ですか。特にないですね。」

「人間とは強欲なもの!なんか、こう、あるだろう!願いの一つや二つくらい!」

「あー、世界平和とか?」

「世界が平和になったら商売あがったりだよ!悪魔なめてんのか?」

「すみません。本当にお願い事が無いのです。」

「仕方ない。しばらく貴様に取り付いてやろう!」

「リンゴ食べます?」

「いらんわ!」


常に怒っているような口調ではありますが、私の周りの嘘吐き共と違い、明確に意思を伝える分、解りやすくて助かりました。

それに、話せばわかる方の様で、私の荒んだ心にオアシスができたようでした。

まあ、悪魔にそのことを話すつもりはありませんが。


「なあ、本当に願い事は無いのか?」

「はい。あ、すみません、そこのお醤油を取ってもらってもよろしいでしょうか?」

「悪魔は契約をした数によってランクが上がるんだ。貴様との契約は俺にとって小さなステップアップなんだ。だから何としても願いを聞かなきゃいけねぇんだ。…ショウユってこれか?ほらよ。」

「ありがとうございます。悪魔にはランクがあるんですね。私たち人間にもランクがあるんですよー。」

「そうなのか?ランクが上がるとどうなるんだ?使役できる下っ端の数が増えるのか?」

「あー、そうですね。そんな感じです。でもランクが上がるとノルマも責任も上がるので、辛いだけですね。」

「そんなの、使役する下っ端に任せればいいじゃないか!下っ端を使ってこそ上に立つものだろう?」


耳が痛い。

最近私も仕事は一人でするものではないと言われてました。

でも、振り分けや成果などを考えると自分でやった方が早いというか…。

悩みどころでした。


「下っ端の使い方が分かりません。あ、これ食卓まで運んでくれますか?」

「下っ端は替えが利く。使いつぶしたって問題ない。遅かったりへまをしたら叱咤すればいいんじゃないか?…この皿は真ん中に置いたぞ?」

「それが、私の更に上から下っ端の環境には気を配る様に言われているのです。あ、ありがとうございます。」

「なんだそりゃ。人間は馬鹿だなー。俺なら使えないやつは片っ端から首を切って回るけどな。」

「首を切るにしても正当な理由が必要ですし手続きとかありまして、解雇手続きとか社会保障とか。上手く力を引き出して使い続けることが必要なんです。」

「使えない、は正当な理由だろう?面倒なことになってるじゃねぇか。よし、俺がそいつらの首をはねてやろう!」

「あ、それは大丈夫です。食事の用意ができましたので、食べましょう。」

「はねておいた方がいいんじゃねぇか?…俺の分もあるのか。」

「いえ、首をはねても次の使えない方が来るだけなので。」

「なるほど、意味がないってことか。…うめぇなこれ。」


会話をして、食事をして、それがこんなに充実することだとは思いませんでした。

あろうことか私は悪魔に助けてもらっていたのですね。


「おはようございます。私はこれから会社に行きます。」

「おう。憑いてくぜ!」

「やはりそうですか。私以外の人から悪魔さんは見えない感じでしょうか?」

「ん?見えると思うが?」

「あ、見えるんですね…。会社では関係者以外立ち入り禁止になっているので、悪魔さんは入れないかもしれません。」

「大丈夫だ!門番なんか蹴散らしてやる!」

「いえいえ、暴力は目立ってしまうので、やめましょう。」

「目立ってこそだろう?そうすれば俺が偉大だと広められる!」

「…あっちに何が見えます?」

「…教会か。」

「はい、あと、あっちにもありますね。」

「チッ、それで俺を脅しているつもりか?」

「いえ、面倒事は避けたほうが仕事もスムーズに行くかなと。」

「一理ある。わかった、暴力はやめよう。ただ、俺の認識を阻害させてもらう。」

「阻害、ですか。」

「俺に関しては何も検知できなくなる。」


私が改札を通ると、悪魔さんは後ろから憑いてきました。

改札は人間ではないので容赦なく悪魔を止めるようです。

そうですよね。止められますよね。

阻害しているのは認識だけで、物理的には存在している感じですし。

認識阻害によって悪魔の存在は認識されず、駅員さんが機械を確認して終わりだったけど、ちょっと笑っちゃった。

笑うのって久しぶりだなぁ。


