緊張の初日
今回は音暖香の中学校生活初日を書きました。ハラハラドキドキで幕開けした中学校生活!初日はどうなるのか!?
「音暖香ぁー!起きなさ―い!」
二階の音暖香の部屋に水谷家の母の声が聞こえる。音暖香は朝が少し苦手だ。小学生の時も何度か寝坊して水萌ちゃんと咲ちゃんに待ってもらっていたことがあった。音暖香のせいで遅刻ギリギリということも何度かあった。
しかし、この日の音暖香は、すでに目が覚めていた。
(学校嫌だなぁ。中学校とか不安すぎるよぉ~。さっきまで見てた夢ではまだ小学生だったの
に……。)
そんなことを思っていると嫌でも早くに目が覚めてしまう。そんな音暖香の期待を裏切ってベッド際の壁には、中学校の制服である紺色のセーラー服に同色のスカート、エビ茶色のリボンがかかっている。
(はぁ。いやだけど行くしかないか。)
音暖香は渋々朝一番のトイレを済ませてリビングに降りて行った。するとそこにはいつもいるはずの妹の友香の姿がなかった。
「あれ?お母さん友香は?」
(もしかしてもう学校行ってる⁉そしたら私もう遅刻じゃない⁉)
「友香はもう学校行ったわよ。」
音暖香はゆっくりトイレなんてしている場合ではなかったと慌てる。
「え‼じゃあ私遅刻⁉」
「何言ってんの。あんたは中学校でしょ。中学校より小学校のほうが始まるのが早いのよ。」
「あ……。」
音暖香は自分が勘違いをしていることにようやく気がついた。
そうだ、音暖香はもう中学生だ。友香は七時半に家を出るのに比べ、音暖香は七時五十分に家を出る。普段の癖、そして中学校に行きたくないという音暖香の願望に惑わされ、朝から恥ずかしい間違いをしてしまった。
「早くご飯食べなさい。」
音暖香は朝食を済ませ、二階の自室に戻った。
そしてパジャマから制服に着替えだす。まだ着慣れていない制服を着るのに苦戦して少々の時間がかかってしまう。
学校指定のノーポイントの白い靴下を履き、スクールバックをもって玄関に行く。さすがに初日から水萌ちゃんと咲ちゃんに迷惑をかけるわけにはいかない。
(はぁ。いやだなぁ。)
音暖香は暗い顔でため息を一つこぼしながら革靴を履き、水谷家の門を出て行った。
音暖香は二人との待ち合わせ場所に歩いて向かう。
待ち合わせ場所に着くと、音暖香と同じ制服を着た水萌ちゃんと咲ちゃんが待っていた。二人は音暖香が見えると元気よく手を振って挨拶を交わした。
「おはよ!音暖香!」
「おはよう……。」
「元気ないよ音暖香。どうしたの?」
「いや、ちょっと中学校って緊張して、不安っていうか……。」
「大丈夫だよ音暖香。私たちだって初めてなんだから、みんな同じだから。ね?ほら、行こう!」
「そうだよね。」
「それにいざというときは私たちもいるじゃんか!」
「早くいこう!」
水萌ちゃんがそう言うと三人で道に広がらないよう気をつけながら登校していった。
※ ※ ※
学校に着き、校門をくぐる。
学校に近づくにつれ、先輩たちも増えてきて、知らぬうちに気を使ってしまい話す声が小さくなったりする。
「ついたね。セーラー服で登校ってなんか大人になった感じ!」
「ねえ、みなちゃん。」
「?」
不意に音暖香が口を開いた。
「私トイレ行きたいから、先に行っててもいい?」
いつもなら普通に言えることだが、中学校の制服を着てこのセリフを言うのは少し恥ずかしかった音暖香。
「なんだ、それなら早く行ってきなよ。」
「中学生になっても音暖香はぶれないね。」
「も、もぉ~!やめてよ咲!」
音暖香の顔が梅干しのように赤くなった。そして音暖香は一人校舎に早歩きで向かった。まだ我慢できないほどの尿意ではないが、音暖香はこまめにトイレに行っておくことを心掛けている。
