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暗黒の疾風  作者: 秋本そら
Ⅱ 援助依頼「善と悪は紙一重」
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違和感

「——あの、はじめまして」

 後部座席から声がして振り返ると、そこには若い——というよりかは幼いの方が適切にも思える——男がいた。

 朱里は若いながらも、実は組織の中では首領の次に地位が高い。そんな自分の立場上、組織内にいる人の名前は全員覚えているはずだった。なのに、知らない人がいる。そのことに、強烈な違和感を感じる。

 その男の隣に座っていた、コードネーム『伝書鳩』こと原田翔に問いかける。

「——ねえ翔、こいつ、誰?」

「ああ、こいつですか。裏路地に捨てられてたのを拾ったんですよ。名前は、(ひいらぎ)(まこと)って言うらしいです。取り敢えず俺が面倒みることになって、なら少し仕事を見せようかと思いまして。こいつも、今日から暗黒の疾風のメンバーになりましたから」

「……柊、誠です」

 声変わりの時期独特の声で誠は名乗り、頭を下げた。

「コードネームは後々決めるそうです。あ、あと——」

 翔が話す声が、だんだんと遠くなるように、朱里は感じた。朱里の頭の中は今、違和感に支配されていた。


 ——柊、誠?


 ——捨てられていたにしては清潔感もあるし、飢えてもいない……。


 ——肌の色が悪そうには見えるけど……化粧にも見えるのは気のせいかな……?


 ——柊誠……その名前すら、信用できない。


 その違和感がどこから来るのかは朱里にも分からない。ただただ、おかしいと思った。それだけだ。

 だからだろうか。誠に名前を聞かれたその時。

「あなたの……お名前は?」と問われたその時、朱里は、とっさにこう答えていた。

「——夕子。風野(かざの)夕子(ゆうこ)。よろしくね」

 勿論、朱里は仕事でも、プライベートでも、この名前を使ったことがない。一度もない。

 これは完全なる、嘘だった。

 翔が何か言おうとしたが、朱里は軽く睨みつけて黙らせた。

 誠が戸惑ったように尋ねてきた。

「それ……本名ですか?」

「そうだよ。仕事の時の名前を聞きたかった?」

「はい……。だって今、仕事中じゃ、ないんですか?」

 そう問いかける彼に、朱里は直感でこう思った。

 ——()()()、信用できない。

「……確かにね。うっかりしてたよ。仕事の時は、南條(なんじょう)郁恵(いくえ)って名乗ってる」

「あの……ひっ!」

 またもや翔が何か言いかけ、朱里に睨まれる。

 朱里は素早く翔にメールを送る。そのメールを見た翔は、表情でどうしてかと問いかけたが、朱里はその目を見つめるだけ。


「——おい、首領の了承を得たぞ」

 運転席でずっと電話をしていた司令塔が、朱里の肩を叩く。

「じゃあそうだね、あの二組織以外の組織のリーダーにメールを送ろうか」

 そう言って、朱里はメールを打ち始める。

 しかし。

 朱里がメールを打ち終わり、送信ボタンを押すのと同時に震えたのは、司令塔のスマホ。


 ——『作戦を変更する。』

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登場人物が分からなくなった場合はこちらをご覧ください 第2部分 登場人物 物語に出てくる組織についての説明を見たい方はこちらをご覧ください 第3部分 組織紹介
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