「ここが会社か。人間が何人かいるんだな。こいつらがお前の使役できる下っ端か?」

「ええ、まあ。ただ、人間である以上、手出しはできません。仕事をお願いする感じになります。」

「同族だから同ランクと考えるわけか。人間ってのは面倒だな。弱い者は蹴散らすに限るぜ。」

「そしたら、私が先ず蹴散らされるかもしれませんね。」

「それじゃあ困るんだよ!だから俺が邪魔になる人間を蹴散らしてやろう。」

「暴力で解決できないことなんです。私も彼らと同じ人間なのですから。」

「そうか。ならそれでいいけどよ。暴力で解決できることがあることも覚えておけよ。」


一理あります。

暴力で解決できることは確かにあるのです。

しかし、暴力を振るうとこちらが不利になります。

だから…。

あれ?

不利になるって、なんだろう。

暴力によって警察に捕まって、前科がついて就職や生活、世間の目に悪影響を及ぼす、ですよね?

私はこれ以上に失うものはないと思います。

職業や立場の件はこれ以上出世しないだろうし、生活に関しては人間何とでもなります。

生まれつき特に見た目がいいわけでもないので、世間からの目はどう変化しても気になりません。


「おい、お前は今から何をするんだ?」

「仕事ですね。」

「そうじゃない。仕事にもいろいろあるだろう?」

「ああ、書類の整理と先方への提出、勤怠管理もありますが、部下へのケアと…」

「要するに、いろいろあるってことか。面倒だな!やっぱり会社を吹き飛ばしてやろうか?」


私はその提案に返事をすることも反論することもできませんでした。

私が了承しないことで契約や発動もしないらしいですが、複雑な私の想いを知ってか、悪魔はそれ以上何も言いませんでした。

世間的には悪いとされる悪魔ですが、私にとっては救いとなり、話を聞いてくれるいい存在でした。


「お?下っ端共が何かし始めたぞ?」

「ええ、昼食をとるようですね。」

「食事か、お前が作っていたあの茶色い焦げ焦げを食うんだな?」

「うう、焦げてませんよ。ちょっと火を通しすぎただけです。」

「あっちは何を食っているんだ?」

「あれは肉と野菜を炒めた物ですね。」

「俺にはないのか?」


私は用意したお弁当を二つ開けました。

片方は私に。もう片方は悪魔に。

会社で食事をするのに、二人以上いることが久しぶりでした。

悪魔を一人としてカウントするのが正しいのかは分かりません。

ただ、私にとっては確実にもう一人としてカウントできる存在でした。


「長かったな。暇で暇で、消滅しそうだったぞ。」

「暇だと消滅するんですか?」

「悪魔には死の概念がないんだよ。だから『死にそう』なんて表現しないんだよ。」

「そうですか。私は忙しくて消滅しそうでした。」

「お前は人間だから死にそうでしたでいいんじゃないか?」

「そうですね。でも死んだら悪魔さんが困るんですよね?」

「その前に願いを言えよ。そしたら叶えてやるさ。」


暗黙の了解でもあるのでしょうか。

悪魔は私が『生きたい』と願うことを考えもしない様子でした。

私も『生きたい』という考えなんて出てきません。

ただ、悪魔の『叶えてやる』という言葉には心が震えるような気がしました。

私は変わりつつあります。

このままでも良いと思っていた時期から、悪魔との生活によって何かを変えたいと思ってしまったのですね。



「あの、悪魔さん。」

「あ?どうした?」

「私は願いを持っていませんでした。でも、あなたと共に過ごすことで、これではいけないことを知りました。」

「おお、ついに願いを持つのか!」

「はい。ただ、私の話を聞いてほしいのです。よろしいでしょうか?」

「もちろんいいぞ!話ならいくらでも聞いてやるさ!」

「私の願いは、ビルの破壊と、そのビルで働く元上司を殺すことです。」

「復讐ってやつか?」

「はい。元上司の方は社内不倫をしていました。そして仕事を放棄して部下である私にすべてやらせていたのです。」

「そいつは嫌な奴だな!やりがいのありそうな復讐だぜ!」

「元上司は16:00くらいには帰宅します。しかし、私は23:00まで残業を強いられました。時には元上司のご自宅へ、印鑑を頂戴するためだけに頭を下げたこともあります。」

