自殺探偵、現る。
2010年10月12日火曜日
沢山の高校生が私立湊川高校へと足を運ぶ。
だがいつもの高校とは違うかった。
パトカーが3台、そして特別棟の周りを生徒や教師が囲んでいた。
「みんな教室に戻りなさい!」と声をかける教師もいた。
「開けて!開けて!私の彼氏なの!と大声を出しながら人の中を通る1人の女子生徒がいた。
「ダメだ!入ってはいけない!」沢山の警察に体を抑えられるが彼女は泣きながら膝をつき下を向き泣き崩れる。
「君は?」
「私は田上由奈です。光君と付き合ってました。」
「そうか…」
田上の涙は止まらない。
その後生徒達は1度教室に戻るという指示を出され、教室へと帰る。
教室では生徒たちの会話が止まらなかった。
その日は集中していない生徒相手に教師は授業を行い、警察達は6限の終わりに警察署へと戻った。
田上は立ち入り禁止の張り紙を無視し特別棟の屋上へと向かう。
屋上には1人の男子生徒がいた。
「あなたは?」
「名前を聞くなら先に言うというのが当たり前ですけどあなたの名前なら朝知りました。私の名前は櫻井雅也です。」
「あなたはここになんの用?」
「ここで自殺したらどんな気分なのかなと」
「光君をからかいに来たのですか?」
「いいえ、そういう意味では。今朝死体となって見つかった竹下光さんは本当に死にたかったのかと思っただけです。」
「え?そんなの分からないですよ…」
「あなたは付き合っていたんですよね?彼が死にたいと言っていたことは?」
「いいえ…彼は自殺をしたいということを一言も言っていなかったし私には自殺とは思えません…」
「私も同じことを思いました。自殺を望んだ人間が果たして3階建ての建物の屋上から落ちるのでしょうか。確かに3階建ての建物から落ちれば死ぬ又は致命傷をおうことが出来るでしょう。1号棟は6階建てです。そちらから落ちた方が確定でしょう。」
「つまり何が言いたいの?」
「本当に自殺なのでしょうか?」
「本当にって言われても…私には分からないし…」
「竹下さんの靴は屋上のここに置いてありました。靴を脱ぐ必要があったとは思えません。フェンスを乗り越えるためだけに靴を脱いだと考えるのは早いでしょう。他殺ということを考えれば、彼は靴を履く必要が無い場所で殺されそして落とされたと考えるのが普通でしょう。ですが、もし先に殺されていたら警察が真っ先に気づくはずです。」
櫻井はフェンスをに手を当てながら話を続ける。
「フェンスは大して高くはありません。人を落とすぐらい簡単でしょう。」
「ねぇ、もし他殺だった場合犯人って分かるの?」
「警察がどう動くかにもよりますが自殺だと思われているのであれば何も思わないでしょう。」
「それじゃもし他殺だったとしたら光君を殺した人間は無罪のまま生きていくということですか?」
「えぇ」
「私、犯人を探したいです。もし自殺だったとしても真実を知りたいんです。」
「誤解しないでください。僕は別に探偵でもなんでもありません。ただ自殺をしたい人間なだけです」
「え?」
「私、自殺をやりまくてたまらない人間なんです。」
櫻井は腕に巻かれた包帯を外すと数多くの切り傷があった。
「そんな僕もこんな死に方の彼を放って置く訳には行きません。素人ですが、力になれるならできる限りの事はやりましょう。」
「ありがとうございます!」
田上は深く頭を下げた。
「ではまず何をすれば?」
田上は尋ねる。
「私はこの現場について調べます。田上さんは第1発見者と当時の状況について聞き込みを頼みます。」
「分かりました!」
「明日同じ時間にこの場所で集合でお願いします。得られる情報は少ないと思いますが共有しましょう。」
2人は屋上から帰り家へと帰った。
次の日、2人は同じ場所で話し合った。
田上が話し出す。
