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暗黒の疾風  作者: 秋本そら
Ⅱ 援助依頼「善と悪は紙一重」
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撤退

 ——突然の撤退指示。

 戸惑いと困惑の騒めきが起こったが、それでもゆっくりと、波が引くように、メイルズビルの一階から人が減っていく。

 しかし、Live's Beautyを本当に信奉している組織のひとつである『生命の奇跡』の長がそれを疑問に思うのは当然のことだった。

「……なぁ、なんでみんなしてここから出ていくんだ?」

 近くにいた組織の長に生命の奇跡の長が問いかける。

「ああ、ここの一階や二階で敵を追い詰めるのは、本当に信頼できる『生命の奇跡』と『尊き紅』に任せたいんだと。それ以外の組織は外に出て、外部からやってくる敵を倒せって、そういう指示だ」

「成る程な……本当に信頼してるなら直接俺らにも言ってくれりゃあいいのに」

 腕組みした生命の奇跡の長に、「いや」と別の組織の長が口を挟む。

「多分、信頼してるからこそだ。戦闘準備や戦闘中の奴の集中力を削ぎたくねえんだろ。この状態なら、携帯のバイブだって邪魔だ」

「そりゃそうか。なら他の奴らには言わねえ方がいいな」

「あたり前田のクラッカーだろ」

「ま、そうだな。んじゃ、お互い頑張ろうぜ」

「ああ、勿論さ」

 そして、大してLive's Beautyを信奉していなかった組織の構成員は、全員メイルズビルの外へと出て行き、そして自らの本拠地へと帰っていった。

 そのビルの外にできた人混みの中に、いつの間に紛れ込んだのか、朱里の姿が見えた。

 朱里はメイルズビルを見上げ、何かを呟く。

 ——外から見るメイルズビルはかなり古く、あちらこちらに小さなヒビが見えた。


 二階。

 そこではLive's Beautyの構成員と、暗黒の疾風の構成員、そして尊き紅の構成員が戦っていた。

 暗黒の疾風はLive's Beautyの構成員は迷いなく殺していたが、尊き紅の構成員は気絶させるなり戦闘不能状態にするなりで、殺すことはしなかった。依頼には尊き紅の殲滅は含まれていないからだ。


 暗黒の疾風の構成員は、耳に小さなイヤホンのようなものをつけていた。そこからは無線で飛んできた仲間の指示が聞こえてくる。

『暗黒の疾風、戦闘班に告ぐ——』

 その指示を聞いた暗黒の疾風の構成員は、一種の箍を外す。

 ——コードネーム『象の騎士』が突然、尊き紅の構成員を刺し殺す。

 今まで殺すことはしなかった尊き紅の構成員を、殺したのだ。

 それに驚き気を取られたLive's Beautyの構成員をコードネーム『魔術師(マジシャン)』が連続ナイフ投げで一気に全員仕留める。

 その華麗な手さばきにさらに気を取られた尊き紅の構成員を、ほかの暗黒の疾風の構成員が一気に殺す。

 三階から降りてきた別のLive's Beautyの構成員が攻撃を仕掛けてこないうちに、暗黒の疾風の構成員は、全員一階へ降りていった。

 一階に降り立った暗黒の疾風の構成員は、その場にいた尊き紅の構成員や生命の奇跡の構成員を屠っていく。

 首の血管を切り裂き、胸を刺し、華麗にナイフの連投で壁に縫い付ける。

『首領からの許可が出た』『配下組織も殺していい』——その言葉を聞いた暗黒の疾風の構成員は、容赦なく人々を殺し、そして配下組織を殲滅させようとした。

 そしてしばらくしたあと——。

 そこは血の海になり、生きているのは暗黒の疾風の構成員のみとなった。


 彼らは堂々と一階から外に出て、返り血を浴びたまま、笑顔を見せた。

 そして武闘班のリーダーである『象の騎士』は、腕で大きな丸を作り、そのあと他の構成員を引き連れて、少し離れた場所へと避難した。

 いつの間にか、組織の車もビルから離れていたことに、誰も気付いてはいなかった。


「——さあて、やりますか」

 朱里は数件先のビルの屋上からそれを見ていたが、暗黒の疾風の構成員がメイルズビルから去ったのを確認して、手元にあった何かのスイッチらしきボタンを、押した。

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登場人物が分からなくなった場合はこちらをご覧ください 第2部分 登場人物 物語に出てくる組織についての説明を見たい方はこちらをご覧ください 第3部分 組織紹介
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