表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

思い出はただ哀しくある

ひどい夢を見るのだ。

 ヒト、ニンゲン、それらが愚かな生き物だと考えを改めたのはいつの話であったか。少し昔の話、ヒトと我らーーーヒトの言葉で例えるなら魔物であったりケダモノであったりーーーは肩を並べ、語らい、寝食(しんしょく)を共にし、また愛しいもののために共に武器を手に取った。

 しかし、ヒトはとても(もろ)いものだと我らは知っている。我らとヒトの”造り”が違うのだと気付いたのは、そう遠くない記憶の中にある。少しでも力加減を間違えるだけで彼らの腕をぎ、彼らの命をも簡単に奪ってしまう。我らは臆病になった。彼らは恐怖するようになった。昨日まで共に笑い合っていたヒトが急にどこかよそよそしくなった。その目には怯えが写っていた。



 気付いてからの我らの行動は早かった。ヒトが寝静まる深夜。森の木々も、森の生物も眠りにつくそんな夜。我らを見ているのは星々の光のみ。

 音も立てずに、息を殺し、我らは逃げるようにヒトとの関わりを断ち、森の奥へと姿を隠した。きっとこれで良かったのだ。そう、我らもヒトも違う種族なのだと我らは”学んだ”。



 ヒトは脆く愚かな生き物だった。我らは逞しくさとい生き物だった。ヒトは文明を重ね、我らは歴史を重ねた。



 そしてある時、ヒトの中でも魔物の中でも、とんでもなく”阿保”なものが現れた。それは武器を持ち、或いは生まれ持ったその鋭い牙や爪で無抵抗なものを傷つけた。傷つけられたものの家族、親友、恋人ーーーそれらは例外なく悲しみ、憎しみを抱くようになった。争いが始まったのはそんないざこざが絶えなく続くようになってからだった。

 ヒトにも、魔物にも、”私”は失望した。

 争いは嫌いだと語らった仲ではなかったのか。共に戦場を駆け抜けただろう。ヒトの事が好きだと言っていただろう。守らなければと、言っていただろう。それなのにーーー



『きっと、お前と共にいる事は叶わぬのだろう。嗚呼、ミネルヴァ。できる事なら来世はお前とずっと一緒にーーー』



 優しく笑っていたのに目に光がなくなってスルリと抜け落ちた手がどんどん冷たくなって周りは鉄錆(てつさび)臭くていつまでも周りからは争いの声が止まなくてただ幸せを願っていただけなのにそれを愚かなものたちが壊していくのだ嗚呼、嗚呼、許してなど、やる も のか



 ……せめて貴方と共に逝けたなら、私のこの報われぬ気持ちも、少しは晴れたのだろうか。



 もう何百年もの前の話、貴方の声も、貴方の顔も、もう何も思い出せはしない。貴方は無事に輪廻(りんね)を回ることができただろうか。私は未だ死ぬことはできぬ。ある意味”呪われた”種族だ。きっとこの先も貴方の元へと参ることはできない。

前の投稿からかなりの時間が経ってしまいました…!すみません…!

ここまでの読了ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