加虐衝動に苦しむ男。ドMの美少女に付きまとわれる。
人気が出たら続きを書くかも?
前髪を垂らし、いかにも根暗そうな風貌しているが体は鍛え抜かれ近づきづらい異様な雰囲気を醸し出している男子高校生。その名は八津啓介。
彼は今現在、とても困惑している。
「啓介君!一緒にご飯食べませんか?」
同級生である超絶美少女のが目の前で自作のお弁当を二つ持ち昼飯を誘っているのだ。恐る恐る様子を伺うクラスメイト達の前で。
「……や」
彼の表情は青ざめていた。それは拒絶を表すもの。何故なら、この誘いを受けたら彼は彼女を……。
「今日は啓介君の好きな唐揚げがはいってますよ!だから、良いでしょ?」
京香はそんな彼の様子を気にもせずニコニコと弁当を差し出して笑い迫る。彼女はこの学校に転校してきてから毎日、彼を誘っている。理由は一目惚れらしい。恋人になりたいと周りに語っていた。当然、それを啓介にも伝えている。
有栖院京香は有栖院グループのお嬢様だ。家の都合でこの高校に転校してきた。性格は誰にも分け隔たなく接する聖人。成績は学年トップ。運動センス抜群。何より、アイドルよりも整った顔立ち。家柄も中身も何もかもが、まさに非の打ち所がない超絶美少女だった。
そして、こちらに好意を抱いてるその完璧美少女との昼食。それはあまりにも魅力的。誰もが見惚れるだろう京香からあーんなどされたら並の男子高校生なら天国に昇天してしまうほどの至福。それを全面に受ける彼はクラスの男子全員に嫉妬されるほどのラッキーボーイだろう。
「……やめ」
だが、彼は違った。
「……やめてくれ、……もうやめてくれぇえええええええ!」
啓介は京香の弁当を持つ手を振り払いその場を脱兎の如く逃げ出した。あまりにも突発的な行動。
原因は辛かったから。限界だったから。京香の献身に溺れてしまうから。彼女を好きになってしまうから。
だから、逃げた。なぜ?それは彼は親しい人ほど壊したくなる性癖があるからだ。いや、性癖ではないか。むしろ呪いといって良いだろう。だって、彼はこれに苦しんでいるのだから。
”あぁ、この女の首を締めたらどんな顔をするのだろうか。”
さっき、彼は自然とそう考えてしまった。理性を働かせてその場から逃げなければすぐさま彼女の首を顔からチアノーゼが出るまで絞めていただろう。その様子で楽しむために。そして、それが異常だと啓介は理解してる。
たまらなくそれが嫌だった。暴力を振るい悦に浸ってしまう自分が。
加虐衝動。忌むべきそれは彼の本能に刻まれている。
────
俺。八津啓介はとある老人曰く、心の中に鬼が宿っているらしい。
確かにそうだ。俺は自分の心が制御できない時がある。もう一人の凶悪な自分。いや、加虐衝動というべきか。それが表に出てしまうことがあった。
最初にそれを感じた時は、3歳くらいの頃、父が誕生日プレゼントの時に熊のぬいぐるみを買ってくれた数日後の事だ。
俺はそのぬいぐるみが大好きだった。もらった当初は一緒に寝るのは当たり前。どこへ行くにも手放せないほど好きだった。
だから、それが壊れる様が見たくなってしまった。
無邪気に、本能に赴くままに俺はぬいぐるみを力一杯破いた。バラバラにした。
その後に残ったのは悲しさと喪失感。何故こんなことをしたのだろうか。好きだった熊のぬいぐるみはワタを撒き散らし無残な姿になった。
こうなってしまう事が予想できていたはずなのに自分を止める事が出来なかった。楽しかったからだ。バラして壊れていく様を見て心の底から楽しかった。
俺は自身の矛盾した行いでギャンギャンと泣いた。自分の二面性が少し怖くなった。それが始まり。
幼かった俺はそれから数回、同じ事を繰り返した。そしてうっすらと自覚した。俺は異常だと。愛情を向けたものを壊してしまう。それを見て、両親が動物を買わなかったのは幸いだろう。問題は俺の凶行を子供のよくある手加減できてないお遊びくらいにしか思ってなかった事だろうか。
次にはっきりと俺は他の人と相容れない異物だと自覚したのは5歳の頃、家の繋がりで幼馴染の女の子と遊んだ時だ。
確か、『きょうかちゃん』って名前だった気がする。その子は天使のように可憐で綺麗だった。
両親達が仕事の関係で仲が良いらしく、その縁で一緒に遊ぶ機会が多かった。
俺は自然ときょうかちゃんが好きになった。あまり思い出せないが、将来、結婚する!とかテンプレみたいな事を言っていた気がする。
あの時はあの子が好きで好きでたまらなかった。
だから、壊したくなった。
だから、彼女の首を絞めてしまった。
だから、きょうかちゃんの苦しむ顔見たかった。
『あがっ。うぇぐ』
俺に首を絞められもがき苦しむきょうかちゃんを見て最初のうちは楽しんでいたが徐々に理性が本能を追い出し、事の重大性に気がついた。
俺は何をしているんだ?ナニヲシテシマッタノダ?
