7.私は押しに弱いようです。
お待たせ致しました!
(果たして待って下さっている方はいらっしゃるのか?!)
7話を更新させて頂きました。
サクッと読んで頂ければとー。
宜しくお願い致します。
どうやら私は・・・
とても・・・とても押しに弱いようです・・・
このままじゃ、なし崩し的に友人ポジに居すわられてしまううううううう!!!!
どうにか!!!!
どうにか回避できないものでしょうかあああああ!!!!!
私の名前は、アリステラ・ディ・ティエラ
異世界転生したかと思っていたら、乙女ゲームの世界に転生していた女子です。
今現在その乙女ゲームのヒロインより、異世界に召喚されてから今までの事のあらましを詳細に語られている所です。
・・・はい。
そうです。
ヒロインから逃げられませんでした!!!!
逃がしてもらえませんでした!!!!
ヒロイン!!!!
押しが強いのよおおおおお!!!!
とりあえず友人になることは保留し、今は彼女の相談に乗るという事で落ち着き、学園の広い庭園内にある東屋に移動しました。
そして、現在ヒロインのお話を聞いている最中です。
延々と・・・
ええ、延々とです。
お話が、とっっっても長い!!!!
さて問題です。
私が彼女に会ったのはいつだと思いますか・・・?
はい・・・
・・・お昼休みの真っ最中・・・でした。
そして今は午後の授業が始まっている時間です・・・
ふ・・・ふふふ・・・
午後の授業を!!サボってしまいました!!
どうしてこうなってるのおおおおおおおお!!?
ですが・・・
ヒロインの話を聞いていると・・・
私以上に波乱万丈ですね。
私だったら、心が折れていると思います。
良かった!
ヒロインに転生してなくて!
「それでねーーーーえぐえぐ」
ヒロインが泣きながら、話を続けています。
隣に座る私の手を握り締めながら。
・・・逃がさないようにですか?
逃がさないようにですかああ?!!
まあ、全力で逃げたいんですが!!
「でね、たぶん今のハーレム状態も、恋人のかけた魔法の影響だと思うんだけどね・・・」
「え、ええ・・・」
「男性恐怖症気味の私には、全く持って嬉しくない状況でね・・・」
うわー・・・
話を聞いていて、随分な目にあっているなーとは思っていたけれど、男性にトラウマを抱えるまで追い詰められていたとは。
まさかヒロインがこんな子だったなんて、予想外すぎて、どんな反応をすればいいのか、わかりません。
だけど、私に火の粉が飛んできては堪ったものではありません!
「それはお辛かったでしょう・・・その様な事情があるのでしたら、避難できる場所をご用意されては如何かしら?」
「ふえ・・・?避難できる場所・・・?」
「ええ。養護教諭に相談して、保健室に避難させて頂くのは如何かしら?」
全力で私に関わらない方向に話を持っていきます!!
笑顔で話していますが、内心ヒヤヒヤです!
冷や汗が止まりませんよ!
「そっかぁ・・・その手があったかぁ!」
ヒロインは顔を輝かせています。
もう一息!!
「私も保健室を利用した事がありますが、優しそうな女性の先生がいらっしゃったわ。井上様が保健室にいらっしゃる間は、男性の入室を拒否して頂けるよう、養護教諭の先生に相談してみては?」
「・・・・・・瑠璃花だよ」
「え?」
「井上様じゃなくて、瑠璃花って呼んで欲しいな・・・」
可愛らしく首を傾げながら、ヒロインがそう主張してきます。
ええーーー・・・
名前呼び・・・?
「え・・・っと。それでは・・・ルリカ様と呼ばせて・・・」
「瑠璃花だよ!呼び捨てにして、お願い・・・」
「えええ・・・?!!」
でました・・・
ヒロインのごり押しです・・・
ううう・・・
私これに弱いのよお・・・
瞳を潤ませながら、上目使いで悲しげに、こっちを見ないでえええええ
黒目が大きくて、まるで子犬の様なのよおおおお、ずるいいい!
ガクリと項垂れてしまいます。
「わかりました!わかりましたわ!ルリカと呼ばせて頂きますわ!」
「やったあああ!ありがとう!えっと・・・そういえば、あなたの名前聞いてなかったね。」
「・・・私は、アリステラ・ディ・ティエラと申します。」
「わあ!名前も可愛いんだね!アリスちゃん!」
・・・え?
ちゃん付け&愛称呼び・・・?
私まだ友人になるとは言っていないのですが・・・?
これはもしかして、なし崩し的に友人になろうとしているのでは・・・?
どこまでが彼女の計画なのでしょう・・・
それともこれが彼女の素なのでしょうか・・・
素なのでしたら、軽すぎなのでは?!!
疑心暗鬼に陥っている私に、ヒロインはニッコリと子供のような笑みを溢します。
「改めて、ありがとう!アリスちゃん!私、保健室に行ってみるよ!」
「え?ええ・・・」
「でも今日はもう授業も終わっちゃいそうだし、明日早速行ってみる!」
ようやくヒロインから解放されるのか!
