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「ベートーヴェンは異世界だって最強です? ~"元"悪役令嬢は名曲チートで人生やり直す~」  作者: 呑竜
「第四楽章:二台のピアノのためのソナタ」

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「まさかの聖女様」

「曲の出版ってさ、出版社が1曲いくらで買い取るシステムなんでしょ? でも、それをわたしは貰わないから。銅貨1枚たりとも」


「え? 貰わない? なんで?」


 わたしの言葉を聞いたハンネスは、ポカンとした顔になった。

 まったく理解できないという感じで硬直している。


「んー、それに関しては海よりも深く山よりも高い理由があるんだけど……」


 まさか、向こうの世界の巨匠たちの名曲でお金儲けするのは気が引けますとは言えないしどうしよっかなー……ああそっか、こうしよう。

 

「ざっくり言うとね、わたしがピアノ弾きだからかな。作曲家ではなくピアノ弾き。お金を稼ぐならピアノを弾いて稼ぎたいんだ。ほら、頑固一徹な職人のプライド的な感じで?」


「や、でも、それは……」


 ハンネスはめちゃめちゃ困っている。

 頬をぺたぺたと触って、落ち着かない感じで。


 あれ、どうしてだろう? 完璧な言い訳だと思ったんだけど……。

 

「やめなさいよ。この人、困ってるじゃない」


 助け船を出したのはアンナだが、「この人」呼ばわりはひどい気がする。

 まあ好みのタイプが超絶美少年のウィルじゃあしょうがなくもあるけども。


「困る? なんで? わたしがお金を貰わないってことは会社が丸儲け出来るってことだからラッキーじゃん」


「あのねえ……」


 アンナは「……ダメだこいつ」とでも言わんばかりにため息ひとつ。


「無料で楽曲を手に入れました。出版にあたって実質かかったのは紙代インク代搬送費用に広告費用だけです大儲けですやったー、とはいかないのよ。会社だもの。あなたの脳構造みたいに単純に出来ていないの。手に入れたからには必ず作曲家にお金を払わなければいけないし、たとえばそれを銅貨0枚にするなんてことも出来ないの。最低価格が決まってるのよ」


 わたしの脳構造みたいに単純とは?

 という疑問はさておき、昔は貧乏な作曲家から二束三文で曲を買い取る悪徳業者がたくさんいたため、現在は法律で守られているのだそうだ。

 てことは必ず対価は支払わなければいけなくて……てことはてことは、どうやったってわたしのところへはお金が入って来てしまうと……。 


「んんー……どうすればいいんだろう……?」


 腕組みして悩むわたしに、アンナは呆れたように。 


「普通に貰えばいいでしょ? あなたのうちって別に裕福なわけじゃないんだから。お金自体は必要でしょ?」


 さすがシニカル娘。

 普通なら気を使って言えないようなことをズバズバ言って来る。


「今の主な稼ぎはなんだっけ? クロードの用務員の給料と、あなたのピアノ弾きの給料とチップ? それだって特別稼げてるわけじゃないんでしょ? 貯金だってありそうには見えないし、今は若いし元気だからいいとしても、そのうちあなたとクロードのどちらかが倒れたりしたらどうするつもり? 蓄えはいくらでもあったほうがいいの。変な意地張ってないで貰えばいいじゃない」


 わずか10歳の女の子にガチ正論でさとされる16歳女、カッコ中身は36歳喪女カッコとじ。

 あまりといえばあまりの構図に、わたしはグラリとよろめいた。 

 ていうかこのコ、ホントにしっかりしてるな。

 将来いいお嫁さんになって旦那を尻に敷きそう。

 ってそうじゃない、感心してる場合じゃない。


「ああー……ありがとねアンナ。わたしのとこの経済事情まで考えてくれるのはすごく嬉しい。でもね、嬉しいんだけど、ホントにこれだけは貰えないんだ。本気で非合理的な、わたしのプライドの問題なんだけどね。曲を売ったお金はいらないし、貰えないんだ」


 クロードが立て替えてくれてる分の生活費の返済もまだあるんだけどさ、でも、やっぱり出来ないよ。

 ごめんねクロード、も少し待ってて。


 心の中でクロードに謝りつつ、わたしはハンネスに向き直った。


「あのさ、こうしない? わたしはお金を受け取る。でも受け取ったものを寄付する。寄付先は孤児院とか、修道院とか? 毎回その流れをやるのも面倒だから、わたしが銀行に口座を作って、そこから自動振り込みというか、とにかくそういう形にしてもらえるかな? そうゆーの無理? 難しそう?」


「た、たぶん出来ると思うけど……お、お父様に聞かないと、まだ、わかんないけど……でも、頼んでみる。それで出版してもらえるなら、なんでもする」


 ハンネスはわたしの申し出を受け入れると、すぐに感心したような顔になった。


「テレーゼはすごいな、そんなこと、普通、できない」


「え、そう? そんなもん?」


「そうだよ、できない、普通、あり得ない。稼いだお金全部、寄付だなんて。無欲で、人のために働入れ?、まるで、聖女様みたいだ」


 このハンネスの言葉が、みんなの琴線に触れたようだった。

 わたしの行動が清らかで美しい聖女的なものに見えたらしく、すぐにきゃあきゃあと騒ぎ出した。

 このことを校内新聞に載せようとか、知り合いの新聞記者に流してみるわとか、聖十字章ものですとか、話はどんどん大きくなっていく。

 

「え、待って待ってみんな。わたし、そうゆー意図で言ったつもりじゃ……え、逆にそれがすごい? 無欲で素晴らしい? いやいやいや、待って、待ってってば~」


 偉大なる作曲家たちへ敬意を払っただけなのに、いったいどうしてこうなった……?

悪役令嬢が、まさかの聖女様に?


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 此処まで読んできて「そういう」が「そうゆー」になっている箇所が幾つか有ります。中身大人の主人公がギャルみたいな話し方をしているのは、意図的な書き方なんでしょうか。 書き言葉と話し言葉の…
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