メイルズビルにて
メイルズビル。
そこは、今回の対象である組織、Live's Beautyの本拠地。
そのビルの一階はただの受付と応接間しかないが、二階よりも上に上がると、あちらこちらに様々な資料があるのがうかがえる。
資料の種類は写真に動画、文章など多岐に渡る。
整然と並ぶその資料たちは、堂々としている。
——ただし、それはいつもなら、の話。
今、受付に受付嬢はいない。代わりにいるのはLive's Beautyの傘下組織の構成員のみ。
本来ならば美しいはずの応接間は荒れ、戦乱の跡が見える。
二階ではナイフが飛び交い、体が打ち付けられる鈍い音が幾つも聞こえ、物が倒れる音が響く。銃声が聞こえないのだけが、まだ救いだ。
そんな戦乱の中で撒き散らかされてしまった資料達。その中には目がただれて失明してしまったうさぎなどの、動物実験を行った所為で傷ついてしまった動物たちの姿があった。
また、散らばってしまった資料の中にはUSBが混ざりこんでいた。もしUSBの中のデータを見ることが出来るならば、そこには動物実験反対を訴える動画を見つけることが出来るだろうと推測される。
それもそのはず、Live's Beautyは動物愛護団体だった。しかも、かなり過激で度が過ぎている。
その為、この組織——Live's Beautyは疎まれているのだ。動物実験を必要とするマッドサイエンティストたちに。
一階。
Live's Beautyの傘下に入っている十二組織が集まっていたが、そのうち六分の五が、心の中で愚痴を、文句をこぼしていた。
(……全く、戦闘なんてやったことない俺らに戦闘しろなんて無理だろ……)
(あいつらの傘下から抜け出したいもんだね)
(経済的なことを考えて傘下に入ったが、これなら組織が潰れた方がまだマシだ)
今一階にいるのは、誰とも戦っていない戦闘準備中の者たちで、二階ではLive's Beautyを信奉している『尊き紅』の構成員の一部が今も戦っている。
しかし、そんなことはLive's Beautyを信奉していない十組織にとっては正直どうでもよかった。いや、むしろLive's Beautyが今戦っているらしい"敵"に倒されればいいのに、とすら思っていた。
正直、殆どの傘下組織は、Live's Beautyにうんざりしていた。
経済的援助を求めて傘下に入った組織は、その援助を有り難く思いつつも、その引き換えに途轍もなく無茶なことを要求されることが嫌でもあった。
価値観が似ていると思って自ら傘下に入った組織もあった。しかしその殆どは愕然とした。実際に共に活動してみると、Live's Beautyは思っていた組織とは違いすぎたのだ。かといって自ら傘下に入ったために、傘下から抜けると言い出せない。そしてこちらも無茶な要求をされることがあり、それに正直うんざりしていた。
そんな組織の長たちのスマホが、突然揺れる。
突然届いたメールを不審に思いつつも開き、その次の瞬間には、部下に声を飛ばすなりメールをするなりして、とある指示をした。
『——このビルから撤退しろ!』




