3.学園に入学しました。
一気に時間軸が飛びます。
乙女ゲームの学園に入学しました!
すごい・・・
ヒロインってすごい・・・
ここまで凄い存在だったなんて・・・
ぶっちゃけなめていたわ・・・
このゲームをなめていた。
普通の乙女ゲームだと思っていたのに・・・
ヒロインを取り囲む美形!美形!美形!
ヒロインの前後左右を美形がガッチリガードしている。
しかも皆わかりやすくヒロインへ好き好き光線を放っている!!
これが・・・!!!
これが・・・!!!
ヒロイン力(?)かあああああああああ!!!!!
私の名前は、アリステラ・ディ・ティエラ
異世界転生したかと思っていたら、乙女ゲームの世界に転生していた女子です。
本日めでたく、ルークス王国の貴族たちの通う学園、ステッラエ学園へと入学致しました。
婚約者で、この国の第一王位継承者でもあるリュシオン王子ことリューと共に。
・・・はい、そうです。
乙女ゲームの!!!!
物語の!!!!
舞台ですよ!!!!
ついに入学しちゃいましたああああ!!!!
私の破滅への第一歩おおおおおおおおおおおお!!!!
入学式前日まで不安のあまり寝込んでおりましたよ。
だってだって!
私は悪役?令嬢としてヒロインと対立する予定なんですよおおおおお!
うええええ
まあ・・・最終的にヒロインとリューがくっつくのかはわかりませんが・・・
でも王子様って一番憧れの存在じゃないですか!
しかもですよ・・・
あの時出会った美幼児様は・・・華麗に美少年へと進化いたしました!
そして在学中に色香漂う美青年へとクラスチェンジする未来が見えるううううううううう
その片鱗がすでに表れてるううううう
出会ってはや10年は立ちますが、今でも彼のご尊顔が眩しくて目が潰れそうになる時があります。
幼い頃から変わらない金糸の如く輝く金色の髪
神秘的な紫水晶の瞳
整ったお顔にスラリと長い手足
穏やかな微笑みを浮かべ颯爽と歩かれている姿は、どこからどう見てもザ・王子様ですよ。
私が婚約者でよいのですか・・・
私が婚約者で申し訳ありませんと土下座したい気持ちでいっぱいです。
「ステラ、どうしたんだい?」
心のなかで葛藤していると、リューが私の愛称を呼び顔を覗き込んできた。
眩しい!眩しいって!!
「いえ、緊張して昨夜はあまり眠れなくて・・・ボーっとしてしまいました。」
「?!!!!眠るのが大好きな君が、眠れなかったのかい?体調は大丈夫?!」
そんなに驚くことか。
いや、リューには散々私のダメっぷりを見られているから何ともいえないが。
よく私の婚約者をやっているな・・・
そうなのです。
5歳で出会い、婚約者として現在まで親しくして頂いております王子様には、私が眠るの大好き・食べるの大好きなダメダメ女子だという事はとっくの昔にバレてしまっているのです。
美味しいご飯は正義!!
私は燃費が悪いらしく、沢山食べても太らない便利な体をしている。
前世の私は、食べたらすぐ贅肉がつく憎らしい身体をしていたので、正直今世の体質は涙が出る程嬉しく、ありがたい。
すぐお腹が空いちゃうのは、嫌なところなんだけどね。
なので、お菓子入りのポーチをどこに行くにも持参している。
王妃教育の時にも持参していたので、お城中の人にも残念女子なことがバレている。
むしろ、通りすがりによくお菓子を頂くことも度々で、お城に何をしに行っていたのか・・・
お菓子を貰いにお城に通っていたのではないよ?!!
ちゃんと王妃様になる為の勉強も頑張っていたよ???!?
そして、リューには変なところばかり見られている・・・
お腹が空きすぎて涙とヨダレを垂れ流している姿だとか・・・
お昼寝をしていて、ヨダレを垂れ流している姿だとか・・・
こう言っては何だが、私はしょっちゅうヨダレを垂れ流していた訳ではない。
ここは断言させて!
私お口ゆるくない!!!!
しかしそんな姿を見てもニコニコして私にお菓子を恵んでくれたリュー
一緒に添い寝してくれたリュー
なんて出来た王子様だ。
よく私の婚約者をやっているな・・・?
「ほ、ほほほ・・・大丈夫よ。」
「そう?ならいいんだけど・・・」
優しい優しい婚約者
これだけ長く一緒にいるのだから、将来婚約破棄をするかもしれないとわかっていても好きになってしまう。
ベタベタに甘やかされ、僕のお姫様大好きだよと会うたびに囁かれれば好きになりますよ!
ええ、それはもうあまーい砂糖菓子の様なお言葉を会うたびに囁かれ・・・
好きになってはいけないとわかっていても、好きになっちゃうよ!
この学園でヒロインと出会い、私への想いが変化していくであろう彼を見るのは物凄く辛いけれど、この10年とても幸せだったのだ。
幸せだった時間を思い出として、のりき・・・れるかなあああああ???!
ああ不安しかない。
胃が痛い。
それでも朝食は美味しく頂きましたけれど!
新入生のクラスは3つに分かれているようです。
リューとは違うクラスになったので、リューはとても残念がっていました。
来年は何が何でも一緒のクラスになると、何やら不穏な空気を醸し出していましたが・・・
リュー・・・何をする気なんだろう・・・
リューと別れ、自分のクラスへ向かうと、中の良い令嬢が数人同じクラスだとわかり、嬉しくなります。
そしてどうやらヒロインとは違うクラスのようです。
ゲームの中では、ヒロインの女の子は、異世界から召喚された女子高生という設定でした。
ゲームパッケージのヒロインのイラストも黒髪に学校の制服だった記憶があります。
明るい髪色の多いこの世界では(たまに奇抜な髪色の人間も存在します。うちの父のように・・・)黒髪は目立つので、彼女がいるとすぐにわかると思います。
どうやらクラスでは平和に過ごせそうでホッとしました。
学園への入学から数日・・・
驚くべきことがわかりました。
ええっと・・・
えええええっと・・・????
ヒロインの攻略対象は・・・
なんと・・・ヒロインのクラスの男子全員(?!)でした。
どうやらヒロインはリューと同じクラスだったみたいです・・・
リューからクラスがおかしなことになっていると相談がありました。
なんとなんと!
クラスの男子生徒はほぼ全員ヒロインの事が好きになり、ヒロインがどこに行くにも付きまとっているそうなのです。
なにそれ怖い
話を聞いている限りでは、リューに変化は見られないのですが、クラスの男子全員って・・・
これって、そんなゲームだった?!!
記憶にある限りでは、攻略対象は王子様・宰相の息子・騎士団長の息子・生徒会メンバー・教師だと思っていたんだけど・・・
ゲームパッケージのイラストもメインの数人しか描かれていなかったし、ゲームの紹介雑誌でもメインのキャラしか描かれていなかった。
なので、彼らが攻略対象なのだと思っていたんだけど・・・
宰相の息子と騎士団長の息子はリューと同じクラスにわけられたみたいなのだけど、既にヒロインに落ちているみたい。
生徒会メンバーは彼女と接触があったのかまだわからない。
先生も同じく・・・
だって、私は出来るだけ彼女に関わりたくないから、近づきたくない。
彼女が近くにいるとすぐわかるので、回避はしやすいのだ。
取り巻きの男子生徒が騒々しいからね。
これからも出来るだけ、ヒロインには関わりなく生きていきたい。