「なるほどな!インカンってのが分からんが、よほど緊急だったんだな。それを対応しなかったと。」

「ええ、更に元上司は、私が達成した業務実績を丸ごと自分のものとし、本社へと出向、昇格しました。」

「そうか。まあ、悪魔の世界では良くあることだな。」

「やはり、悪魔の世界になると、部下の手柄を我が物とすることは普通のことなのでしょうか?」

「報酬次第になるんじゃないか?例えば、上に立つ奴の名前を出すことで自分にいいことがあれば、それを報酬として身を粉にして働くのも悪くはないよな?」

「給料も拘束時間も厳しいけど、肩書として引く手数多の大企業勤め、みたいな話でしょうか?」

「うーん。まあ、そうなんだろうな。悪魔の世界に会社は無いからな。」

「それで、その元上司は当時不倫していた女性を振ったんです。結婚を匂わせておきながら。」

「ほほう。で、お前はその女を好いていたと。」

「いえ、特に。」

「違うのかよ!」

「その女性は自殺してしまいました。」

「自分で自分を殺すのか。悪魔の俺でも愚かだと思うよ。」

「ええ、しかし、当時の私は仕事が忙しく、気づいてあげられなかったのです。そして、それを元上司は私のせいだと罵りました。」

「ん?どうしてお前に関係があるんだ?」

「私が部下の管理を怠ったとされたのです。いつも元上司と一緒で、特に話したことすらないのに。」

「接点がないのにお前のせいにされたのか!なんて悪い奴なんだ!」

「そう、悪い奴だったんですよ。そんな奴は存在しない方がいいと思うのです。」

「ああ!死んだ方がいいな!今こそ復讐の時だ!」

「はい!ただ、本当にこれでいいのかを悩んでいるのです。復讐しても何も残らないですし。」

「残らないのは当然だろう?跡形すら残さずに復讐をしてやろう!」


「復讐をすることで、私の心は晴れるのでしょうか?」

「晴れないよ。」

「え、晴れないのですか?」

「ああ、お前が長く苦しんだ日々が元に戻るわけではないからな。それに、相手は一瞬で死ぬんだ。お前は元上司の苦痛にゆがむ顔を見ることすらない。何もなくなるんだ。元上司も、建物もな。」

「そうですか…。晴れないのですか。復讐をすることは悪いことですものね。私の想いが間違っていることは分かっています。」

「分かっていないと思うんだが。いいか?復讐が悪いと決めつけているのは、復讐を恐れた側の意見だ。特に復讐が悪いのではなく、復讐に関してのペナルティが大きいだけなんだ。特に人間の場合は犯罪歴とかだっけ?それが付くから生きづらくなるんだろ?そうなるくらいなら涙をこらえて生きることが美しいとか言いやがる。説明で口にしても虫唾が走るぜ!復讐は正当な行動だ!お前はやられたんだろ?じゃあ、やって良いんだよ!もしかして、復讐を恐れた側の意見を守るのかよ。じゃあ、元上司の味方になるってことだよな?」

