咳をする二人

咳をしても一人なわけではない

ここには咳をする二人

女は雪を溶かして白湯を作り

男は麦を浸けて粥を作る

流行病を防ぐ手立ては何も無く

息苦しさをボヤく野暮は言わない

交わす言葉も少なくなる

咳をして一人となるのは明日か

寂しさと苦しさは白湯に泡を作る

医者は今頃死骸の山の下だ

無駄な期待をする暇もなく咳は出る

男の咳は酷くなるばかり

女の咳は今は聞こえない

眠りを妨げる咳は聞こえていない

咳をして一人になるのは

もう暫く先か否か