俺はすぐさま手を離しきょうかちゃんに謝ってその場から逃げた。
まただ。また俺は大事なものを壊そうとした。今度は人だ。人は壊したら、死んだら生き返らない。しかも大好きな女の子を壊そうとした。
どうやら、俺は好意を持ったら壊さないと気がすまないらしい。
……嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ!本当はそんな事がしたくないのに!俺は大事なものを壊したくない!
でも、俺は自分を止める事ができる気がしなかった。だって、あの細い首を絞めた時のきょうかちゃんの顔が俺の手で息のできない苦しさに歪む様が見てて、気持ち良かったから。快感と言って良い。あの気持ち良さは今なら射精するくらい良かった。
それが怖かった。怖い怖いこわい。自分の中身は人間じゃない。と思った。怪物だ。俺は化け物なんだ。
それを自覚してから、仲の良い両親と2歳下の妹と距離を置いた。必要最低限しか話さなくなった。理由はわかるだろう?好きにならないためだ。壊したくなってしまうから。
それから、きょうかちゃんとも会わないようにした。だって、あんな事をしたんだ。合わせる顔がない。だが、あの事を気にせず、きょうかちゃんは俺を遊びに誘いにきてたようだが……。だけど、無理だ。俺はきょうかちゃんを避けた。避け続けた。もう、今では当時の事をあまり思い出せない。いや、好きだった彼女の綺麗な顔すら思い出したくない。また汚したくなってしまうから。
俺が成長するにつれて加虐衝動が激しく増した。いくら、ぬいぐるみをバラバラにしても気休めにもならない。こうなると、いつ爆発するかわからなかった。もう家族の側は危険だ。限界だったのだ。
それについて、思い詰めた小学六年生の頃、一人暮らしについて考えた。そばに人がいなければ良い。それで間違いが起きないはずだ。提案した時のお母さんの悲しい顔が印象的だった。久しぶりに面を合わせて喋る言葉が親元を離れたいなら誰でも悲しむだろう?育て方を間違えたのか。私がわるかったのか。一体何がいけないのか考えてしまうはずだ。
俺はそれを見て苦しんだ。本能の方は喜んでいたが……。とても申し訳ない気持ちになったから理由を母に話す事にした。
俺の精神年齢は加虐衝動に苦しんだり悩んだりしてたためか、歳の割に大人だった。だから、理路整然に自分の状況を説明する事が出来た。
そしたら、母に抱きしめられた。我慢したんだね。偉いね。と泣きながら言われた。こんなにも愛されている。嬉しい。俺は泣いた。加虐という劣情を催しながら……。
『そうだ!啓介!カンフーをしましょう!』
母は俺の話を聞いて精神を鍛え力の使い方を学べばそれをコントロールできるようになるかもしれないと思ったらしい。カンフー青春映画を見た直前だったからそれの影響もあるだろう。俺の母は天然だった。
そうして、俺の一人暮らしとなぜか空手教室にいく事が決まった。カンフー教室は近場になかったからだ。
幸い、一人暮らしは両親の稼ぎも良く,すんなりと住む場所が決まり事がうまく運んだが、空手教室の方は難航した。どうやら、俺は武術の天才らしい。人を壊すことにかけては天性の持ち主で同年代はおろか、年上の高校生まで試合では圧倒できた。だが、やり過ぎた。
壊し過ぎてしまいそうになるのだ。何人か骨折させそうになり、実際に肋を折った事もあった。いや、やろうと思えばいくらでも一方的に人を痛ぶり、バラす事が出来ただろう。
俺は人の弱点。個人個人の脆い場所が直感的にわかる。
この人は顎を殴れば良い。この人は鎖骨が細いから簡単に折れる。この人は鼻を潰せばすぐ気絶するなど身体的な弱点はもちろんの事、精神的な弱点すらわかった。
この人は蜂を見たら泡を吹いて倒れると思ったら実際に倒れたし、狭いところ苦手だと思ったら本当に苦手だった。高所恐怖症。異性が苦手。人間関係で疲れやすい。父親が怖い。姉がこわい。