「それは嫌です!」

「そうだよな!じゃあ、復讐してやろうぜ!」


悪魔は報酬のため、私の魂をもらうために鼓舞してくれていることは分かっています。

しかし、私はそれが欲しかった。

だから、私は悪魔を呼んだのかもしれません。

そして、悪魔は嘘をつきませんでした。

復讐をしても気持ちは晴れない。

私の胸に深く刺さる言葉でした。

でも、それを言ってくれたからこそ、私は…悪魔に魂を渡してもいいと思えたのかもしれません。


私は、私は、私は復讐をしたい。

元上司を「殺してやりたい。」

「ああ、なら、悪魔である俺と契約してくれ。魂と引き換えにお前の願いを叶えてやるぜ!」


私は、契約書に血判をし、願いを元上司の殺害と本社ビルの破壊としました。

悪魔は満面の笑みでそれを受け取りました。

宙に浮かんだ契約書は2つに分かれ、片方は悪魔が、もう片方は私がもらいました。

そして、契約書の控えは私の右手に巻き付いたのです。


「これで契約は完了だ。上手くやれよ。」


本社ビル前に10:00頃、私は元上司の出社を待ちました。

のこのこと到着した元上司を見届け、会社に乗り込みます。

私は元上司の代わりに収まった役職のため、本社にはパスを持っています。

潜入は当然簡単でした。


先ず、元上司の部屋に行きました。

扉を開けると、女性を膝の上に乗せた元上司がいました。

何かごちゃごちゃと話していましたが、どうでもよかったので、覚えておりません。


元上司の首に右手を伸ばし、見えない手で元上司を掴み上げました。

両足をバタバタと羽ばたかせ、見えない手を両手で掴む元上司は滑稽でした。

一緒にいた女性は部屋の隅で震えていたので、優しく声を掛けました。

「これからこのビルを破壊しますので、避難をしてください。」

女性は小さく頷き、ゆっくりと部屋を出て行きました。

おそらく、女性は他の社員に声掛けをするでしょう。

特に他社の業務委託業者に迷惑をかけるわけにはいきませんし。

あ、これは復讐でしたね。もう、どうでもいいかもしれません。

苦しそうに暴れている上司を一度降ろし、声をかけました。

「おはようございます。今日は要件がありまして、急なお伺い申し訳ありません。」

「げほっげほっ、お前…なんだ今のは!こ、殺す気か!」

「はい。私はあなたを殺すために、復讐のために来ました。なぜ復讐されるかはご理解いただけておりますでしょうか?」

「まて、お、俺が悪かった!お前の女を取ったから怒ってるんだよな?」

「いえ、自殺された女性に想いはありませんでした。話したこともないですし。」

「じゃあ、あれだ!お前の、給料を下げたことが悪かったんだな!金ならやる!」

「いえ、お金の話ではありません。…給料を下げていたのですか?気づきませんでした。気づく余裕もありませんでした。」

「悪かった!この通りだ!とにかく!悪かった!」

「私との会話が成り立っておりませんね。それに、"悪かった"って、過去形にされていることも良くないです。私のされたことは、あなたにとって頭にも残らない程度のことだったんですね。残念です。」


私は悪魔の言葉を思い出しました。

『晴れないよ。相手は一瞬で死ぬんだ。お前は元上司の苦痛にゆがむ顔を見ることすらない。』

悪魔が私の代わりにこれを行っていたとしたら、本当に私の気持ちは晴れなかったかもしれません。

これも暗黙の了解というやつでしょうか?

私に復讐をこの手で行える機会をくれたことに感謝します。


ありがとうございます。


そう考えた後、私は元上司の右腕を、見えない右手で掴みました。

上司は大声で叫びながら宙を舞います。

まるで右腕を掴まれて振り回されるおもちゃの様。

上司の右腕は捻りまわされ、少し伸びたように見えます。

腕から骨が飛び出し、皮を切り裂いたため、途中から腕だけが宙を舞っておりました。

元上司は元右腕の血が流れる場所を抑え、命乞いをしました。


もういいじゃないですか。

腕はなくなったし、ねじり切ってしまったので修復は不可能でしょう。

不倫していた女性は自ら死を選びました。

あなたは自分で死ぬことすらできないんでしょうね。

自分の道は自分で決める。

その代わり、道中で行った行動によって反映される周りの行動はすべてあなたのもの。

ちゃんと受け入れてください。

私の復讐を含めてね。


今度は元上司の左腕を掴みます。

元上司は悲痛の叫びをあげ、喉を嗄らし、よだれや鼻水を拭くことすらできません。

もう一度宙を舞う上司を見て、おそらく私は笑顔だったのでしょうね。

壁にぶつかった衝撃からか、足が変な方向に曲がってしまっていたようでした。

左腕もちぎれてしまい、仕方がないので、壊れた足を掴みました。

ちょっとだけ、変な方向に曲がっていることが気に入らなかったので、元の方向に戻そうとしたのです。

ですが、益々違う方向に曲がってしまったので、元上司は口を開けて息を大きく漏らしました。

もう、声が出ないようですね。


結局、足は元に戻らず、いらないだろうから千切ることにしました。

しかし、意外と引っ張っても引っ張ってもちぎれませんでした。

人間の皮って、結構頑丈なのですね。

ゴムのように足が伸び、私より低身長の元上司も身長がおおよそ2m50cmくらいになりました。

驚きです!

