強敵出現!一人じゃ無理です!
ということでやってまいりました。ダンジョン3F。
モンスターの種類があまりにも少ないと感じたので多少種類を増やしました。
ミミックを討伐後、特に変わったこともなく、奥へ進む。
『ここが2Fへの入り口です。先ほどよりも敵が強くなっていますのでご注意ください。』
よーし、ようやくちゃんとしたダンジョンぽくなってきたな。いざ、参る。
「おろ?何か急に人が増えたなあ。」
実は1Fではそんなに多くの人を見かけることはなかったのだが、ここにきて見かける人数が倍以上になっている。
「あれか、レベル上げとかの関係で留まってる人がいるのか。まあ確かに神官のへっぽこ攻撃でHP半分持ってかれるような敵だったら全然経験値おいしくないだろうしなあ。」
実際、俺も1Fを通ってきたものの、レベルは微塵も上がっていない。やはりさっきまでのがチュートリアル。ここからがちゃんとしたダンジョンのようだ。
あたりを見回すと…お、ゴブリンだ。こっちのゴブリンはどれくらい強いのかな?
早速杖で殴ってみる。…固いっ!さっきまでとは段違いの固さだ。しかも今の攻撃で怒ったらしく、こちらに敵意をむき出しにしている。
「ふっ…だがさっきとは違い1vs1だ!たとえ時間がかかろうともこちらが攻撃を受けなければ勝てる!」
とは言ったものの…。面倒くさい!やはり受付のCPUが言っていた通りソロでのレベル上げは無謀っぽいか?でも始めたばかりの俺に頼れる人間はユナだけ。そのユナは今はギルド戦で忙しい…と。
「畜生、やってやらぁぁぁぁ!」
魂の叫びとは裏腹に響く音は間抜けな打撃音のみ。やばい、すごく恥ずかしい。でも仕方ないじゃん、神官だもの。10分ほど格闘してようやく1体ゴブリンを片付ける。ちなみに普通の攻撃職であれば大してうまくなくても30秒もあれば終わるだろう…。ん?お、レベルアップしたみたいだ。おお、なるほど。ステータスを振れるのか。俺は神官だし当然回ふ…いやちょっと待て?まずは効率よくレベルを上げられるようになるのが先じゃないか?となるとここは攻撃に振ったほうが…いやでもそれだと神官になった意味が…。いろいろ頭を悩ませた結果、攻撃に振ることにした。だってめんどくせーもん。雑魚モンスター1体に10分もかけてられっかよぉ!
そしてまたゴブリンと格闘、レベルアップを繰り返して、気づいたら夜になっていた。
「…くっ仕方ない。今日はここまでだな。ログアウトして飯食って風呂入って寝るとしよう。」
翌日、学校。
俺が教室の席に着くと同時に優奈が話しかけてくる。
「おはよー、治。昨日はごめんね。あの後ちゃんと始まりの森クリアできた?」
「いや?」
「えっ…?」
優奈が首をかしげる。
「ええっと…ああ、いろんなところ見て回ってクエストに手を付けてないって感じかな!」
「アイテムショップで5分ほど潰した程度だな。」
優奈の首がさらに傾く。
「ええっと…私の記憶だとあそこってどんなに初心者でも2時間もあればクリアできると思うんだけどなあ…?」
「あー、残念。俺はそれ以下だったってわけだな。」
「いや、治は今まで私といろんなゲームやってきたんだから治が下手じゃないのは知ってるよ。…参考までに聞くけど何の職にしたの?」
「神官。」
それを聞いた優奈の顔が一瞬で驚きに変わる。
「何で!?神官って基本的にPT組まないとレベル上がんないし、てかそもそもいらない子だよ!?」
「いらない子とは失礼な。ポーションいらずエリクサーいらず。なんと懐に優しい職業でしょう。」
優奈がため息をつきながら続ける。
「あのねえ、逆に言えばポーションとかエリクサーがあれば神官はいらないでしょ?ゴールドなんてダンジョン潜ってればすぐ貯まるし、このゲームはターン制じゃなくてリアルタイムバトルだからアイテム消費による時間のロスはほとんどないの。それだったらそんな人間ポーションより戦える人員1人でも増やした方がよほどいいに決まってるじゃない。」