三階に向かう途中、すでに部活の朝練などで登校していた二,三年生のいる一階、二階を階段の前だけとはいえ、通るのは少し緊張した。
『昨日入学式でトイレ我慢してた子だ』と思われているんじゃないかと気が気でなかった。『結局ぎりぎりで間に合わなかったらしいよ』なんて言われているのではないかと思って音暖香の顔はますます赤くなっていた。
そんなことがありながら、教室にスクールバッグだけ置いて、三階の一年生用トイレに着いた。先客が何人かいたが、そんなに待たずにトイレに入れた。
(いつもこのぐらいなら、昨日みたいにならなくて済んだのに……。)
心の中で音暖香はそう思った。トイレを済ませ、個室を出る。音暖香のほかに個室から出てくる人たちはみんな知らない人だ。手を洗っていると音暖香はあることを思い出す。
(そういえば、今日の朝うんこでなかったな。)
快便少女の音暖香は毎日欠かさず朝一番のトイレでおしっこと一緒にうんこもしていた。しかしよくよく考えてみると今日の朝は出ていなかった。今も便意は特になかった。
いつもなら健康な音暖香のお腹からスルッと飛び出してくる便がこの日は出ていなかった。
(まぁいいや、出ないんだったらしょうがないし。)
トイレから出るとみなちゃんと咲ちゃんが丁度階段から上がってきた。一緒に教室に向かい、いるものを引き出しに入れたり、スクールバッグを後ろのロッカーに入れたり、朝の準備をした。
八時二〇分になるとチャイムがなり朝読書が始まった。音暖香は最近恋愛小説にはまっていた。自分にもこんな素敵な出会いはないものかと乙女になっている。
一〇分間の朝読書が終わり、朝の会も難なく終わった。まだ入学して一日目とあり、本格的な授業はなく、一日中学活の授業だ。
朝の会が終わると三人で仲良く話をしていた。この三人でいるとき、音暖香は少し安心できた。
この学校は授業の間の一〇分休憩では、授業開始五分前に授業のある教室に入室し、三分前に着席して一分前に黙想といって目を閉じ、心を落ち着かせることをしてから授業に入る決まりになっている。
生徒や教員たちはこれを『五分前入室、三分前着席、一分間黙想』という。
三分前には皆着席して静かになっていた。音暖香は先ほどトイレに行ったので、この休憩ではトイレに行かなかった。
チャイムがなり、授業が始まった。
※ ※ ※
一日が無事に終わり、三人は仲良く話をしながら、教室を後にした。この日はまだ一年生は部活に入ってなかったので、一斉下校となった。
「音暖香、今日は大丈夫だった?」
「うん!今日は大丈夫だったよ。」
音暖香は朝よりも随分と明るい顔をしていた。今日一日お漏らしの危機にさらされなかった事が音暖香の不安をどこかへ吹き飛ばしてしまったのか、それとも中学校が楽しかったのか、あるいは両方か。
「ねぇ、今日帰ったら遊ぼうよ。」
「いいよ!どこで遊ぶ!」
「私の家来ていいよ!」
「じゃあ音暖香の家でけってーい!」
「うん!わかった!」
三人はそんな小学生の時とほとんど変わらない会話をしている。
「先生面白い人だったね。」
「あれなら音暖香がもしお漏らししちゃっても、大丈夫そうだね!」
「咲!そんなに大きな声で言わないでよぉ!」
「あ!ごめん音暖香。」
「技術室とか凄かったね!」
「うん!早く技術とかやってみたいなぁ。」
そんなこれからの中学校生活に希望を抱いたりしていた。
「あ、ねぇ二人とも!私、帰る前にちょっとトイレ行ってくるね!」
「あ、私も!」
「みなもー!」
そして三人は中学校生活初日を終え、仲良く歩いて帰っていった。
今回はお漏らしシーンなしでした!次回は入れようと思います。
見たいシチュエーションなどのリクエスト待ってます!