「昨夜はお楽しみでしたね?」
デートの翌朝、学校。
なんとか遅刻こそ避けられたものの眠気に惜敗したわたしは(ホントに惜しかったんです信じてください)、一時限の授業前からすでに自分の席でゆ~らゆ~らと船を漕いでいた。
「むにゃむにゃ、テオさんそんなに食べれないよう~。いくら好物だからってホントにバケツサイズのプリンは無理だって~」
「はい起きるっ」
「あ痛あーっ!?」
甘く幸せな夢に浸っていたわたしは、リリゼットの容赦ないチョップによって起こされた。
「うう、何すんのよ~、せっかくあとちょっとで完食出来たのにぃ~」
「バケツサイズのプリンを完食するとかあなたの胃袋どうなってるのよってそうじゃなくっ」
ビシリとノリツッコミを入れると、リリゼットは机の上に身を乗り出し……。
「昨日はどうだったのよ。デートの方は。首尾よくいったの?」
と、いきなり鋭い質問をかまして来た。
「「そうそう、それですそれですーっ」」
リリゼットの後ろでは、アイシャとミントも目を輝かせている。
どんな感じだったのか聞かせて聞かせて、という感じだが……。
「どうだったって、別にそんなに変わったことは……」
なかったわよ、と言いかけた瞬間、例の光景が脳裏に浮かんだ。
クロードがわたしと腕を組み、イケボで囁いて来たあの光景が。
腕の感触と体温の暖かさ、眠れぬ夜のあの空気まで、同時に蘇って来た。
「……っ」
わたしはたまらず赤面した。
なんとか誤魔化そうと口を開いたが、脳がショートしていたため言葉が出て来ず、結果むにゃむにゃと唇を動かすだけに終わった。
「なにその反応……え、もしかしてホントに何かあったのっ? ふたりの間にデートだけにとどまらない何かがあって、だからそんな反応してるのねっ? そうでしょうっ?」
「「きゃーっ!」」
「デートだけにとどまらない何か……たとえばそうね。もしかして暗がりに連れ込まれて腰を抱かれて」
「「腰を抱かれてっ!?」」
「顎をくいと掴まれまっすぐに目を覗き込まれて」
「「まっすぐに目を覗き込まれてっ!?」」
「愛の言葉を囁かれながら、むちゅーっと情熱的なキスを」
「「きゃああああーっ!?」」
「待って! そんなことはない! なかった! なかったから!」
「て、テレーゼとクロードさんが、キスを……っ?」
「はいそこハンネス! 動揺しない! 何もなかったって言ってるでしょ!」
騒ぐみんなを黙らそうと、わたしは机を叩いて声を張り上げた。
「清く正しいデートをした! ただそれだけ!」
「「「「「「「「ええーっ! テレーゼさんデートしたのーっ!?」」」」」」」」
わたしたちのやり取りに気づいたクラスの女子が騒ぎだした。
といっても比率が低いのでそんなに多くは無いのだが、8人ぐらいがどっとばかりにわたしの席に押し寄せた。
みんな彼氏のいないコたちなのか、単純に恋バナ好きなのか、キラッキラに目を輝かせている。
「ちょ、ま、やめ……! 集まらないで注目しないでホントにそんなに面白いことはなかったから!」
「じゃあ、なんでそんなに動揺してるのよ」
この場をなんとかしようと必死のわたしに、リリゼットがジト目で聞いてくる。
「それはその……だって……」
それを説明するには、あの時のクロードの行動を説明しなければならない。
そのためにはわたしがクロードにしたイチャイチャ行為の数々についても言及しなければならなず……。
うう……アドレナリンが出てたのかなあ……。ホントになんだってあの時のわたしはあんな恥ずかしいことが出来たんだろう……。
「ええと……ええとね……?」
「ほら、言えないってことはそういうことでしょ。やっぱり清い男女の交際を踏み越えた何かがあったんじゃない? ……そう言えば今朝、クロードも珍しく眠そうな顔してたけど、あなたたちまさか盛り上がった勢いでそのまま……?」
「「「「「「「「「「「きゃああああああーっ!」」」」」」」」」」
無責任にリリゼットが煽り倒すせいで、女子陣は金切り声を上げて盛り上がった。
担任のリタ先生が入って来るまでそれは続き、収拾が着くまでにものすごい時間を費やしたのだった……。
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