計画
朱里が電話で告げられた場所へ走っていると、再び先程と同じ着信音が流れ出した。半ば舌打ちしながら電話に出る朱里。
『コードネーム『司令塔』だ。突然切るから驚いたぞ』
「——手短に話して」
朱里が告げると、司令塔と名乗った男は語りだす。
『メイルズビルの近くに組織の車を止めている。そこに来てくれ。詳しくはそこで話す。待ってるからな』
唐突に切れる電話。朱里はさらに駆ける。
やがて見えてきたのは、五階建てのビル。そして、黒く塗られた組織の車だった。
車の助手席に無言で乗り込む朱里。
車の運転席にいた男——司令塔が朱里に建物の見取り図を渡した。
「今回の目的はLive's Beautyの殲滅。リーダーの牧野伊紀は捕まえて拷問班に回し、色々吐かせてから殺人班に回す。他はここで殺す計画だ。
今回のリーダーは俺だ。サブリーダーは『象の騎士』。象の騎士は奇襲班をまとめ、俺は情報をかき集めて計画を立てて——まあ、あいつらのバックアップ隊というわけだ。いつも通りだがな。
現在状況は……技ではこちらが優っているが、数は断然あっちが上だ。Live's Beautyそのものの人数もそれなりに多いが、その人数よりもこのビルの中で対抗している人数は多い。おそらく、あの組織は配下の組織の人間も呼び出して加勢させている。今、象の騎士たちは二階にいるが、一階から配下の組織たちが象の騎士たちを攻めている。象の騎士たちは挟み込まれている状況だ」
朱里は頭をフル回転させ、話の内容も渡された見取り図もいっぺんに理解し脳内に取り込んだ。そして、それを元に計画を立て始める。
「分かった。……配下の組織は沢山あるけれど、あいつらを本当に尊敬して崇拝して、もしくは同調して配下に入った組織は少ないよね?」
朱里は話しながら、メイク落としシートを取り出して顔を拭く。ごっそりと濃い化粧が落ちていった。
「ああ。たったの二だ」
「そうしたら、尊敬してるわけでもないのに配下にいる組織を味方につけられれば勝てる。組織の名前は尊き紅と……」
「生命の奇跡だ。あいつらは決まって腕に赤いバンダナを結びつけてる」
「まるで革命だな」と笑う司令塔に、朱里も「ほんとね」と嘲笑う。その頃には朱里は、リキッドファンデーションを塗りつけ、その上からルースパウダーを叩きつけていた。
「でも、どうやって他の組織を味方につける?」
「ほとんどが、経済的余裕がなくて配下に入らないと組織の存続が危ういって理由だよね。なら……うちらとの統合、はどうかな。統合とは言わなくても、それこそ傘下組織になるとか。……ま、要するにLive's Beautyを取るか、うちらを取るかだよ。首領の事だからきっと許してくれるし、独立できるような配慮もしてくれるはずさ。向こうよりも良い条件を提示すれば、きっとこっちを取る」
司令塔の話を聞きながら、唇にはカラーリップを塗る。さらに、話しながら髪をほどき、一つにまとめて縛り直す。こうすれば『水無月環奈』の顔の出来上がりだ。表社会の顔——『秋月紅絹』の姿のままでは、仕事に出られない。
朱里の言葉を聞き暫く考えた司令塔は、電話をかけ始める。
『どうした?』
「——首領、お願いがありまして」




