表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

その他

エンディングテーマ

作者: てこ/ひかり

  僕らは一体、何のために生まれてきたんだろう?



 物心ついた時からずっと、そんな疑問が頭を離れかなった。それをお姉ちゃんに話すと、決まって大きな声で笑われた。


「そんなもの、あるわけないでしょう」


 僕らにはお父さんもお母さんもいない。物心ついた時からずっと、狭い部屋の中で毎日僕とお姉ちゃん二人きりだ。たまに部屋の外側から運ばれてくるご飯を、お姉ちゃんと分け合って食べている。僕らは二人とも紐で縛りつけられていて、外に出歩くことも許されていない。部屋には窓もテレビもないから、外の様子もさっぱり分からない。


 だからこそ、まだ幼かった僕は余計に知りたがった。

 僕らはいつまでこの部屋にいなきゃいけないんだ?

 僕は何のために生まれてきた?ずっとこの部屋に閉じ込められるためか?いや、きっと違う。


 もし外に出られたら。

 そんな想像を、僕らは毎晩ずっと語り合った。僕は外に出たら、この足で世界中旅をしたかった。もう狭いところはこりごりだ。お姉ちゃんはお父さんとお母さんに会ってみたい、と目を潤ませた。薄暗い部屋の中で、想像はいつも想像のままだった。




「僕は外に出るよ」


 ここに閉じ込められて数ヶ月も経っただろうか、ある日僕はお姉ちゃんにそう宣言した。もう、我慢の限界だった。部屋の外に出て、想像だけだった自由をこの手につかみたかった。お姉ちゃんは黙って僕を見つめた。


 次の日の夜。こっそり出口へ向かう途中、僕はお姉ちゃんを振り返った。薄暗い部屋の片隅で、お姉ちゃんはまだ眠っていた。そのあどけない横顔が、僕が最後に見たお姉ちゃんの姿だった。


 次に会った時には、お姉ちゃんは僕の妹になっていた。

 僕らはようやく、生まれてこれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  素晴らしい発想ですね。  ごく短い中に、謎かけや文学的要素、その他色々なものが凝縮された、ある種の短編の完成形だと思います。  生まれる前は、何かを期待していたのかな…… と、感慨深く…
[一言] わたしのぼうけんは ここでおわってしまった! そのまま のこり 80ねんていどの ロスタイム を おたのしみください 絶望しかない
2016/04/27 08:44 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