表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/174

「そこそこのお給料でいいのです」

「え!? テレーゼさんうちで働いてくれるんですか!?」


 わたしの言葉に食いついてきたのはテオさんではない。

 店内に入るなり駆け寄ってきた、息子のウィルだ。

 相変わらずふわふわ栗毛で女の子みたいに可愛くて、ライトグレーの半ズボンとブレザーという組み合わせが神がかって似合っている。


 音楽院帰りなのだろう、譜面が入りそうな大きなカバンを背負っていたりして超絶可愛い(語彙)。

 いったいどうしてこんなお父さん(失礼)からこんなコが産まれたのか、よっぽどお母さんの遺伝子が優秀だったのか……。


 わたしが生命の神秘について思いを馳せていると、テオさんがぱちくりと目を瞬いた。

 

「お嬢ちゃんがうちで働く? まさか料理人やら給仕志望じゃあるまいし、てことはピアノ弾きとしてか? あれほどの腕を持ちながら、こんな店で?」


「お父さんなに言ってるの! 働いてもらおうよ! こんな機会ないよ!」


「いやだっておまえ、昨日の演奏聞いてただろ。このお嬢ちゃんは上手すぎるんだ。はっきり言ってうちの店にはもったいない」


「それはそうだけど……!」


「あの腕前に見合った給料を払うなんて、うちには出来ねえぞ?」


「そうだけど……! そうだけど……! ううううう~……っ!」


 わたしをこの店で働かすのは難しいと考えているテオさんと、それを知って顔を真っ赤にして悔しがるウィル。


 あー、なるほどね。

 考えてみればドミニクとかいうチョビ髭のおっさんがあの腕前でプロだったわけだし、わたしぐらいの腕があればもっとお高い給料のところで使ってもらえそうってことね。

 まあたしかにそれ自体は魅力的だけどなあー、でもなあー……。


 ブラック派遣企業に努めていた反動というのもあって、わたしはもう頑張って働きたくはないのですよ。

 始発で出勤して終電で帰宅して月の残業は200時間超。冠婚葬祭以外での有給は認められず、台風だってインフルだって気合いで出勤。そこまでして無理やり高いお給料をもらうよりは、ほどほどの職場でニコニコ働いてそこそこのお給料をもらって細々と生きていきたいのです。


「あの~……」


 わたしは手を挙げ、はっきりと告げた。


「メモ通りのお給金でいいので、わたしをここで働かせてください」


 自分が護った店への愛着もあるし、これは秘密だけど、天使みたいなショタっ子と合法的に戯れたいという願望もあるんだけどね。

テレーゼの活躍が気になる方は下の☆☆☆☆☆で応援お願いします!

感想、レビュー、ブクマ、などもいただけると励みになります

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