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暗黒の疾風  作者: 秋本そら
Ⅲ 誘拐依頼 「飴玉」
32/37

構成員を求めて

 ——それは、約二ヶ月半前のこと。


 その日は珍しく、首領が外に出ていた。首領は顔を見られては困るからか、仮面を着けていた。そしてその隣には、水無月環奈を装う朱里の姿が。

 その後ろに何人か、地位が高かったり古参だったりする暗黒の疾風の構成員が並んで来ていたが、仮面から垣間見える、見たものを凍らせてしまうのではないかというほど冷たい目をした首領と、美しいのに顔も目も無表情で恐ろしく感じられる朱里の姿が、裏社会の人々の目を引いた。

 とはいうものの、裏社会の人々は、そんな彼ら彼女らを恐れながら見ていたわけではない。寧ろ、見慣れたものとして見ていた。

 というのも、これはある意味、年に一度の行事のようなものなのだ。


 やがて暗黒の疾風の構成員たちは、とある場所に着く。目の前にあるのは、細い路地。

 首領は冷たい目をすっと細め、朱里は誰にも分からぬよう、小さく溜息を吐く。

 一歩、路地に踏み込むと、その足が重くなるのが朱里には分かった。

 さらに一歩。ますます足は重くなるが歩き続ける。

 一歩一歩歩く程、足は重くなり、そのうち体も重くなり始める。さらに、辺りがざわざわと騒がしくなっていく。それは朱里だけでなく首領や他の構成員も同じだ。でも、全員歩みを止めない。ひたすら、路地を歩き続ける。何故か時々、足元を見ては後ろを振り返ってはいたが。

 そのうち、だんだんと今度は体が軽くなっていく。一歩歩くごとに体が軽くなり、そして足も軽くなっていく。そんなことも、首領を始めとする暗黒の疾風の構成員たちは気にせず歩く。やはり、時々足元を見ては後ろを振り返ってはいたが。

 そして全員がその路地を歩き切った後、再び足元を、そして後ろを見る。

 ——そこには、孤児が何人かしがみ付いていた。


 その日、首領や朱里達は新たな構成員を探すべく、孤児が多く集まり暮らしている路地へと訪れていた。

 路地で暮らす孤児を選ぶ理由はいくつかあった。

 まずひとつに、子供の方が物覚えが早いため。

 何かを覚え身につけるのならば、大人になってから習うよりも子供の時から学ぶ方が良い。

 次に、孤児となり裏路地で過ごしている子は生きる為、既に盗みや窃盗といったことを身につけていることが多いため。これはもう文字通りである。

 そして、生きることに貪欲なため。

 この仕事に就けば、少なくとも餓死はしない。お金だってもらえる。たとえ死と隣り合わせになる任務でも、自分が強くなれば自分が死ぬ可能性は低くなる。そう考えると、明日の命が分からない孤児にとっては、死と隣り合わせの任務が存在するこの仕事でも就ける方がいいのである。生きることに貪欲であるからこそ、この仕事を受け入れてもらえるのだ。

 ——とはいえ、他の組織もここを狙っているという現実や寮のキャパシティの問題もあり、ここから孤児を連れていけるのは年に一度、それも、人数指定有りだ。今年の指定人数は五人。その五人を選抜するために、首領や朱里達は路地をひたすら歩いたのだ。

 歩いていれば、仕事を求め、それなりに動く気力や体力のある孤児が、暗黒の疾風の面々の足や服にしがみつく。暗黒の疾風の面々はその孤児を放置して歩く。そのうち力つき、執念も尽きた者は手を離していく。首領や朱里達は路地を歩き終わった後、話し合いをし、長くしがみついていられた順に孤児を構成員として採用する。そういう仕組みだった。

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登場人物が分からなくなった場合はこちらをご覧ください 第2部分 登場人物 物語に出てくる組織についての説明を見たい方はこちらをご覧ください 第3部分 組織紹介
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