ギルド作りました
大聖堂に着くと一足先にミラが待っていた。こちらに気づくと一瞬固まる。その後、おどおどしながらこちらに来る。
「えーっと…何でカオルさんがここに?」
「おう、ちょっとそこの酒場で会ってな。ギルドにも入ってなかったみたいだから一緒にどうかなと。ほら、この先2人だと厳しいかもだろ?それに、前にも助けてくれたしドラゴン一人で討伐できるほど強いしな。」
ほんとにな、同じレベル帯のはずなのにこの差だよ。悲しくなるよね。
「なるほど、確かにそうですね。カオルさん、よろしくです。」
「カオルでいいよ。ミラさん。」
「そちらもさんづけじゃないですか!」
何でこんなどうでもいいことで言い争ってんだこいつらは。あれか、初々しいカップルか!
「しょうもないことで言い争ってないでとっとと行くぞ。」
てなことで着きました、ギルド関連窓口。窓口の後ろの壁にはギルドランキングの上位100ギルドが張り出されている。まあそういうギルドは俺らには関係ないけどね…うわ、何かリストの中に『セイクリッド』とかいう見たことあるような名前がある気がするけど気のせいだよね、そうに違いない。
「こちらはギルド関連窓口です。見たところギルドに加入していらっしゃらないようですが、ご案内しましょうか?」
「あ、一応お願いします。」
「了解しました。こちらが初心者歓迎の項目にチェックを入れているギルドの一覧です。」
受付のCPUが膨大な量のギルドの候補を見せる。うん、見せられても多すぎてわかんねえよ。めんどくさいから二人に丸投げしましょ。俺は後ろを振り返って二人を見る。
「お前らは何か希望あるか?」
「希望…ですか。ナンパしてくる人がいないところがいいです。」
うん、それリスト見ただけじゃわからんし。
「あまり…人が多くないところがいいかな。」
あー、酒場で絡まれてたしな。じゃあ人数少なめのところを探すかね。
「シロさんは何か希望ないんですか?」
「んー、俺はなぁ…」
俺はギルドに入った時のことを想像する。
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『ミラ、カオル、パーティー組もうぜ!』
『ごめんなさい、他の人と約束しちゃってるんです。』
『すまないな。』
『いや、いいよ。別の人に聞いてみる。』
『すみません、誰か俺とパーティー組みませんか?』
『ごめんなさい、あなたみたいに紙装甲で回復量もしょっぱい神官さんはいらないの。』
『あ、そうですか…。』
……………………………………………………………
あれ、何か涙が出そう。ダメだこれ、ギルドに入っても孤立する未来しか見えないじゃん。
「…えーと、俺みたいなタイプの神官でも許してくれるギルドがいいです。」
「あぁ…。」
「?」
ミラは何となく察してくれたみたいだが俺のステータスを知らないカオルは首をかしげている。
取り敢えず意見をまとめると、ナンパしてくる人がいない規模の小さい脳筋神官OKのギルド…とな。
「…あれ?これ俺らでギルド作ればいいだけじゃね?」
「そうだな、私もそれでいいと思う。」
「賛成です。」
結果、現状何も変わりませんでしたとさ。
「それではギルド設立費用として5000ゴールド頂きます。」
金取るのかよ!しかもそこそこかかるじゃねえか全く。
「えーと、私ポーションとかの費用でお金ないですよ?」
「私も最近新しい剣を買ったばかりでな…すまない。」
何か謝られたけど別に元々2人に払わせる気はなかったから問題ない。
「ああ何だ、お金なら心配ないぞ?神官の経済力なめんな。」
そこそこやってる人ならたかが5000ゴールドだが始めたばかりの俺には結構お高い買い物でした。そして金欠なので次のダンジョンも初期装備で行くことに決定しました!やばーい。
まあ今はそんなことは置いとこう。
「まずは名前だな。何か案はあるか?」
「ないです。」
「任せるよ。」
うわぁ…一番困る返答来たよこれ。そんなこと言ってこっちが何か案を出すとセンスないわーとか言って鼻で笑うんだろ?よし、それなら無理矢理にでも案を出させねば。