私はホッと息をつく。
「そうね。行くなら少しでも早い方が良いものね」
「うん!じゃあ、私行くね!またね、アリスちゃん!」
「ええ、では・・・」
・・・あら?
・・・今、またって言った??
え・・・またって、また会う気まんまんって事?!
颯爽と走って去っていくヒロインの後ろ姿を見ながら、私は茫然とする。
やっぱり友人になる事を諦めていなさそうなヒロインに、私は崩れ落ちる。
ですから!!!!友達になる気はないんですっ!!!
嵐のようなヒロインと別れ、私は教室に戻る気力もなかったので、寮の自室で休むことにしました。
疲労感が半端ありません。
ふわふわのソファに沈み込み休んでいると、しばらくして、家から付いてきてくれているメイドが声を掛けてきました。
どうやら、午後の授業を丸々休んでしまった私を心配して、寮にリューがやってきている様なのです。
私は身体をおこし、身だしなみを整えました。
心配して寮にまで来てくれているリューを待たせる訳にはいきません。
鏡で身だしなみが乱れていないか、最終確認をして、自室を出ます。
そうそう。
実はこの学園は、全寮制なのです。
一人一室、広い個室を用意されています。
基本学園に通っているのは貴族のお坊ちゃま・お嬢様なので、学園も寮も広大な土地に建設されています。
寮は、男子寮と女子寮があり、それぞれ1階が玄関と食堂
2階より上が、各個室となっております。
もちろん、婚約者であっても、部屋に異性を連れ込む事は禁止されております。
異性の立ち入りが許されているのは、1階のみ。
ですので、リューには女子寮の食堂外のカフェテラスで待っていてもらいました。
「リュー、ごめんなさい。待たせてしまったかしら?」
走る事ははしたない事なので、早歩きで、なるべく急ぎながらカフェテラスへ降りてきました。
リューは目立つので、すぐ見つけることが出来ます。
リューの座るテーブルへ向かい、謝罪の言葉を口に出すと、リューは飲んでいた紅茶のカップを置き、ふわりと微笑みを浮かべました。
「全然待っていないよ、お姫様」
そういうと、席から立ち上がり、私の座る椅子を引いてくれます。
紳士・・・!!!!
王子様で、むしろ臣下から椅子を引いてもらう立場なのに、リューはいつも率先して私に紳士的に接してくれます。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
お互い席につくと、リューは執事に私の好きな紅茶のフレーバーを伝え、すぐお茶の準備をするよう指示を出します。
もちろん、私の好きなお菓子も一緒に。
さすが、婚約者兼幼馴染です。
リューに抜かりはありません。
私のことを知り尽くしています!
紅茶とお菓子はすぐに運ばれてきたので、私は一息つかせて頂きました。
ほぉ・・・と息を吐くと、リューが心配そうに尋ねてきます。
「今日は午後の授業を休んでいたようだけれど・・・何かあった?疲れているように見えるよ・・・」
リューの気遣いが心に沁みます。
「ええ、それが・・・お昼に件の女子生徒と偶然会ってしまいまして」
「件の・・・って、うちのクラスの、イノウエ ルリカ嬢の事?」
「はい」
「そういえば、彼女も午後の授業に出ていなかったね。クラスの男子生徒がずっとざわついていたな」
件の女子生徒で通じるヒロイン・・・
そうですよね、問題をおこしている生徒は大体彼女か、彼女の周りの男子生徒です。
「それで、彼女に押し倒されまして・・・」
「押したお・・・?!」
「で、胸を揉まれて・・・」
「え!!胸を?!!え?!!」
「そして、彼女のお話に付き合ってきました」
「・・・ちょっと、待って。どういうこと?」
リューが顔を手で覆い、頭を左右に振っています。
わかるー
その気持ちとても良くわかるー
困惑するよねー
「どうやら彼女にも色々あるようで・・・」
「許せない・・・」
「・・・え?」
地獄の底から響くような低い声がリューの口から零れました。
驚いてリューを見ると、彼の背後から、黒いオーラが?!!
ど、どうしたの、リュー?!!
「・・・・・・君を押し倒して、胸を揉むって、どういう事?!!」
えええええええ、そっちーーーーー?!!
「え?あの??どういう事とおっしゃられても、偶然による事故で・・・」
「事故でも何でも!!僕のステラに触れるなんで許せない!しかも!!胸を揉む・・・だと?!」
「え?え??」
「まだ僕ですら、ステラの胸に触れた事がないのに!!!!!」
「えええええええええ?!!」
リュー、大激怒です。
しかもヒロインが胸を揉んだことに対して、大激怒です!
「あの女・・・殺す・・・」
待って待って待って!!
結構ガッツリ胸は揉まれたけれど!!
相手は女の子なのよ?!
リューの殺意がこれでもかと吹き出しております!
えええええ!
どうすればいいのおおおおお?!!
更新は、来週を予定しています。
執筆がんばります!