#0 二通の手紙
――我が戦友にして悪友のハイリー
こうしてお前に手紙をしたためるのは、イェシュカが死んだ時以来か。お前が死んだという話は聞かぬから、きっと元気に魔族共と戯れているのだと思う。麗しの騎士姫云々という夢見がちでこっ恥ずかしい噂だけは耳にしているぞ。そいつらの目は節穴だな。
ところで急な話だが、俺は死ぬ。間抜けなことに死の呪いを受けあと一月の命だ。笑え。
弱気になったわけではないが、死ぬ前に顔を見たい相手に連絡を、と言われて思い付くのがもうお前しかいなかった。ビットは死んだし、ドニーは国外から戻ってきてない。イェシュカも墓の中だ。残念ながら俺は友達が少ない。
できれば一度我が家へ来てくれ。アンデルや子供たちにも会ってほしい。お前に、子供たちの後見人を頼みたい。
来訪を期待している。
クラウシフ・シェンケル――
◆
――親愛なるハイリー
前略。
兄さんの手紙より、こちらが先に届いていることを祈っている。ハイリー、あの人からなにを言われても、聞き入れてはだめだ。ましてや、この家に来よう、見舞ってやろうなんて、絶対に考えないで。お願いだ。理由は説明できないが、あなたに危険が迫ってる。だから、兄さんからの手紙は見なかったことにして。僕のこの願いがあなたに聞き入れてもらえることを祈っている。草々。
アンデル・シェンケル――