訪れて、去って
唐突に部屋の扉が叩かれ、朱里の意識はパソコンの画面から現実に引き戻される。
「——誰?」
朱里が問うと、まだまだ幼い声が響いた。
「二階堂弘也です」
「開いてるから入って」
扉が開き、ひとりの男の子が入ってくる。
丸く金色の縁のメガネをかけた、賢そうな少年。
彼は、約二ヶ月半前からこの組織に所属し始めた下級構成員だ。そして、この任務に少なからず関わりを持った、そんな構成員であった。
「何か用?」
「いえ、原田さんを探しに来たんです。原田さんなら如月さんのところにいるって聞いたので」
その言葉を聞いた翔は、目を丸くし、慌てて椅子から飛び上がる。
「あっ! ごめんごめん。じゃ、僕はここで失礼しますね」
「うん。またね」
軽く頭を下げた翔に、朱里は軽く手を振って別れを告げる。そして、翔を探しに来た弘也に朱里は。
「——しょっちゅう翔は私の所に放浪しにくるからね、見当たらないなと思ったらここに来なよ」
「分かりました。それでは、お騒がせしました!」
弘也は可愛らしく笑って、そして翔と共にいなくなった。
ばたり、と扉が閉じられる。
朱里以外誰もいない部屋。そんな中、朱里は一人で呟いた。
「——あの子は情報班に配属されたのか。
……そういや、新入構成員が入って来たのって二ヶ月半前くらいになるのかな? だいぶ経ったなぁ」
朱里はかなり冷めている珈琲を口に含む。そしてふと瞬きをし、目が乾燥していることに気付いたため、ポケットの中から目薬を取り出してそれをぽたりと両目にさした。
「——やっぱ効くねぇ、この目薬。
……さ、やりますか」
そう呟いて、朱里はパソコンに再び向かい合う。