全部わかる。……加虐衝動が訴えるのだ。そこを攻めて壊せと。親しくなるほどそれが顕著に分かってきた。そして、俺がそれを行えばさぞかし気持ちいいだろうと想像できてしまう。俺はそんな事したくないのにだ。
そのおかげで、空手教室をやめた。だが、加虐衝動はいくらか軽減できていたため武術を完全にやめる事が出来なかった。まぁ、俺自身強くなる事が楽しい事もあって色んな武道教室に通った。そして親しくなった人が増えたら、転々と教室を変えてった。
そして今現在、通っているのは古武術の道場だ。師範である爺さん一人。弟子が俺一人。他にも門下生がいたが、転勤とかでやめたらしい。
ここは理想だ。他に師範以外人がいないため誰とも仲良くならない。壊さなくて良い。加虐衝動に悩まされない。
師範はどうなのかって?俺はあの人にどうやっても勝てない。弱点も見えないんだ。本人曰く俺の能力を知って隠しているらしい。それに、
『おぬし、鬼が宿ってるぞ』
爺さんは俺の内なる化け物を一目で見破った。その上で俺に稽古を付けてくれる。心を制御する方法を伝授してくれる。まぁ、まだ習得はできていないが。
師範についていけば、俺は成長できるはずだ。だから、ここに長く通えている。
まぁ、武術の話はもう良いだろう。結局、それで加虐衝動はまだ治っていないし。
時が流れ、中学生2年生になった頃それはもっと激しくなった。
あの時は荒れていた。他者を攻撃したくないからモノに当たっていた。学校では我慢して、家に帰るなり衝動の思うままに暴れる。サンドバックは破け、床が砂まみれに。食器は割れ、机も壊しまくった。
幸い、親の別荘みたいな所だったから弁償にはならなかったが、定期的に見に来てた母親が驚いてたのが印象的だった。でも、『まぁまぁお年頃なのねぇ』と言って部屋にニコニコしながら散らかっていたゴミを片付けていたのは引いた。
いや、怖がれよ!息子の凶行に怖がれよ!おかしいだろこの状況!俺はヤバい奴だろ!?本当に何にも気にしていないみたいだった。『これが子育てなのねぇ』って生暖かい目で俺を見てくる始末。俺の母は天然だった。まぁ、それで助かっているからなにも文句言えない。むしろ母の態度はありがたかった。
俺を苦しませる衝動をなくすために色々探すことにした。もはや、物に当たるだけではダメだ。愛情が必要だ。親しいモノを壊すことが俺の加虐衝動を満たす。それしかなかった。一度ペットを買って、内なる欲望を満たそうとも思ったがそれだけはエスカレートしそうで危険だと思ってやめた。動物虐待だしな。理性が本当の異常者になりたくないと言ってくる。……俺は生まれた時から普通ではないのにな。
とりあえず、本やネットを駆使して性癖を満たしそうなものを探しまくった。スポーツはもちろんのこと。映画やアニメ、漫画。そしてゲームなどあらゆるモノを体験する。……その中にSM同好会なるものあったが正直、性癖で悦に感じることが苦痛。というより生身の人間は歯止めが効かなくなりそうで危険だと思ってそれだけはやめた。
その中で【ドキドキ!スクールラブ!】というゲームに出会った。
これが、俺の将来システムエンジニアやゲームクリエイターなどIT系に進むための勉強をするきっかけになったゲームだ。
【ドキドキ!スクールラブ!】はいわゆる恋愛シュミレーションゲームで女の子を攻略し恋仲になるゲームだ。それだけ聞くとありふれた普通の美少女ゲームだが、他のゲームと違う特色があった。
物語中盤から、選択肢に物騒なモノが混じってくるのだ。
『頬撫でる』『キスをする』『殴り殺す』
これが、重要な濡場の選択肢。殴り殺すってなんだよ!?主人公は今までそんなそぶりを見せなかったのに衝撃的すぎる。この後も、こんな暴力的な選択肢が増えてゆき選ぶと即バッドエンド。最終的にはそういった選択肢しか残らずクリアできなくなる代物だった。
