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ビー・ア・ヒーラー  作者: LPQ
5/8

いざ、火山へ!

「暑…」

火山についた俺の第一声がこれです。暑い!てか熱い!リアルの世界でも夏真っ盛りになろうとしてるのにこっちはその比じゃない。でもまあしかし進むしかないわけですが。

てなわけで進んでいくと何か見覚えのあるシルエット。

「お、さっそく敵が…カニ?」

うん、カニだ。何で火山にカニ?始まりの森の川にいちゃダメだったのこれ。ヤゴよりよっぽどいいと思うんだけど。

「そんでまた殻持ちかよ…。」

そう、圧倒的に火力が足りないうえに物理で殴るしかできない俺からしたら殻持ちは天敵中の天敵だ。

とりあえず一発殴る。固い。このやり取り何回目だろうか。そもそも神官がソロ攻略という時点で無謀なんだ。やはりパーティーメンバーを募るしかない。

俺は速攻でソロ攻略を諦めて森の時と同じくあたりを探してみる。すると、森の時と同じようにHPが底をつきかけていて逃げ回っている女の子が…ってミラ本人じゃねえか!またかあいつは!

とりあえずゴブリンのときのようにワンパンは無理なのでとりあえずヒールで回復してあげつつスライディングお姫様抱っこのような形で助け出す。

「ふえっっ!?」

そりゃあまあそういう反応するだろうが今は非常事態だ、仕方がない。

ミラを安全な岩の影まで連れて行っておろすが、ミラはずっと放心状態である。

そりゃあそうだ、いきなりお姫様抱っこで抱えられて走られたら放心せざるをえない。

「おーい、ミラ、大丈夫か?」

「…はっ。シロさん!?何でここに?」

「いや、お前と同じで始まりの森を攻略したんだから次は火山…っていう当たり前の発想だが。」

「あ、ですよね。いえ、何でもないです。また助けられちゃいましたね…。」

うつむくミラ。って待て。何で魔導士のこいつがカニに苦戦してるんだ?

「ミラ、何でまた死にかけてたんだ?」

「実は、魔法を使ったんですが、ここの敵は皆火に強いからファイアが効かなくて…」

そりゃあそうだ、火山に生息しているんだ。火に強くないわけがない。

「だから水の魔法を使おうとしたんですが、あれ、カニじゃないですか。」

「カニだな。」

「水の魔法が効くと思いますか?」

「…。」

なんてこった。折角またミラと巡り合えたってのに結局ジリ貧じゃないか。

これはまずいですな…。といっても全然攻略法が思い付きません。頭を抱えてると頭上から男の声が聞こえた。

「お困りかな?お嬢さん。」

まさか救いの神!?と期待しながら上を見るとなんか見覚えのある男の顔。あ、こいつあれだ、ユナをナンパしてたやつの一人だ。俺の期待を返せ全く。ていうか見境ないなこいつ。

