表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エデンオンライン  作者: あやなん
ライとの出会い
14/28

13話

13話



この世界にきてからの不安定な精神状態のセイかもしれない

家族にもわかってもらえなかった想いを当然のようにもつ人たちに出会えたからかもしれない

顔も名前もしらない悲しいしょうかんじゅうたちを思い悲しんだセイかもしれない

なによりあの子の夢をみたことで強く思い出してしまったセイかもしれない


ただただ、悲しくて、胸が張り裂けそうで

小さかったあの子を守ってあげれなかった自分が憎かった

きっとこの人たちも憎んで悔しくてやるせないおもいでいっぱいだったはずだ

でも1番つらいのはしょうかんじゅうの子たちだよね

くるしかったよね、つらかったよね、かなしかったよね

あの子もきっとそうだったにちがいない

守ってあげたかった、幸せにしてあげたかった、誰よりも世界中で1番に


うずくまりながらしゃがみこんで、感情が爆発して泣きやむことのない俺の背中を、ルシフェナさんはただ優しく撫で続けてくれた








「ちょっと熱いかしらね、甘い紅茶よ、お飲みなさいな」


ようやく泣きやんだ俺は神殿奥の部屋でルシフェナさんと2人で座っている

さすが神殿のマスターの部屋なだけはあっていままで座ったことのないふかふかソファーだ

ちなみに顔はぐちゃぐちゃだったし、涙で着てたローブは濡れてしまっていたのだ

いま着替えを貸してもらって、顔を洗わせてもらったところなのです


「はああ~~~」


温かな飲み物を飲んで、人心地ついて、大きなため息がこぼれる

あまりに大泣きしたものだから、身体がダルい………

頭はぼーっとするし手足にもイマイチ力が入らない

さっきナバルロさんのしょうかんじゅうの子が、回復をしてくれて顔は泣き腫らさずに済んでいるけど、疲労感はとれるモノじゃないみたい


「落ち着いたようね、服はすぐに乾くとおもうから、それまでちょっと話しましょう?」


ルシフェナさんが、自分の飲み物をもって隣に座ってくる

なんていうか、あそこまで恥ずかしいところをみられるとちょっと開き直れるというか

不思議と自然に隣で座っていられる自分がいた


「ねえ、さっきのあなたのことをみてておもったの、『この子は大切な誰かを亡くしたことがある、そのつらさを知っている子だ』って……」


その言葉に、俺は時間が止まるのを感じる

言葉に傷ついたわけじゃない

ルシフェナさんに怒ったわけでもない

あの子のことになると思考が止まっちゃうだけ

ただ唐突にいわれてしまって、沈んだキモチが戻ってなかったから

思い切り心の奥まで言葉がささってしまった

感覚が追いつかない、呼吸も鈍くなる

眩暈を感じながらぼんやりと、あの子の姿が、声が、ぬくもりが記憶の中から駆け巡る


と、遠くで声が聞こえる

なにやらうっすらと影もみえる

なんだろうと、意識をむけてみれば

慌てた様子で俺のほほをぺしぺしと軽く叩きながら声をかけるルシフェナさんだった


「あなた……、気づいたかしら?気分は?だいじょうぶ?」


あきらかに狼狽した感で、けど声と口調は優しく俺に語りかけてくれる


「ごめ、なさい、もう、だいじょぶ、です」


ほんとはちょっと頭がクラクラするけど、心配させたくないのでそう答える

あまり信じていなさそうだけど、返事のあったことに安心したのか身体を離して紅茶を飲ませてくれる


「つらいことをいってしまったようね、ごめんなさい」


俺は汗をかいていたようで、タオルで額を拭ってくれているルシフェナさんは謝罪を口にした

首を横に振り『そんなことはないですから』と伝えたくて笑みを浮かべようとするけど、ぎこちなくひきつった笑いになってしまう

また空気を悪くしてしまった

昔からこうして気づくと教室の空気を悪くしたりしては落ち込んだりしてた

なんとかしないとと、あれこれ思案を巡らせていると

ルシフェナさんがタオルをソファー横のテーブルにおき、自分のティーカップを口にしながら少し明るい口調で話しだす


「わたしの召喚獣って、3体ともぜんぜん違うでしょ?あれってね、召喚士の想いや心や希望が具現化するっていわれているの。あの子たちがわたしの召喚獣になったことは偶然じゃなくて、意味があるのよ」


