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「ベートーヴェンは異世界だって最強です? ~"元"悪役令嬢は名曲チートで人生やり直す~」  作者: 呑竜
「第八楽章:ラプソディー・イン・ブルー/アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
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「男子会④」

 ~~~クロード視点~~~




「「おまえ、テレーゼ嬢に恋してんだよ」」 


 異口同音で放たれた言葉に、クロードは硬直した。

 頭の中を疑問符が飛び交い、パニックになった。


(え? え? 今おふたりはなんと言った? わたしがお嬢様に恋をしている? そう言ったのか? このわたしが? 執事の身でありながら主人に対して不埒ふらちな想いを抱いていると?)


「そんなバカなことあるわけが……」 


 否定しようとして放った言葉は、しかしみっともなく震えていた。

 

「バカなこと? 俺はそうは思わねえけどなあ」

 

「そうそう、向こうは人間、こっちも人間。ましてや年頃の男と女の間で、好いた惚れたがねえほうがおかしいだろうが」


「し、しかしわたしは執事で……」


「ああ? でももう、公爵家との契約自体は切れてんだろ?」


「そうそう、向こうはなんたって勘当かんどうされてんだから。おまえが仕えなきゃいけない義理はないはずだろ?」


「や、しかしそれは……っ」


 クロードは頭を抱えた。

 ふたりの言い分が正しすぎて、反論できない。

 反論しなければならないのに、それができない。


「冷静に今の状況を見てみるとよ、おまえは一般人のテレーゼ嬢とひとつ屋根の下で暮らしてる自称執事(・ ・ ・ ・)なんだわ」


「仕事はそれっぽいことしてんのかも知らんけど、契約がないなら実質ただの趣味(・ ・ ・ ・ ・)だな」


「なっ……!?」


 クロードは言葉に詰まった。

 ふたりの言い分が正しすぎて、反論できない。

 反論しなければならないのに、それができない。


「だ、だったら今から契約を結べば……っ」


「契約を結ぶって、おまえ今さらテレーゼ嬢から金を取れんの?」


「金銭の授受を必要としない契約自体を成立させることは出来ても、それをテレーゼ嬢に納得させることができんの?」


「そ、それは……っ」

 

 テレーゼから金を取ることは出来ない。

 また、そのような契約を結ぶことを彼女はヨシとしないだろう。

 もともと主従関係の意識が薄い人だ。これを機会にただの友達関係にされかねない。


 そうすると、今の生活が根本からおかしくなる。

 自分はなんのために働いているのか、どうして彼女と共に生活しているのか……。


「うああああ……っ?」


 自我喪失の危機に見舞われたクロードは、頭を抱えて呻いた。


「わたしはなんのために……いったいどうしたら……っ?」


 ぶつぶつとつぶやく彼の肩をぽんと叩くと、ふたりはニヤリいやらしい笑みを浮かべた。

 

「問題を一手で解決する手段を教えてやろうか?」


「それはな、テレーゼ嬢を恋人にしちまうことだ」


「なっ……?」


「ほら、恋人同士だったら一緒に暮らしてても問題ねえだろ?」


「ピアノ弾きに専念する彼女を支えるために身の回りの世話をしてやる、これもまったくおかしくない話だろ?」


「ななななな……っ?」


 動揺するクロードに、ふたりはさらに詰め寄ってきた。


「さっきも言ったが、おまえがテレーゼ嬢に恋してるのは明らかなんだよ」


「主人の幸せを願うはずの執事が主人の結婚を嫌だと思うってのは、間違いなく嫉妬だもんな」


「ここまでのおまえらのいきさつを聞いても、そうとしか思えねえもん」


「そうそう、わざわざ公爵家を出てまでテレーゼ嬢について来て、路銀も身銭を切って出してやって。あげく主従関係が切れてんだもん」


「人生丸ごと棒に振ってまでひとりの女のために尽くす。それが恋でなくてなんだっていうんだよ」


「もういいから認めちまいな。クロード。おまえはテレーゼ嬢が好きなんだよ」


 ぽんぽん、ぽんぽん。

 ふたりから投げかけられる言葉が、彼の心の中にあった壁にヒビを入れていく。


 たしかにそうだ。考えてみればそうなのだ。

 状況的にもだし、今までテレーゼの活躍を見るたび感じていた身体の異変も。

 すべてが恋に起因しているのだとすればに落ちる。 


(だがしかし、それは……)


 その発想が極めて危険であることに、クロードは気づいていた。


(わたしがお嬢様に恋をしているなどと……)


 そんなことを認めてしまえば──


「わたしは今後、どんな顔をしてお嬢様にお仕えすれば……?」


 クロードは頭を抱えた。

 両腕の隙間から覗くその顔は、たしかに朱に染まっていた。

 頬がひきつり、大いなる動揺を形作っていた。

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