27話
27話
宮島は違和感を覚えていた
゛なにか゛と明確には言い表せないが、なんとも居心地の悪い違和感だ
パーティーメンバーを振り返り問いかけても、確かな回答は得られない
だが、メンバーの誰もが僅かな違和感を感じていた
だが、オーヴェルニュのゲートをくぐり、ラグナロク本部へ向かう道なりにも、大通りを歩く人々にもいつもと違った様子は見て取れない
余りにも緊迫し過ぎた戦闘の連続で神経が高ぶっているんだろうと、1人が口にする
そう言われればそうかもしれない、と、釈然としない心持ちではあるが、さして深く考えずに本部の門をくぐる
多くの仲間が補給のための一時帰還とはいえ、パーティーメンバーの無事を喜んで迎えてくれる
口々に慰労の言葉や新たに用意してある補給品について矢継ぎ早に説明を受ける
今回はいつもより山の踏破に日数が掛かっていたため、仲間たちも気が気ではなかったらしい
僅かの滞在期間のために大仰な宴会など用意もすることはないが、気持ちばかりの果実酒の入ったグラスを受け取り、恐らくはこの世界の貴族ですら中々手の出ないであろう高級食材をふんだんに使った料理を口に運ぶ
残ったサポートメンバーたちが、この僅かな一時だけでも攻略パーティーメンバーである自分たちを元気づけるためにしてくれている、ただその気持ちが嬉しかった
次々に装備品が運ばれてきては、傷つき壊れかけた装備品と交換されていく
修理できるものは修理し、ダメなものは即交換される
そうして2時間ほどの滞在時間を経て、補給を終えた攻略パーティーは再び本部を後にし、最後になるであろうゲートの設営場所への血路を切り開きに向かう
次のゲートが開かれれば、帝国騎士団が神樹エデンへと向かう手筈になっている
いつもよりも少ない見送りにも、大した疑問も抱かずに攻略パーティーは1人、また1人とゲートをくぐっていく
そして奈々がくぐったその瞬間
「奈々さん!!」
「!」
最後に会ったのは何か月前だったか
自分の名を呼び、懸命に走り寄る少女は少し髪が伸びたように思う
少女の隣を走る犬っコロは、倍くらい大きくなってる?なにそれ?
っていうか、そんな必死に走るとあんた転ぶわよ、それになに泣いてんの
今生の別れでもあるまいし、笑顔で見送りなさいよ、まったく
っていうか相変わらず肌艶のいいことで、温泉通ってるわねチクショー
日本に帰ったらエステ通ってやるんだから!
まったく、だから、泣くんじゃないわよ…………まったく
間に合わなかった、また奈々さんをちゃんと見送ってあげられなかった
10日に1本できるかどうか、という最高級のポーションはすべて攻略パーティーの補給品としてラグナロクに横流ししている
きっと今回の補給で奈々さんの手元にいったはずだ
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