麗人が大陸に抱く夢
芳子様の過去に突入します。
1932年3月1日に日本軍が中国の東北省に新国家を築きあげた。
その名は「満州国」。芳子の従兄弟である愛新覚羅溥儀が皇帝に即位。清王朝は再び栄華を取り戻したのだ。
芳子は部下を率いて中国の地方を各地に馬を走らせていた。建国後芳子は軍の司令官に任命された。最初に与えられた任務は地方都市への遠征であった。
芳子の夢は清朝の復活、そして2つの祖国中国と日本手を取り合い1つになることだ。芳子の実の父粛親王は言っていた。
「国を納めるということは民より優位に立つことではない民に常に寄り添ってやることだ。民達の声を聞き何ができるか考え実行する。それができる王にこそ民は着いて来るのだよ。」
(国民の声を聞くか)
芳子が今まさにしようとしていることだ。
(自分が任された任務は日中の友好への1歩なのだ)
そう思い期待を胸に膨らませた
ほどなくして一行はとある村にたどり着いた。だかそこは田畑は荒れ果て民家は崩れかけ人が住めるような場所ではなかった。
「おい、お前ら日本軍だろ」
物陰から木の棒を持った少女が現れた。灰にまみれたブラウスにモンペといった見るからに貧しい少女だった。
少女は棒を振りかざし芳子に飛びかかろうとした。
「司令官!!」
部下の1人が銃を構える
「待て!!」
それを制止する芳子。
次の瞬間少女は芳子の馬めがけて棒を振り上げる。馬は暴れだし芳子は落馬。今度は馬が少女に蹴りかかる。
「落ち着け!!」
咄嗟に手綱を掴み馬を落ち着かせる。
「大丈夫か?立てるか?」
芳子は先ほどの少女のもとへ駆け寄る。
「はい」
少女は自力で立ち上がる。無事だったようだ。
「君はこの村の住人か?」
「違う。ここは昔私が住んでた。でも今は誰もいない。」
「司令官、そろそろ戻らなくては。」
部下の1人が声をかける。
「分かった。お前達だけで先に戻っててくれ。僕はこの子を家に送り届けてからすぐ後を追う。」
部下達が帰っていくのを見届けた後芳子は少女を連れて一軒の民家に入ってた。窓も割れ屋根もところどころ荒れている。
二人はそこそこ被害のない居間で腰を休めた。
「君と話がしたい。君の名前教えてもらえないか?」
「瞳花」
少女が口を開く。
「瞳花ちゃんだね年は?」
「14才」
「なぜ僕達を襲った?」
「ごめんなさい。」
瞳花は突然泣き出した。
「君を責めてるつもりじゃないんだ。あんなことしたなら何か理由があったんじゃないかと」
「この村は昔はもっと賑やかだった。父、母、祖母と弟と畑を耕して野菜を育てながら他の村人達と皆で助け合って暮らしていた。でもある夜、村の大人達が一斉に起こされ広場に集められたそして。」
そこまで聞けば芳子は何があったか想像ついた。
「そんな酷いこと誰が?」
「日本軍。夜中に現れてゲリラを匿ってないか聞かれ皆知らないと答えたら皆殺しに。子供だった私と弟だけが村から逃げられた」
そこまで言うと再び泣き始めた。
「辛かったね。もう心配しなくてもいいよ。僕が必ずなんとかするから。」
芳子は財布から自分のお金を全て取り出し瞳花に握らせた。
「これで弟に何か美味しい物でも食べさせてあげなさい。それからこれから。」
芳子は少女に名刺を渡す。そこには名前と関東軍本部の住所が記載されていた。
「困ったことがあったらいつでも僕を訪ねて来なさい。」
「謝謝。でもどうして私酷いことしたのにお兄さんは私に優しくしてくれるの?他の日本人はこんなことしないのに」
「僕の夢は日本と中国が手を取り合って暮らせるそんな国をつくることだ。瞳花ちゃんがこの村で暮らしてたときのように。そのためには互いが憎しみ合って争うようじゃいけないと思うんだ。だから瞳花ちゃんには日本人を嫌いになってほしくない。分かるかな?」
「はい。」
瞳花は笑って答えた。
「君の今どこに住んでるだ?送っていくよ。」
「謝謝。お兄ちゃんいい人だね。」
2人は民家を出て瞳花の住む村へと向かった。
思ったより長い。暫くは芳子様の過去の話になるので琴葉ちゃんお休みです。
百合色強かったのが一気に歴史色に。