「え、えと…?」

「俺はディーンってんだ。どうだい、お嬢さん、困ってるなら力を貸すぜ?」

うーん、いや戦力が増えるのはありがたいがこいつはなんかいやだなぁ…。しかもこいつ俺のことをガン無視してるし。何かミラも俺の方をチラチラ見てるし。

「あーん?ああ、俺の力が信じられねえか?仕方ねえな、見せてやるよ、サンダー!」

カニがディーンから放たれた雷撃で一撃で爆散する。

あれ、こいつ頭は軽そうだけどカニとは相性がいいみたいね。もしかして脳味噌じゃなくてカニ味噌が詰まってるんじゃなかろうか。

「どうだい?俺ならこのへっぽこ神官と違ってきちんと戦力になるんだぜ?こんなやつやめて俺とパーティー組もうぜ!」

何だ、俺の存在は一応認識してたのね。しかし俺だけ置いてかれるのは困る。ならば俺はこの単細胞を利用するしかない。

俺は演技掛かった口調でディーンを挑発する。

「1体倒しただけで何を粋がってんのかなぁ、このフロアに何体カニがいると思ってんだよ。そんな魔法乱射して最後の方でMP尽きましたーじゃ洒落にならないよぉ?」

「あぁ?んなもん余裕に決まってんだろ。てかてめえには聞いてねえんだよ!」

「この目で見てないから信じられないなぁ?なぁ、ミラ?」

俺はミラの脇を小突く。

「そ、そうですね。ディーンさんの雄姿を見てみたいです!」

するとこの単細胞、予想通りこちらに背を向けて

「仕方ねえな、ちゃんとその目に焼き付けとけよ?」

とか言いながらカニの群れに突撃。

俺達は基本的に何もせずに後ろから着いてくだけ。お陰で労せずフロアの出口にたどり着くことができた。ディーンを置いていくのも勿論忘れずに。

いやぁ、尊い犠牲だったなぁ。

「シロさんって、案外腹黒いんですね。」

「いやぁ、そんなに誉めないでくれよ。」

誉めてませんよ、と呟きながらも若干ニヤリと笑うミラ。こいつもこいつで似たようなもんだな。

さて、2Fに行きますかね。


はい、というわけで2Fでございます。よかった。カニはもういないっぽい。代わりに何か火の玉みたいな敵がいる。あ、俺あれ知ってる。カ○シファーだろ?余裕じゃないですか。

「ミラ先生、やっちゃって下さい!」

「ウォーター!」

ミラが呪文を唱えると同時に消し飛ぶ火の玉。このフロアは余裕そうだな。

本当に余裕だったよ。何だよ折角フラグまで立てたのに全部水魔法の効果が抜群の敵ばっかりじゃないですか全く。俺、ただの空気。回復?ダメージなんて一切受けてないよ。遠距離から敵に水鉄砲撃ってるだけだもん。近づかれる前に皆ご臨終。不安なのはミラのMPだけど流石魔導士、MPを回復できるエリクサーはたくさん持ってきてるみたい。逆に言えばその分ポーションに割くお金がなくて死にかけてるんだけどね。

頼むからミラが苦手としてて俺が得意としてる敵来いよぉ…。このまま何もしなかったらマジで残念すぎる。てなわけで、2Fあっさり攻略。続いて3F。


このフロアでおいでなすったのは炎狼。当然のごとくミラはこの子を苦手とはしておりません。そりゃあまあそんな都合のいい敵は出ないよね。流石にボスまで水鉄砲を連射させていたらエリクサーの無駄なので俺も前線に出る。幸い相手は毛皮はあるが殻はない。そう、物理に対して強いわけではない。こいつ相手なら俺もレベルをあげられそうだな。なんて高をくくっていると炎の玉を口から発射してきました。

「危なっ…って熱っ!」

うん、普通に食らいました。さらにやけどの状態異常。どうやらこれは最大HPの数パーセントずつダメージを与える程度の軽いもののようだ。セーフ。ここはあれだ、メロさんの言ってた通りに回復連打すれば何とかなるな。

「とりあえず回復だな、ヒー…」

「大丈夫ですか!ウォーター!」

俺が回復呪文を唱えようとした刹那、横から勢いよく水しぶき。一瞬でHPが危険域に達する俺。

「な、何すんだミラ!?」

「すみません!やけどを治すために仕方なく…。でもこんなにHPが低いとは思ってなくてですね…。」

俺が自分のステータスに目をやると確かにやけどが消えている。いや、確かにありがたいけどいろいろとやり方が雑じゃね?まあ俺がHPにステータスを振っていないのにも問題はあるのかもしれんけど。

とりあえずHPをささっと回復。回復力に全くステータスを振ってない俺だが、最大HPが低いので全く問題ない。味方を回復するのには難あり…だが。

とりあえず俺は最低限戦えるくらいの攻撃力がないと本当にただのお荷物なので必死に炎狼を狩ってレベルを上げていく。

「…まだやるんですか?」

ミラの声に気付いてふと時計を見ると炎狼を狩り始めてからかなりの時間が経過していた。

これはあれだ、始まりの森でゴブリンを倒していた時と同じでハイになってたやつだな。

「すまんすまん、こいつでラストにするよ。」

そう口にした俺は目の前の炎狼に杖を振り下ろす。さすがに一撃で仕留められるほど攻撃力は上がらなかったが、大分攻撃力は上がった気がする。

炎狼が倒れると同時に、俺にレベルアップの通知が来た。それと同時に新しいスキルも取得したらしい。

「えーと、何なに?『アタックアップ』…味方1人の物理攻撃力を自身の物理攻撃力分上昇させる…ねえ。」

なるほど、バフか。まあ今まで回復系ばっかだったし支援の選択肢が増えたのはいいな…ってちょっと待て。

何か聞き捨てならない文字があったんだが。自身の攻撃力分?俺だったら攻撃力が更に倍ってこと?つまり2回かけたら3倍?はぁ?