実はこれ、伏線である。主人公は幼少の頃、交通事故で肝臓がダメになった。その時、ドナー提供を受けたのだが、その提供者は偶然にも同じ事故で脳死した迷宮入りの連続殺人犯だった。臓器には記憶が宿ると言われ、主人公は徐々にその殺人犯の思考にそまっていく。その殺人犯は恋人や親類など親しい人間を殺すことが唯一の楽しみにしていたサイコパスだった。それがあの選択肢の理由だ。ヒロインと恋仲になっていくほどその殺人犯の思考に犯されてしまう。
これを克服するのに、自分の内に潜む悪鬼と向き合う必要になる。殺人犯の家族を尋ねたり、ヒロインにそのことを吐露させたり、最後にはヒロインの肝臓を半分移植し直すということなどが必要になってくる。もちろんその試練を乗り越えばグッドエンドだ。二人は無事、結ばれる。
俺はその主人公がヒロインに暴力を振るってしまうことに苦痛を覚えるというのにすごく共感を覚えた。暴力を振るいたくないのに振るうことを考えてしまう。あれはまさに俺だった。
俺は主人公に自分を重ねヒロインに恋をするようにプレイしていく内に衝動が治ったのを感じた。限りなくゼロ。今までない快挙だ。この時は実家に戻って両親に甘えに甘えることができた。泣くほど嬉しかった。俺の心は喜という純粋な感情だけだった。その陰には何もなかった。……まぁ、翌日から加虐衝動は戻っていたが。それでも、俺の呪縛を解く第一歩に何はなった。
だが、ゲームと現実では決定的な違いがある。主人公の原因は移植された肝臓で俺は天然のサイコだったということだ。残念だ。俺は治らない。一生これと向き合わなければならない。
多分、俺は恋愛など無理だろう。相手を壊してしまう。俺の恋は画面の中だけだ。そうじゃなければならない。俺は化け物だから。
だから、このゲームにのめり込んだ。唯一、仮初めでも俺の心を癒してくるものだからだ。そして、似たようなゲームもたくさんやった。しかし、そういった物はマイナーだ。すぐ消費して枯渇してしまう。
ないなら自分で作るしかない。そう思い始めた俺はゲームに使うプログラムの勉強をし始めた。わからないことはネットやSNSで調べたり聞きまくった。
そうして、一本のゲームを作る内にネットでの知り合いや友達が増えた。画面越しの人間。それは俺にとって嬉しい誤算だった。当然、ネット越しには暴力は振るえない。言葉の暴力もあるが、それは肉体的な衝動と比べ弱いので理性で抑え込める。加虐衝動を気にしなくていい人間関係は俺に未来を感じさせた。リモートワーク。将来、俺は自宅勤務できる仕事をすればいいんだと思った。
だから、ゲーム制作以外にも使えるプログラミングや3Dモデル制作、イラスト、脚本など他人に合わなくてもできるスキルを勉強し始めた。
そして、最初に作ったゲームの出来はあまり良くなかったが、俺は満足した。初めて、自分自身を制御できたからだ。道はできた。成功体験のおかげでもう5本もゲームを作った。作る内にクオリティが上がっていき、クリエイター仲間にも好評になってきた。いくつか、DLサイトで販売してそれなりに売れた。作ったものが評価を得る。それがすごく楽しかった。
自分を制御できるようになり、人慣れのために普通の高校に入ってから充実した毎日だった。俺が自分の足でようやく立てれたような気がしたから。入学当初、少しトラブルがあったが無事対処したし、加虐衝動は限りなく薄く日常生活には支障がない。そして、人が多いところで問題なく過ごせるのが嬉しかった。あぁ、俺の人生がこれから始まるのだ。
あの転校生が俺に教室で告白するまではそう、思っていた。
────
「……ぁ」
京香は床に崩れ落ちた弁当を呆然と見ていた。
「ねぇ、京香さん。良い加減にやめたら?」