「まず私から。第1発見者は管理人さんの山本さん。8時20分頃朝から掃除をしていたら見つけたっていう話。状況としては彼が頭から血を流して倒れていたそうです。もちろん靴は脱いでいたそうです。」
「なるほど。明日は竹下さんを恨んでいた人間がいるかどうかを調べてください。」
そして2人はまた帰宅する。
田上はその夜友達の後藤奈美と通話をしていた。
「えー?竹下くんを恨んでいた人?そんな話聞いたことないけどなー。けど由奈モテるから竹下くんは良く思われてないかも。」
「いやそんなにモテないし。てかさ、私が頑張って聞きこみ調査したって言うのに櫻井さんは何も教えてくれないし本当に犯人がわかるのか疑ってる自分がいるわ〜」
「仕方ないよ。自殺願望の男なんておかしいでしょ!絶対口だけよ」
盛り上がる後藤に比べ田上は本当に櫻井を信じていいのかという疑問を抱いていた。
次の日、特別棟の3階にある図書委員の仕事で田上は図書室に行くと櫻井が山ずみにされた本を読んでいた。
同じ図書委員の早川桜はやかわさくらと田上は話す。
「ねぇねぇ。あそこで山ほどの本読んでる人ずっといるの?」
「え?知り合い?図書室開けた時からずっといるよ。」
「違うよ違うよ。それにしても、光君が来ないなんて寂しいね…」
「まぁそりゃあねぇ…」
竹下は図書委員であり当番では無い日も毎日図書室に行き、田上に会いに行っていたのだ。
「竹下くん火曜に当番だったよね?」
「うんそうだよ。火曜日当番で朝から図書室にいたはず。」
「んじゃ屋上に上がって落ちたのか…」
「まだ光君が自殺だって決めるのは早いよ…」
「ごめんごめん。嫌なこと言っちゃったね。」
田上は仕事を終え自分の教室に戻る。
放課後、2人はまた集合する。
田上は尋ねる。
「本当に調査してますか?」
「えぇ、もう謎は解けましたよ。」
「え?分かったんですか?」
「はい。順を追って説明しましょう。まず、事件当日竹下君は図書室にいました。そして竹下君は図書室で殺されたのです。」
「え?けど光君は落ちてましたよ?」
「その通り。あの日特別棟の図書室には竹下くんと別の誰かが居たのです。そして2人は何かしらの理由で揉め合いになりその後竹下くんは図書室の端で頭を打ちました。その時に流れた血を犯人はとっさに1冊の本の紙を破り拭き取ったのです。たとえその後その本の1ページ破られていたとしても誰かのイタズラにしか見えないでしょうから怪しまれないでしょう。そして血を拭き取ったあと犯人は竹下さんが自分から落ちたと思わせるために竹下さんを落としたのです。ですがそれだけでは1つ不思議に思うことがあるのです。」
「靴のことですか?」
「その通り、もし靴が図書室に残してあるともちろん警察は図書室を調べます。そのためにわざわざ屋上へと靴を運んだのです。そうすれば少なくとも図書室を疑われることは無いですからね。図書室の鍵は閉まっていたと聞いたので犯人の誰かがちゃんと鍵を閉めて竹下さんを誰か発見すれば教師もみんな見に行きます。その際に鍵を返したのでしょう。」
「君たち何しているんだ!」
突然屋上のドアが開けられ、警察の人がでてきた。
「刑事さん遅かったですね。頭に2つの傷があったからきたのですか?」
「何故それを?」
「考えたらわかることですよ。あと刑事さん図書室の本にこんな物がありました。図書室に血痕が残っているはずなので調べてください。では私はここで」
「いや待ちなさい。君の名前は?」
「私の名前は櫻井雅也です。では。」
田上も頭を下げて櫻井の後を追いかける。
「河上警部。櫻井ってあの…?」
「まさか櫻井に息子がいたとはなぁ。」
その次の日、犯人が誰かということは分かり。殺人を認めたとの事だ。動機は田上への恋心から竹下と揉め合いになったらしい。
「それにしてもなんか悲しい話しよね…」
後藤が田上に話しかける。
田上はとても複雑な顔をしていた。
「私のせいで光君は…」
後日、田上は櫻井を訪れ、礼をさせてくれと言い、事件は幕を閉じた。