「…なんてこったい。」
いやまあそんな気はしたよ?糞みたいに戦闘に時間かかるし、あ、これはずれだって思ったよ?でもさあ、仕方ないじゃん、初心者だもん。その辺は考慮してくださいよ。
「まあ一度決めたものは仕方ないし、とっととレベル上げて他の職業に転職したほうが身のためだよ。ほんとに。…ってそうだ、始まりの森クリアしてないって言ったよね?今どこ?」
「2F。」
優奈の頭がガクッと下がる。そりゃそうですよね。だって速い人だったら次のダンジョンすら突破しててもおかしくないのにチュートリアル直後のフロアで止まってるんだもん、一晩かけて。
「うーん…。それじゃあ今晩一緒にダンジョン行く?今日はギルド戦ないし。」
「喜ん…いやちょっと待て。始まりの森に行ったところでお前と一緒じゃ全然経験値入らないだろ。いくらダンジョン攻略できたとしてもレベルが上がってなけりゃずっとお荷物だぜ?」
「うん、だから私がソロで攻略できるギリギリの難易度のダンジョンに連れてくんだよ。治は立ってるだけでいいよ。私が守りながら戦うから。」
いやまあ確かにそれなら初心者の俺のレベルは簡単に上がるだろうが…絵面がひどい、ひどすぎる。もし周りの人間がこの光景を見たらどう思うだろうか?頭を抱えて震えている俺とその周りで必死に敵を迎撃するかわいい女の子。やだ、俺ダサすぎぃ。
「…申し訳ないんだが、自分で蒔いた種だし、自分で頑張ってレベルを上げるよ。立ってるだけでレベルアップしても面白くないしな。」
「そう…でも早くレベルアップして転職してね。さもないとダンジョン一生攻略できないよ。」
いやまあパーティー組めば攻略自体はできるんだけどね。まあ知り合いのいない俺には無理な話だけど。
まあ、とりあえずがんばりますかねえ…。
俺氏、帰宅。
今日は金曜日。オールしても問題なし。ってなわけで先に食事やら風呂やらを済ませていざログイン!
周囲が森の入り口になったことを確認した俺は早速森の中に突撃する。
1Fはもはやないも同然。多分他の職業だったら2Fもこんな感じなんだろうけどね。
来ました魔の2F。といっても昨日のレベル上げの成果もあって、もはや敵を数発で倒せるまでに至った。うん、もはや神官じゃないねこれ。そのままの勢いでサクサク敵を倒していくと3Fへの入り口があった。
「あれ、気が付いたら大分フロアの奥まで進んでたんだな。うーん、1Fが簡単すぎたから2Fとの落差でびっくりしたけどさすがに2Fと3Fでそこまで難易度の差はない…よな?」
一抹の不安を抱えつつ俺は3Fへと進む。
「ん?」
何か見慣れない敵がいる。あれは…カラス?あとで調べるか。まあ敵だということには変わりないし、サクサク倒していきますかね。というわけでその辺にとまっていたカラスに一撃。
「おお!?」
何とまさかの一発KO。経験値もゴブリンよりも多い。
これはおいしい敵を見つけたぞ。ふっ、俺の経験値の礎となるがいい!
とか考えてたのが数分前の話。
俺は近くの石に腰かけてため息をつく。
「あいつらずりぃよ…飛ぶもんよ。」
そう、あの奇跡の一発KOはたまたまカラスがとまっていたから出来たものの、上空を飛び回るカラスに対して神官はなすすべがない。
周りを見ると弓とか魔法で撃ち落としたり、近距離特化のはずの剣士ですら剣撃からかまいたちとか出しちゃってる。俺も真似して杖を振ってみるが何も出ない。そりゃそうだ。
仕方ない、カラスはあきらめよう。やはり俺の恋人は君だよゴブリンちゃん。
てなわけで再びゴブリンたちと戦闘開始。へっぽこな音を響かせながら奥に進んでいくと、川があった。
「川ってことは魚型のモンスターでもいるのかね。」
そう思って川を覗く。
ん…?何かおよそ魚らしからぬシルエットが見えるんですがこれは?