自然とまっすぐに目をみていた俺と、視線があう

ちょっとびっくりして視線を外そうと思ったけど、くすっと笑う顔に思わずタイミングを逃してしまった


「誰にもわからないかもしれないけど、あの子たちが出てきたときに『ああ、なるほどね』っておもったのよ。嬉しくて、ちょっと照れくさい感じかしら」


そう話すルシフェナさんはとても嬉しそうに、ちょっぴり恥ずかしそうにはにかみながら笑ってた

そして、俺は気づけば昔のはなしを始めていた

あの子と出会った時のことから、ついさっきみた夢のはなしや、ここにきておもったことも

支離滅裂だった気もするけど、黙って聞いてくれた








「はい、2杯目だからだいじょうぶかしらね、気をつけてね」


再び大泣きして顔を洗って着替えたところです

今度は黒馬がでてきて回復してくれました、身体中の水分がでていった感じ


「はああ~~」


温かな飲み物が染みます、身体に、心に

背中を優しくさすってくれるルシフェナさんの手が心地よいです

なんていうか、もう、ダメダメだあー

けど恥ずかしさよりも疲労感が上回っているので、いまは紅茶を飲んでため息をつくのです


「はああ~~」

「ぷっ、あなたみたいな若い子がそんなため息をつくものではないわ」


へへっと紅茶を覗き込みながら思わず俺も笑ってしまう

ぽんぽんと、俺の頭をルシフェナさんの手が子供をあやすように撫でてくれる

ふと見上げれば俺をみる目はとても優しい


「決めるのはあなた。そのお友達とゆっくり話し合って決めてもいいとおもう。けれど、わたしはあなたには召喚士を目指してほしいと、願っているわ。あなたのためにも、あなたの心の中にいるその子のためにも」


ルシフェナさんはそういうと、召喚士になったときの変化について教えてくれた


『術士>召喚士への転職時における変異について

1.身分通行証を該当神殿にて認証しなければならない

2.術士で得たスキルは消失し、新たに召喚士のスキルを習得する

 ・サモンチャージ(任意の召喚獣を召喚できる)

 ・サモンリターン(任意の召喚獣を帰還させる)

 ・サモンヒール(召喚獣の体力を回復)

 ・サモンプロテクション(召喚獣のステータスを強化させる)

 ・サモンアルケイン(召喚獣の状態異常を解除・特殊効果の解除ができる)

 ・トランスファーペイン(召喚獣のダメージを召喚士に任意の%で委譲する)

3.召喚獣は以下のレベル達成時に新たに獲得できる※これ以降は未確認のため不明

 ・召喚士レベル1

 ・召喚士レベル25

 ・召喚士レベル50

4.召喚獣のレベルは召喚士のレベルと等しくなる

5.召喚獣は主が存命であればなんどでも召喚できるが、ダメージの回復には時間経過かスキルによる回復が必要となる

6.ステータスは術士と同等である

7.召喚獣の持続召喚には体内保有マナを消費し続ける』


うーん、貴重品の紙に書いてくれて本当によかった

ぜんぜんわかんない部分がずいぶんとある

帰って奈々さんと相談しなきゃだね

紅茶と着替えのお礼をいいつつ、帰り支度をする

2人連れ立って部屋をでて、神殿内部へともどってきた

他の3人はどこかへでかけたのかな、姿がみえない

と、ルシフェナさんが手招きをしている、なんだろうとそちらへいくと


「ここはね、召喚士への認証をおこなう場所なのよ」


そこは6畳半くらいの広さの細やかな白い砂のしかれた場所だった

中央には1メートルくらいの噴水があり、ちょろちょろと水が溢れて砂に吸い込まれている

天窓から光が差し込んで水と濡れた白い砂がきらきらと七色に輝く

神殿の南側に位置しているらしいこの場所は召喚獣が生まれ眠りにつく場所へと続く≪ゲート≫があると昔からいわれているそうだ


確かにとても不思議な場所みたい

なにかがあるような、そんなキモチになる

しばしの間その場で立ち尽くしていた俺に、ルシフェナさんがそっと声をかける


「お友達を待たせているかもしれないのでしょう?ここはいつでもあいているから、またおいでなさいな」


うん、その通りだ

もしかすると奈々さんを待たせているかもしれない

でも、なんだろう

なにかが呼んでいる気がする

胸が、ドキドキしてる

これはなに?