まあ、立てないと思いますが。


苦痛にゆがむ表情。

悪魔はそう言ってましたが、これが苦痛にゆがむ表情なのですね。

なんて汚らしい表情なのでしょうか。

私はこの汚い元上司の下にいたのです。

もっと早く復讐をするべきだったかもしれません。

イライラした瞬間に発散できれば、元上司の下にいなかった未来もあったのでしょうか。

脂がのった顔面。皺の目立つ目じり。潰れてしまった鼻。そして苦痛にゆがむ表情。

私の心の中に変化がありました。

意外なことに、すっきりとしたのです。

気持ちは晴れないと言われていましたが、悪魔は嘘つきですね。

ですが、それは私にとっては必要な嘘だったんだと思います。

やってよかった。

復讐はやるべきだったんだと。


私は、元上司の上に手をかざし、深呼吸をしました。

泣き叫んでいる元上司を無視して、私は見えない右手を下に強く降ろしました。

元上司は最後まで汚い存在でした。

一緒にいた女性に見せなくて良かった。

やるべきことの一つを行ったので、私は元上司の部屋を出ました。


朝早いわけでもないので、普通に社員が残っておりました。

返り血で汚れた私を見て悲鳴を上げる方もおりましたが、一応声をかけましょう。

「すみません。このビルを破壊する予定になっておりますので、避難をお願いいたします。」

バタバタと足音を立てて社員の方は外に避難します。

声はかけましたので、あとは自己責任ということで。

私は右手を上にかざすと、見えない手を使ってビルの破壊を行いました。

3時間ほどかかりましたが、ようやく瓦礫の山にすることができました。

元上司の死体は発見されるでしょうか?

まあ、見つかっても見つからなくてもどちらでもいいです。


「悪魔さん。私の復讐は終わりました。」

「おう。やったな。見事にバラバラだ。」

「はい。もう思い残すことはありません。ありがとうございました。」

「礼を言われたのは初めてかもしれないな。まあ、自分の手でやったんだ。すっきりしたろ?」

「やはり、悪魔さんの配慮でしたか。そちらもありがとうございました。おかげで…」

「硬いしきたりみたいなのはいいんだよ。礼を言われても意味ないって。それより、お前の魂をいただく。約束だからな。」

「分かりました。お願いします。」

「お前、泣いてんのか?死ぬのが怖いのか?」

「いえ、これは…。なんでしょうね?今となってはどうでもいい涙です。お気になさらずに。」


悪魔は私の胸に手を当て、その手をズブリと体内に差し込みました。

不思議と痛みはなく、成すがままでした。

まだ動いている心臓を抜き出し、それを箱に詰めます。

そして、私はその場に倒れこみました。

私が覚えているのはここまでです。」


「長いよ。『どこまで覚えているんだ』に対して返す内容じゃないよ。はっはっは!」

「すみません、悪魔さん。昔から仕事ができないと言われていましたが、そういうところなんでしょうね。」

「それを言っていた奴は誰だ?」

「私が殺した元上司です。」

「じゃあ、気にすんな。そいつはもういない。」

「そうですね。しかし、私をこれからどうするつもりなのでしょうか?」

「ああ、復讐しているところを見ていたんだが、笑ってただろ?素質あるなと思ってよ。」

「お恥ずかしい。ですが、素質とは?」

「お前、俺の部下にならないか?報酬はないけどな!」

「いいですよ。営業の仕事もしたことがありますので、大丈夫だと思います。」


こうして私は悪魔になりました。

時には復讐のため、時には一時の幸福のため、様々な願いを叶えては魂を頂きます。

もし、復讐をしたいのでしたら、経験上最適な復讐プランをご用意いたします。

是非私をお呼びいただければと思います。

私の名前は…、あ、すみません。悪魔は名前を明かせないのです。

お手数ですが、私が偶々来ることをお待ちいただけますでしょうか?

必ず、お伺いいたしますので。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

ご読破ありがとうございました。

ご評価いただけますと幸いです。

ご意見いただけるとより幸いです。

ご感想を頂いた日には感謝申し上げます。

たぶん。

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