クラスメイトの仲の良い女子が京香を心配して声をかける。あの気味が悪い八津啓介に関わるのはよした方がいいと言う。彼は、高校入学当初。根暗で誰とも喋らず、協調性がない人物だった。イジメの標的になるは自然の流れだった。だが、1ヶ月くらい経ったある日。いつものようにイジメられている彼は笑っていた。その笑みは獰猛な肉食動物を連想させ、非常に怖かった。そして、翌日からイジメを行なっていた同級生は学校に来なくなった。理由はわかるだろう?あの八津啓介が何らかの方法でイジメていたやつに報復したのだと。それから、クラスメイトは誰も彼に関わることをしなかった。怖いからだ。体育の時に着替える彼の筋肉質な体と傷跡を見ればなおさらだろう。あれは眠る猛獣だ。目覚めさせてはならない。きっと裏家業の人間だ。ヤクザの息子か?本能でそう感じ取った。だからこそ、京香に忠告したいのだろう。彼に何されるかわからない。危険だと。さっきだって彼女の弁当をぶち撒けたではないか。
「……ぇ?ああ、心配してくれてありがとうございます。ちょっと、用事ができたので失礼します」
だが、京香はあまり気にしていないようだ。落ちた弁当を拾い、ニコニコと笑う。一目惚れしたと転校初日に言う彼女は伊達ではないようだ。これが恋する乙女。
「うふふ」
有栖院京香は笑みを浮かべながら教室を出て行く。その様はとても妖艶に見えた。
「ぁあ。ん。……んぅん!」
誰もいないトイレの個室の中で、京香は首筋をなぞりながら悶えていた。まるで何かを我慢していたのを解き放ったように見える。そして、淫らな色香が個室に充満する。
「はぁはぁ、やっぱりあの目。あの眼差しこそが私が求めたもの」
彼女は自分の手を振り払った時に見た彼の目に欲情した。ああ、あの瞳。あの時と同じ。
有栖院京香の本性。幼少の頃に啓介に首を絞められ目覚めさせられた被虐願望。あの手でまた首を締めて欲しい。それだけを夢見たきょうかと言う名の少女だった。そう、彼女は啓介の幼馴染。彼は京香のことはもう覚えていないが、彼女はそれを知っているし理由もある程度は知っている。
そして、京香は啓介を忘れられない。ずっと恋い焦がれているのだ。あの時から。
あの日。『きょうかちゃん』と彼に呼ばれた彼女は小さい頃の啓介に首を絞められた時、未知の感覚を味わった。苦しいはずなのに、ずっとこうして欲しい。冷静と首を絞められている私を彼の観察する瞳に見られ、下腹部が熱くなる。そして、脳に酸素がいかず、意識が朦朧とする中で首に食い込んだ彼の指が絶妙な具合で彼女にもたらした全身を貫くような快感。
気持ちいい。気が狂うほど気持ちよかった。初めての絶頂。初潮も迎えてもいない少女には刺激的すぎた。性癖を拗らせてしまうほどに。
京香はそれに囚われた。啓介に見出された被虐願望。彼に首を絞められる事が彼女にとっては最高の快楽だった。
だが、啓介は自分の元を離れてしまった。詳しい理由はわからなかったが、たぶん首を絞めた事に負い目感じているのだろう。もう会えないと彼の母親から聞いた。
私はそんなこと気にしてないのに。あの首締めが忘れられない。もっと絞めて欲しい。
でも、その願いは叶えられない。自分の父親にもあの家族に会うなと言われる。自分の娘に危害を加えたのだから当たり前だ。だが、それ以外にも理由があった。頑張って駄駄こねてたら教えてくれた八津家の秘密。鬼が宿った忌み子が生まれると言うお話。父はあまりそれに触れたくないようだったが少しだけそれを話してくれた。
八津啓介は先祖帰りの鬼。八津家の鬼達の一人だ。鬼と言っても妖怪ではなく普通の人間だが、全てにおいて他の人より秀でている。特に武術。戦では誰も鬼には勝てず戦国時代では鬼神無双と言われていた存在だ。だが、弱点があった。加虐衝動。自分の家臣や家族を面白半分で殺してしまう。歴代の鬼達は純粋にそれを楽しむ者も苦しむ者もいた。だが、最後は家族を、最愛の人を殺してしまった後悔と自責の念で自害してしまう。その中には寿命で死ぬまで生きた者は数人しかいない。しかもその人達も加虐衝動で苦しんでいた。今の八津啓介のように。
