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───グツグツに煮え立った黄金の汁の中、どれほどに我等が悶えようともそれは、誰かの喜びでしかないのだ───トーマス・ハン・ペン
七回目の世界の終焉を迎えた後、かつてのYATAIは完全に崩壊し、街並みは無惨に世紀末感溢れる廃墟と化していた。
その最中、世界の均等を保つと言われる"ニジル"が干上がろうとしていた。
この世の全ての創世主であるODENは、一滴の希望をひび割れた大地に落とした。
それは紛れもなく、最後の、希望だった。
「おいお前!待ちやがれ!!」
「何だよ。めちゃめちゃ急いでんだけどさ」
豆腐の角の崩れを押さえながら、袖の切りっぱなしのGジャン、切りっぱなしのホットパンツを履いた荒くれ者風の輩がチクワの腕を掴んでいた。
「お前、俺様の顎にぶつかっといて逃げられると思うなよ!」
腕にめり込む指を見ながら小さいため息を一つ。
「そんなに怒ると、お焦げ化しちゃうよ?」
胸ポケットに忍ばせていた山吹色のカプセルを男に投げつける。
瞬間的に弾けた中身は洋がらしの粉末だ。
「ギッヤーぁぁぁぁあぁぁあぁ!!!黄色く染まるーああぁぁぁあぁぁ!!!」
「帰ってにがりにでも浸かっときな」
覚えとけ、と叫ぶのも息絶え絶えに男は身を翻し走り去った。
やれやれ、めんどくせーな。本当に急いでたらどうすんだよ。ボソボソ呟きながら買い忘れていた干し肉屋へ向かう。