「何だこのスキル。最初に得られる支援スキルにしては壊れてないか!?」

「いや、そこでそんなに恩恵が得られるのはあなたみたいに変なステータスの上げ方をしている人だけだと思いますよ…。」

よく考えたらそうだ。普通の神官はステータスを回復量とかHPとかに振る。劣化攻撃職になるくらいだから攻撃にステータスを振る意味は皆無だからだ。しかし、俺の場合は必要に迫られたので逆に攻撃力にしかステータスを振っていない。要するに、普通の神官なら微々たるものだが俺が使うとかなり強い効果になるらしい。俺はHPや防御力に一切ステータスを振っていないため、攻撃力だけならばHPや防御力などを含めて「まともに」ステータスを振った攻撃職にやや劣る程度だ。これは強い。いや、強すぎる。

「これは…使うのが楽しみだな。」

というわけで俺とミラは4F、ボス直前の準備スペースへと足を運ぶ。


さて、MPは満タンになったしHPも状態異常も問題なし、いざボスへ出発…と思ったらあれ、何か見覚えのある人影。逃げようと思ったけど一歩遅かった。

「ようやくみつけたぜてめえら、さっきはよくもだましてくれたなぁ?」

はい、みんな大好きカニ味噌ディーン君です。

「いや、騙してはないけどな。あの時一言もパーティー組むなんて言ってないし。」

「てめえ、屁理屈を…。てめえだけは許さねえ、おるぁぁ!」

ほとばしる雷撃、何とか横に跳んで避ける俺。危なっ!紙装甲なんだからやめてください、死んでしまいます。

「や、やめてください…きゃっ!」

ミラが止めに入ろうとするがあっさり突き飛ばされる。あらら、ひどい男だこと。ナンパした子を突き飛ばすなんて全く。

ディーンは全く意に介さず俺に雷撃を連発してくる。俺は遠距離攻撃ができないため、逃げることしかできない。しかし、そうこうしてるうちに背中が壁に当たってしまった。

「へ、追い詰めたぜ…。」

ディーンが右手を俺へと向ける。

やべえ、詰んだかも。俺はぎゅっと目を閉じる。

ディーンが呪文を唱えようとした刹那、いきなり前のめりに倒れた。

「え…?」

俺が目を開けると、そこには黒髪の剣士が立っていた。

「大丈夫か?」

剣士が俺に手を差し伸べる。

きゃっ、イケメーン。中性的で男にも女にも好かれそうな美形。しかも刀持ってるぅ。これは憧れますわ。

「あ、ありがとうございます…。えーっと…。」

「私はカオルだ。敬語もいらぬし礼にも及ばん。人に向かって魔法を乱発している不届き者がいたから気絶させただけだ。それよりケガはないか?」

「あ、ああ。それでカオル…は一人でここまで?」

「ああ、最初のカニには苦労したが特に問題なく来れたぞ。」

わあ、すっごーい。顔が良くて実力もあるなんてずるいぞ全く。

「さて、解決したようだし私は行くな。」

「え?ボスを1人で討伐するつもりか?」

「ああ、別に難しくはないと思うが。」

いやまあそうだね、まだ2つ目のダンジョンだもんね。劣化攻撃職の俺目線で語ったら無謀かもしれんけど攻撃職からしたら当たり前のことなんだよね。始まりの森だって最初は2Fで挫折したくらいだしね。自分で言ってて悲しくなってきた…。

まあ、俺たちは俺たちで頑張りますかね。

てなわけでいざボス戦!

治がミラを助けたときよりもカオルが治を助けたときのほうがよっぽどかっこいいよね…なんて。

次回は4月に入ってからの投稿になると思います。

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