崩壊
メイルズビル、五階。そこには広々とした社長室のような場所があった。
そしてその部屋にはLive's Beautyの代表、牧野伊紀がいて、堂々と椅子に座っていた。
「……さて。今、敵はどうなっているのかね?」
「敵は暗黒の疾風の構成員であることが判明いたしました。技量は向こうが上ですが、此方は数で対応しております」
伊紀の問いに答えたのは、そばに侍っていた執事らしき人物。
「……そうか。敵は暗黒の疾風——あの悪の組織だったのだな」
「その通りでございます。あのように簡単に命を奪っていくとは。何を考えているのでしょう」
「全くだ」
全く理解ができない、というかのように伊紀は首をすくめる。
「わたしたちも刃物は持っているが、あれは自衛の為。相手が攻撃して来なければ刃物は持たぬし、相手を傷つけるための刃物ではない」
そう言って伊紀は「そうであろう?」と隣の執事に同意を求める。そして執事はそうだとうなづくのだ。
しかし、ひとつだけ言っておこう。
相手も理由なく刃物を持ち人を殺すわけではない。その「理由」を作っているのは、間違いなく自分たちである。
と、その時。
下からドタバタという音が聞こえたかと思ったら、Live's Beautyの構成員のひとりが「ご報告があります!」と、尋常ではない様子でやってきた。
「敵が、傘下組織を全員殺し、撤退しました!」
「なに⁉︎」
伊紀は机に手を叩きつけ、立ち上がる。
「撤退した、ということは……臨戦態勢を解除していいのか?」
気を緩めようとする伊紀に、執事が「いえ」とやんわり警告する。
「怪しいです伊紀様。どうして突然攻撃を止めるのでしょう? しかも、撤退ですよ?」
「た、確かに……何か企んでいるようにも——」
その時、その場にいた人物を襲ったのは、凄まじい揺れ。
ドシリと落ちる天井。
ミシッと崩れる床。
——あまりにも突然のことで、誰も対応が出来ない。
朱里が立っているところにも、地響きは届いていた。そこからは、メイルズビルが一瞬にして崩れ去っていくのが見えていた。
メイルズビルはかなり古く、あちらこちらに小さなヒビが見える。朱里はそれを利用した。
朱里がさっき押したのは、爆破スイッチ。
ビルを壊し、構成員は生き埋めに。リーダーの伊紀だけは救出して組織へ連れて行く。そういう計画だった。
『お前な……これ、賭け要素でかすぎだろ。これであいつが死んでたらどうすんだよ』
突然の電話。相手は軽くキレている司令塔だ。
「いや、なんか上手く行く気しかしなかったんだよね。ていうかそもそもあの人だけ生かしとこうって言うのはこっちが組織について吐かせたいだけで、そもそもの依頼には関係ないんでしょ?」
『まあ、そうだが……』
「そんなことより、早くリーダー回収したら? この作戦の責任は全部私が負うよ」
『——了解』