「いやあ、そしたら『シロと愉快な仲間たち』とかにしちゃうぞ?いいんだな?」
「いいですよ。」
「決定だね。」
「嘘です俺が恥ずかしいからやめてくださいお願いします。」
何この子達、本当に何でもいいのかよ。普通に「おっぱい」っていう名前とかでもOKとかになりそう。セクハラだからやらんけど。
「じゃあ名無しって意味でノーネ…」
「それはやっちゃダメです。」
「ごめん、私もそれは色々と問題があると思う。」
ええ、何で「シロと愉快な仲間たち」はいいのにこれはダメなんだ?何か別のところから圧力がかかっているのだろうか。
「じ、じゃあ未定って意味でTBDってのはどうだ?」
「いいんじゃないですかー?」
「うん、いいと思うよ。」
ごめん、俺にはさっきとの違いがいまいちわからないよ。でもまあこれでいっか。
「よーし、ギルドができたことだし、あとは募集要項だな。取り敢えず、ギルド内恋愛は禁止って書いとけばナンパされなくなるよな?」
するとミラの顔色が変わる。
「い、いやぁ、別に恋愛自体は自由だと思うんですよ。ほ、ほらあまり厳しくすると人が入って来なくなっちゃいますし、ね?」
今の話のどこに動揺する場面があったのだろうか?あ、あれか。ナンパ男じゃなくてちゃんとした王子様が入ってきたら貰っちゃおうとか考えてるのかこの子は。抜け目ないな。しかし甘いな、こんな変態ステータスの神官がギルマスやってるようなギルドに王子様なんて来ないと思うぞ。本当に変なやつしか来ないと思う。あれ、自分で言ってて今後が不安になってきちゃった。
「まあナンパ云々はお前が言い出したことだし別に構わんけどな。他には何かあるか?」
「そうですね、強いて言うなら壁役が欲しいですね。」
ああ、確かに。ミラと俺は後衛職。カオルは前衛職だけど剣士。攻撃を受け止めるのではなく避けたり受け流したりしながら相手の懐に飛び込むタイプだもんな。
「んじゃあ、特に壁役を希望…っと。」
壁役が入ってくれれば俺も安心して回復量にステータスを振ることが出来るし、今後要らない子にならないためにも俺としても欲しいですな。
ま、こんなもんかな。別に性格がアレじゃなければどんな人でも構わんし、最悪転職も出来るからな。もし集まらなかったら俺が壁役に転職しますかね。
その後、ユナにめでたくギルド設立のご報告。
「ええ!?ギルド決めちゃったの?残念。ギルドに勧誘しようとしてたのに…。」
「いや、お前のギルド女しかいないじゃん。居心地が悪すぎんよ。」
「じゃあそっちのギルドは?」
…あれ、カオルってどっちだ?一人称は私だからどっちだかわからんし顔も声も中性的でよくわからん。後で聞いておくとして今は男ということにしておこう、さもないと断った理由と矛盾してしまう。
「ええっと…男2、女1だぞ。」
「…ほんとに?」
ユナが顔を近づけてくる。いや、俺もわからん。でもそう言っとくのがベスト、多分。
「ああ。だから肩身の狭い思いはしてないよ。」
男女の面ではな。役職面ではアレだけど。
「…ふーん。まあいいけど、次は雪山だね。防寒装備してった方がいいよ。火山みたいに暑いなら軽装備でも問題ないけどね。」
そこなんですよ。火山は初期装備でもなんとかなったけど、雪山で初期装備で行ったら凍え死ぬんじゃないですかね。
「といってもなぁ、防具買う金も素材もないしな。」
結局あの後ヤゴの抜け殻も集めにいってないしな。
「じゃあ始まりの森を周回すればいいんじゃない?素材集めるついでに。」
まあそうなりますかね。しかし、またあのヤゴと戦うのか…めんどくさいなぁ。
「それでさ、素材集めなら経験値とか関係ないし、私も行っていいよね?」
「ん?ああ、まあ手伝ってくれるのはありがたいけど。」
「じゃあ決まりね!今日はもう遅いし、明日の夜でいいかな?」
「お、おう。」
「それじゃ、また明日!」
満面の笑みで去っていくユナ。いや、お前のレベルで始まりの森なんて行っても面白くないだろ…いや、逆に全部ワンパン出来るから爽快感マックスなんですかね。取り敢えず今日は寝ますか、
やばい、もう忙しすぎて更新ペースが酷い。頭に話が出来上がってるだけにもどかしい。