あそこになにがあるの

初めてきた場所のはず

振り返りルシフェナさんに声をかける


「中に、入ってもいいですか?」


ちょっと驚いた顔をしたけど『どうぞ』と表情と仕草で行動を促してくれる

よくわからない、でもなぜか心が躍るような感じ

白い砂の前で足が止まる、さっきよりも不思議な感覚は強くなる

1歩ずつ、ゆっくりと噴水の場所へと進む

水が染み込む場所まできたとき、足元から風が吹き荒んだような感覚に陥る

なのにいま、足から吸い込まれそうな、身体ごと吸い込まれそうな


「………っ」


いま、なにかが触れた?

ちがう、声が聞こえたの?

ううん、なにかの匂いが?

なに?これは…………なに

目を閉じて、心をなだらかに、キモチをまっすぐと、語りかけるなにかにむける



そのとき、世界の時が止まった



『ふわふわの毛並みも、温かなぬくもりも、おひさまのような匂いも、間違えるはずがない

目を瞑っていても、100万匹いるなかであの子を当てることなんて簡単だ

他の誰でもない、俺があの子を間違えるはずがない』


そう、間違えるはずなんてない

なぜ?とか、どうして?とか、疑問ももつこともない

ずっとずっと心の中でおもってた

ずっとずっと心の中でねがっていた



(あの子に会いたい、もう1度あの子に会いたい)




そっと目を開ける


物音も気配もないただ静寂に包まれる


両手を下にかざす


水の染み込む白い砂の床に向かって


ただ一言、あの子を呼んだ


苦しみ、悲しみ、悩み、悔やみ、己を憎み


それでも、出会えた幸せを感謝せずにはいられなかった


あの子の名前を………



「ライ、おいで」




その瞬間、不思議な感覚に包まれていた俺の周りの空気がぐるぐると回り

温かなものを包みながら、俺の中へと入ってくるのが分かった

そっと胸に両手をおけば、あの子のぬくもりを感じる


ここにいたんだね、ごめんね、ずっとずっと探していたんだけど

みつけてあげれなくてごめんね、1人にさせてごめんね

寂しかったね、つらかったね、そばにいてあげなくてごめんね

もう、どこにもいかないから

ずっと、ずっと一緒にいようね


左手をそっと前にだす、右手は胸の前に

あの子をおもいながら、あの子の姿を声を匂いを仕草を思い描きながら

言葉を紡ぐ、全ての想いと記憶をこめて


『サモンチャージ:ライ』


俺の左手が光る

足元にうっすら青い模様が浮かび上がる

そこからでてきたのは

つぶらな真っ黒な瞳で俺を見上げる

灰色の毛並みの艶々とした

ピンととがった白みがかった耳が一段とピンとしてる

真っ白ふさふさの中に1本黒い線のはいった尻尾が千切れんばかりに振る

あの子が、ライがいた


俺が飛びついて抱きしめたのか、ライが胸に飛び込んできたのかわからないけど

2人でただ泣きながら、鳴きながら、お互いを確かめ合うようにしがみつき続けた






それを少し離れてみていたルシフェナは一人つぶやいた

その顔は驚愕で目は見開き、口は大きく開かれていた


「うそでしょ……、1人で認証するなんて聞いたことないわよ………」


後日ルシフェナさんに聞いたことだけど、俺の感じていた感覚を得られるようになるために認証をおこなう際にはずいぶんとみんな苦労したらしい

導くマスターの助けなしで認証をこなしたのは驚きを通り越して異常だといわれてしまった

でも、過去のことをしっていたルシフェナさんはこうもいってくれた


『つまりあやちゃんとライくんの仲の良さの成せるワザともいえるわね』


そういいながらウィンクするルシフェナさんは笑ってた

俺もきっと全開の笑顔で応えたはずだ

腕の中にライをしっかりと抱きしめながら………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