川原の剣
その剣は浅い川の中央に刺さっていた。
遥か昔、世界を支配した魔王を封印したと言われたその場所は、ちょっとした観光名所にもなっていた。
今、その剣の前に1人の男の子が立っていた。
魔法使い「私達は強い武器を買うお金もないの、だから、その剣を少しの間、借りないといけないわけ、私は今晩泊まる宿屋を手配するから勇者はその剣を抜いといて」
そう言うと杖を持った魔法使いの少女は村へと向かった。
残された少年は不安そうな表情で剣の柄を握った。
その剣は呆気なく抜けた。
途端に辺りは暗くなり、暗雲が立ち込め、禍々しい空気に覆われた。
暗雲の中から身の毛もよだつ声が響いてきた。
魔王「フハハハハ、愚かな人間よ、遂に私の封印を解いたな私」
勇者は剣を元の場所に刺した。
雲は晴れ、声は消え、静かな川原に戻った。
見間違えか?と思った勇者は、また剣を抜いた。
暗雲が立ち込め、魔王が喋り出した。
今度はさっきと違い、誰かと話しているようだ。
魔王「ちょっと、さっきの何?剣を戻すとまた封印されるシステムなわけ?そんなの聞いてた?え?言ってた?封印される時説明したの?私聞いてないよ、みんな聞いてたの?封印する時は命懸けの勝負とか言ってたのに今回は刺すだけで封印出来ちゃうの?そんなのズルいじゃん!‥ん?抜いてる?あ、本当だ!」
魔王「フハハハハ、愚かな・・・ちょっと待って、ねぇ坊や、想定外の状況におじさん混乱しちゃって、もう1回刺して抜いてくれないかなぁ、今度はちゃんとするから、ね、お願い。」
勇者は快く刺して抜いた
魔王「フハハハハ、二千年ぶりの地上だ!この魔王様が復活したからには、人間どもを恐怖で支配」
勇者は剣を刺した。
暫くあけて、また抜いた。
魔王「ちょっと、坊や、おじさんに最後まで話させてくれないかなぁ。一応、魔王復活って大事なイベントだから、少しの間聞いて・・・」
怖がる勇者
魔王「あ、怖かった?だよねぇ、おじさん怖い事言っちゃったねぇ。でも、これがおじさんの仕事なんだ、結構大変なんだよ、多方面敵に回して」
刺して抜いた。
魔王「あのさ〜、おじさんもそんなに暇じゃないの、抜くならしっかり抜いて貰わないと困るんだよね
〜」
魔王「あ、分かった、」
魔王「私の封印を解いたお前の望みを叶えてやろう。」
勇者は魔王を倒す為に旅をしており、やむを得ずこの剣を抜いた事を話した。
魔王「え?何?私が封印されてるうちに誰かが魔王になっちゃったの?なんて名前?」
勇者は自分が倒す魔王の名前を言った
魔王はまた、誰かと話してるようだった
魔王「ねぇ、あれって私が魔王してた時に旅立ちの章のボスをやらせたヤツだよね?へ〜出世したんだねぇ。え?それもみんな知ってたの?教えてよ〜」
魔王「ねぇ、坊や、おじさんと約束しないか?おじさんがその魔王をやっつけてあげる。だから、坊やはその剣を遠くに投げちゃってくれないかなぁ、」
勇者は頷いて、剣を遠くに投げた。
魔王「バカな勇者よ、私が約束など守ると思ったか!もう私が恐れる」
刺した
抜いた
魔王「早いよ!拾ってくるの早すぎ!」
勇者は剣を元の場所に刺して一息ついた。
魔法使いが戻ってきた。
魔法使い「宿屋、予約してきたよ。まだ抜いてないの?行くよ」
勇者は剣を抜き、魔法使いと宿屋に向かった。
魔王「ねぇ、どうしよう。封印を解くのがこんなに難しいとは思わなかったねぇ、何かいい方法・・・ん?解けてる?」
魔王「フハハ・・・あれ?誰もいない?え?坊やが抜いて持ってっちゃったの?ホントに!?」
魔王「ウォーーー!!ありがとー!!」
魔王「坊やのお陰で復活出来たよー!おじさん、約束は守るよ!今の魔王を、やっつけておじさんが世界征服するよ!!絶対に誰にも負けない最強の魔王になって魔王の玉座で坊やを待ってるから!坊やも強くなって絶対会いに来てよ!!ウォー!!」
魔王「うるさい!私は魔王だぞ!泣くわけがあるか!!ウォー!!」
そして、若い勇者と復活した魔王の快進撃の幕が切って落とされる