父の言い分はわかる。加虐衝動。あの時に首を絞められたのはそういう事なのだろう。確かに彼は危険な存在だ。けど、彼女はあの快感が頭の中で反芻するように思い出す。自分で絞めても苦しいだけ、他人には首に触られるだけで嫌悪感が出てしまう。あの手しかないのだ。彼しか私を満足させられない。
だから、父親の反対を押し切って啓介がいる学校に転校してきた。彼の居場所を調べたり、父親の秘密を探って脅したりと時間が掛かってしまったが無事、八津啓介と再び出会うことができた。
「あぁ、はやく啓介様と首絞めセッ○スしたいなぁ……」
彼女は夢を見る。彼と一つになる事を。
八津啓介
「・・・普通の恋愛がしたい(無理)」
主人公。加虐衝動を持つ男。彼自身は優しい性格でサディストではないが、スイッチが入ると別人のように他者を攻撃してしまう。それについて苦しんでいて最近、ゲーム制作という性癖の解消と制御方法を見つけた。頭はよく学業はトップクラス。運動は凄まじくできるが学校ではサッカーなどの団体競技は相手を怪我させてしまうのを恐れて見学している。
彼は先祖帰りの鬼と呼ばれる存在で親しい人間を殺す可能性が高い危険な存在だ。だが、幸いなことにたぐいまれな精神力でそれを押さえているのと性癖が甚振られいる様を見て悦に入るタイプなので殺害まではいかないだろう。M歓喜。
ちなみに、彼は歴代の鬼の中でも特別である。啓介はサディストの天才で彼に責められたら誰でもドMになってしまう能力を持っていた。空手教室の先輩とか、街で絡まれた不良とか軒並みマゾになった。もちろん、ヒロインも。
この世界は隠れマゾで満ちていた。かわいそう。(こなみかん
有栖院京香
「首絞めセッ○ス!!首絞めセッ○ス!!」
メインヒロイン。有栖院グループのお嬢様。打ち非どころがない完璧美少女。だが、主人公限定のドM。啓介に被虐願望を目覚めさせられなかったら普通に結婚して幸せな女の子なった不幸である意味幸運?な女の子。ちなみに八津啓介が普通の男なら彼女の許嫁になる予定だった。
彼女は啓介に首を絞められる事だけを夢見ており、他はどうでもいい。彼に首を絞めてもらうなら何でもして、父親に探偵を使って脅したのもそれが理由だ。ちなみに脅迫の内容は妻に隠れてアイドル応援。私と彼との逢い引きの協力をしないと母親にチクるぞと毎日耳元で囁かれている。さらに京香に弱みを握られた啓介による強制ドM調教が予定されている。お父さんかわいそう。
転校してきてから思い人と同じ空間にいるので毎日トイレで発情している。鞄にはいつ彼がその気になっていいように鞭や縄などのSM道具が常備されている。たぶん、クラスメイトが見たら幻滅しそう。
なんでこうなったか。残念美少女である。
〜以下、続きを書いたら登場予定のサブヒロイン(名前はまだないです)〜
師範の孫娘
「あぁ〜奥にクル〜〜っ!」
古武術教室にいる師範の孫娘。めっちゃ強い。が主人公に腹パンされて負けてしまう。その時にドMに目覚めさせられ腹パンにハマる。爺さんかわいそう。
オタクの隠れ美少女
「あぁ〜耳がしあわせ〜」
同人即売会で売っていた同人声優サークルが販売していたASMRのCDをたまたま買ってみたら凄いハマってしまった。もちろん声を当てているのは主人公。言葉責めのオンパレードで脳が犯され無事ドMになった。精神的なマゾ。たぶん、主人公に命令されたら犬プレイとか平気でできるぞ。
同人声優の美人大学生
「えぇ、ドン引き・・・」
主人公のゲーム制作で知り合った女の子。上記のASMRの録音の元凶。面白半分で録ったら売れてしまった。唯一、ドMじゃなく啓介に好意を持っている。彼のゲームを作る真摯な姿に好感を持った。啓介のゲームは人の苦悩や恋する気持ちが綿密に描かれており人によってはかなり面白く彼女もまた琴線に触れた一人だった。もしかしたら、彼女が一番主人公を理解してるかもしれない。