するとそのシルエットが水面に近づいてくる。あれ、思ってたよりでかい。っていやぁぁぁ!
何か超でかいヤゴが出てきた。なぜヤゴをチョイスした運営!確かにモンスターっぽい見た目かもしれないけど!この大きさで間近に見るとマジで怖い。
とりあえず殴る。固っ!待て待てゴブリンたちの比じゃないぞこれ。あれか、外骨格ってやつか!物理攻撃に強いタイプですかこの子!多分火とかに弱いんだろうけど当然俺に火属性の魔法は使えない。
「くぅ、こういう時にパーティーを組むと楽なんだろうが仕方ない、俺は逃げる!」
残念だが普通の物理系の攻撃職でも苦戦しそうなレベルの固さだったし、神官の俺にはなすすべがない。
でもあいつを倒さないと先に進めない!うーむ困った。ユナに頼ろうかなと思ったけど時間は既に夜中。流石にそんなことは出来ない。仕方ない、その辺でパーティー組んでくれそうな人を探すか…。
と言っても魔法攻撃職ならともかく神官を欲している人なんてまずいないだろ、多分…。
その辺のゴブリンを倒してレベルを上げつつうろうろしていると何か明らかに死にそうな女の子を発見。
ポーションが尽きたのだろう。HPがなくなりそうだが回復薬を使う気配がない。というか必死に逃げてる。
あ、転んだ。さすがに助けないとまずいよなあ…。俺は広場でのユナとの一件を思い出す。
女の子を追いかけていたゴブリンが尻もちをついている女の子に攻撃しようとした刹那、俺はそのゴブリンの頭を横なぎにする。ゴブリンのHPは一撃で0になる。うん、いつの間にか神官らしからぬ攻撃力になってしまっていたらしい。打撃音は相変わらず間抜けな音だけど。
「ふぇ…?」
女の子が驚いた表情でこっちを見る。
「ん、ああ驚かせちゃってごめんね。何かやばそうだったからつい攻撃しちゃった。余計なことだったらごめん。」
「いえいえ、助かりました。本当にありがとうございます。死に戻りするところでした。」
死に戻り…HPが0になると強制的に広場に戻されて所持金やアイテム(初期装備を除く)がすべてなくなるというMMORPGにしてはめちゃくちゃ過酷な設定である。いやまあVDだから死を軽んじないようにペナルティを重くしてるんだろうね。ま、ここで死んでも俺はポーションとかも買ってないし失うものはお金とここで手に入るドロップだけなんだけどね。
「私、ミラって言います。職業は魔導士です。でも今のところ初期魔法しか使えないです。」
「俺はシロだ。神官をやっている。」
するとミラの顔が再び驚きの表情になる。
「あの、今神官って言いましたよね?」
「そうだな。」
「あなたの装備は初期装備ですよね?」
「そうだな。」
「どういうステータスの振り方をしたら神官が初期装備でゴブリンを一撃で倒せるんですか?」
「もちろん攻撃に全振りしたからだよ?」
「あなたは神官さんですよね?」
やばい、無限ループが始まりそう…。これはいけない、話を変えよう。
「い、いやあ、俺のことはまあ置いとこう。それより君は今魔導士といったな?もしかして火の魔法が使えたりしないか?」
「え?はい、一応威力はそんなに高くはないですが火と水は使えますよ。」
情けは人のためならずとはよく言ったものだ。助けた女の子がダンジョン攻略のカギになるとは!
「もしよかったら俺とパーティー組んでくれないか?実はあそこのヤゴが倒せなくて。」
「あ、はい。助けてもらいましたしもちろんそれくらいは手伝いますよ。」
よーし、ようやく先に進めるぞ!まあ俺のあのモンスターは火に弱いっていう勝手な想像が当たっていれば…だけどな。
ミラちゃんが仲間になりました!外見とか描写するの苦手なんで脳内補完でお願いします。